第16話 あれ…、この声って…


「あ、その機材はそこら辺で…、パソコン…そっか2台あるのか…。とりあえず、机の上でお願いします」


俺が、歌い手として最後の歌ってみたを上げてから、約一週間後。前、社長が言っていた通り、配信するためのパソコンや機材が家に届いた。

今は、それを家の中に運んでくれるらしいので、業者の方にやってもらっている。

部屋は、歌ってみたを撮っていた部屋で、防音もしっかりとしているので、配信をしても多分大丈夫だとは思う。

…結構力を入れて防音のための防音材などを買っていたから、また使えるというのはよかった。

ちなみに、歌ってみたのための機材は部屋の隅の方にまとめて置いてある。


「すいません、全てやってもらっちゃって…」


「いえいえ、大丈夫ですよ。こういうことをやるのは慣れてますので。では、これで全て運び終わったので、私はここで失礼しますね」


「わかりました。ありがとうございます」


業者の方は一言言うと、トラックに方に戻っていった。ちゃんとこういう所までやってくれたのは本当にありがたかったな…。


「さ、パソコンとか色々セッティングしちゃいますか。色々と連絡とかあるかもしれないしな」


確か、イルコードがもう入れてあると言っていたから、マネージャーである鈴木さんや同期の二人から、何か連絡があるかもしれない。

特に、マネージャーからの連絡は絶対に大事だから早めに見ておきたい。


「えーっと、こうして……あーして…、それをこれに繋げて…、このパソコンと、そのパソコンを繋げて…」


前、配信の仕方を教えてもらった時に、セッティングの方法も教えてもらっていたから、意外とスラスラとやっていくことができる。


「よし、できた」



パソコンを2台繋げ、それをまた別の機材に繋げるなど色々とやることによってセッティングもできた。パソコンが2台もあったのは、配信をするためのものと、ゲームや編集をするためのもので区別しないといけないからだろう。確かに、事務所でテストした時も、二台もしくは3台ぐらいあったからな。


俺が思ってた以上に、スペースを埋めてしまったけれど、配信をする分には十分だろう。


「とりあえず…、パソコンを開いて、連絡確認かな」


本当は、俺からしたら最新のパソコンといっても過言ではないから、色々確認したいけれど…、それは触っていくうちに確認しようと思う。まずは連絡確認だ。


「えーっと、確かイルコードが入れてあるって…、あ、これか」


俺は、イルコードをダブルクリックして、確認をする。


「お、本当に鈴木さんと、倉井さん、紅葉さんが入ってる。しかも、ちゃんと連絡まで」


こういう細いところまで、やっておいてくれるのは本当にありがたいな。

まあ、こうしないと連絡ができないからかもしれないけど…。


「連絡が来てるのはマネージャーと…、あと紅葉さんからも来てる」


マネージャーは何かあるだろうとは思っていたけど、紅葉さんはなんなんだろうか…。


「…、あ、歌ってみたか」


そうだ、RINGの3人で歌って見たを出そうという話しがあったから、多分それだろう。


「先に確認しとくか」



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◯ 和泉もみじ


レンくん、お久しぶりです。

これから、同じRINGの一員としてやっていく、和泉もみじです。

これからよろしくお願いします!


本題なんですが、前に、RINGの3人で歌ってみたを出そうと言っていましたが、その曲を『神とともに』というボカロ曲にしようと思ったのですが、どうでしょうか?

もし、他に何か案があれば教えてください!


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めっちゃ丁寧だ…。

ちゃんと、もう一度チャットでも自己紹介をしているところが、本当に丁寧だと思う。

確かに、もみじさんは見た目からして、真面目そうでもあったからな…。


それにしても、ボカロ曲の神とともにか。


「うわー、懐かしいな。結構昔の曲だったけど、めっちゃ聞いてたなー」


神曲と言ってもいいかもしれない。

それに、この曲は二人や三人でも歌える曲だから、俺たちにもあってる気もする。


「うーん、他に案は思いつかないし…、神とともにでいい気がするな」


ここは、こっちも丁寧に返信しておこう。


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◯ 宇多黒レン


もみじさん、お久しぶりです。

同じくRINGの一員の宇多黒レンです。これからよろしくお願いします!頑張っていきましょう。

歌ってみたの曲ですが、俺も『神とともに』でいいと思います!

もし、倉井さんに聞いてみて、他の曲になったらまた教えてください。


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「どう返事しようか迷ったけど…これでいいかな」


今まであまり、女性とチャットをするということをしてこなかったからな…。それにどういう言葉を使えばいいかもまだわかっていない。ファミールに入ったからには、色んな人と関わりを持つということでもあるから、少しずつ慣れいって、言葉遣いとかも覚えていかないと。



「次は、マネージャーからの連絡だな」


こっちは、結構大事な連絡が来てると思うから、注意深く読んでおこう。次の集まる日にちとかは、絶対に書いてあるだろうし。


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◯ 鈴木由依(RINGマネージャー)


レンさん、お久しぶりです。RINGのマネージャーを務める鈴木由依です。

こちらから、連絡しなければいけないことが二つほどありますので、必ず目を通しておいてください。


まず一つ目に、次に事務所に集まるのは、2週間後の日曜 14時頃になりましたので、よろしくお願いします。何をするかは当日にお話しします。


二つ目に、レンさんのアバター案が、ミズレ先生から三つほど届いたので、どれが良いか選び、連絡をください。できれば3日以内でお願いします。もし、何か少し付け加えたいなどの要望があれば、また連絡をお願いします。



これから先、もしかしたら、色々と悩んだり、辛かったりするかもしれません。けれど、そんな時こそ、マネージャーを頼ってください。私の仕事は皆さんをサポートすることでもありますから。

これからよろしくお願い致します。





アバター案が三つ



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「まず一つ目が、次の集まりについてか」


これは、予想していた通りだ。

けど、集まるのがまた二週間後か…、意外と間隔が空くんだな。もう少し早く集まると思っていたからね。まあ、その間はまたファミールを見てすごそうかな。もしくは、歌やピアノの練習でもしておこう。もしかしたら、初配信とかで披露するかもしれないしな…!

まだいつかわからないけど……。


「で、二つ目がアバターについてか。ミズレ先生、三つも書いてくれたんですか…」


本当に感謝しかないな。

しかも三つとも、俺の大雑把な要素たちを、ちゃんと入れてくれている。

黒髪、髪は長すぎ短かすぎず、少し陰の要素、派手すぎない歌手のような服など、三つとも完璧だ。

しかも願望でもあった、マイクを持っている様子のアバターまでも書いてくれている。

加えて、三つの案全て、前から見た画像、横から見た画像、後ろから見た画像をつけてくれている。

これを約二週間で作り上げるなんて……、流石としか言いようがないな。



「いやー、これは迷うなー」


簡単に、一つ一つ見ていく。

一枚目は、他の三つに比べて髪はすこーしだけ短めになっている。そして服装もちゃんと歌手のような服であまり派手ではないものになっているが、色が髪と同じように黒色になっている。靴も、真っ黒というわけではないが、黒に近い色だ。

全体的に黒を基本にシンプルになっている感じだな。


二つ目が、髪は長くも短くもなくちょうどいい感じなのだが、服装が、上の服がズボンの方まで伸びている感じになっている。色も黒色がメインではあるのだが、少し青色も入っており、見た目がいい感じになっている。靴も少しオリジナルになっていて、色も少し鮮やか系になっている。


三つは、一枚目と二枚目を合わせたような感じで、髪は二枚目のようになっているのだが、服装は上の服がズボンの方まで伸びており、黒をメインにしつつ、おまけ程度に青色が入っているぐらい。靴もオリジナルのようになっているのだが、少し一枚目のように黒を多くしている感じだ。



「どれもかっこいいんだよなー。本当に上手くかけてる」


三つとも、それぞれの良さが本当に出ているとは思う。多分、どれを選んでも俺は、そのアバターを一生大事に使うし、大好きにもなると思う。


「…うーん、悩むけど…」


俺は覚悟を決めて、三つの中から選ぶことにする。


「…2枚目かな」


2枚目、三つの中だったら、少し色が鮮やかになっているものを選んだ。

なぜかというのは難しいが……、俺の中で一番ピンッときたのがこの絵だったのだ。

一枚目や三枚目も良かったのだが、すこーしだけ暗すぎかなとも思ったから、二枚目がちょうどいいんじゃないかとも思った。


「…うん、決定でいいかな」


俺は、二枚目がいいということを、マネージャーに伝えた。

俺はこのアバターでやっていくんだ…!

このアバターを動かせるのを楽しみにしておこう。




「…そして、最後の文よ…」


確かにこれから先、喉や病気などの身体的面、鬱になったり、病んだりしてしまう精神的面、どちらでもダメになってしまう可能性だってあるからな…。

こういう言葉をかけてくれただけで、少し気が楽になった気がする。ありがとうございます…。



「頑張っていかなきゃな…!」



よし、そうと決まれば、ファミールのメンバーの配信を見て、色々と学んでいこう。少しでも、何か手にできるようにはしておきたい。


「今配信をしているのは…、輪廻の太陽さんに、古参組の星月まほさん、WGLの古賀しのぶさん…やっぱ人数が多いだけあって、いろんな人が配信してるんだな」


誰を見ようかな…。誰の配信を見ても色々と勉強にはなると思うけど、


「ここは…男の人である、太陽さんにしようかな」


俺も男だから、同性として何かわかるかもしれないしな。


輪廻に所属する太陽さん。

名前の通り、明るい性格で、髪の毛も赤く輝いており、服装も派手になっている。


「今日は雑談配信か」


少し前に見た時は、ゲーム配信だったけれど、今日は雑談配信らしい。何を話してるんだろう。



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「いやー、久しぶりの雑談配信だけど、みんな来てくれてありがとな」


『久しぶりの雑談助かる!』

『ゲームもいいけど、雑談もいいね』

『作業しながら聞かせてもらいます』


「コメントもありがとう。けど、まだ何話そうか決まってないんだよなー。なんか聞きたいことある?」


『聞きたいことかー…』

『なら、最近噂になってるあれについて聞きたい』

『噂の件について』


「噂?なんかあったのか?俺は何も知らないんだけど」


『今ネットで、もうすぐ新人が来るんじゃないかって言われてる!」

『周期的にもうそろそろ新人が来るんじゃないかと』


「あーー、新人ね。うーーん、………もしかしたら?…っていう匂わせ的なことを言っておこうかなー」



『え?!』

『お!この反応はまさか」

『確定か?』

『こんな匂わせしていいのか?w』


「まー、この件に関しては俺からはもう何もいえないかな。はいっ次に聞きたいことは?」


『さっきの件が気になりすぎる…」

『流石にこれ以上はねw』

『じゃー、最近ハマってることは?」


「ハマってることかー………」



——————————————————————


「…え?今そんな噂になってたのか」


全然知らなかったな…。

なんか、ここまで言われているのを見ると、めちゃめちゃに緊張をしてくる。多分、コメント欄のみんなも相当楽しみにしてると思うしな…。

初配信はマジで頑張らないと。


「それに、もうファミールのメンバーには知らされているのか?」


俺はまだ、社長とマネージャー、それと社員の人たちぐらいしかあっていないから、他のファミールの人たちが俺たちのことを知っているかどうかはわからない。もしかして、社長がもう言っていたりするのだろうか。



「…それと…、なんか太陽さんの声聞いたことがあるんだよな…。なんでだ?」


そういや、ちょっと前にもこんな感覚になったけど…。そう、事務所の方に行った時に…。


「…あれ?ちょっと待て」


よく、思い出せ、あの人の声を…。

確か、最後に…、



『いいって事よ、じゃー、俺は今からミーティングがあるから…





まさか…



「…もしかして、あの人って太陽さん!?」


そうだ、思い出してみると、声がほぼ同じだ。

それに、太陽さんの最後の言葉、またなって…、向こうは俺が新人だとわかっていたから、そう言ったのか。


「…やばい。次会った時に謝っておかないと」


もう全力で謝ろう。ファミールを受けた身として、ファミールメンバーの声を判別できないなんて、あってはならないと思うからな…。

けど、顔が違うと、声を聞いてもわからないもんなんだな…。


「…そっか、だからさっきの配信でも、太陽さんは知っていたのか」


もしかしたら、知っているメンバーは太陽さんだけなのかもな。


「……今度からは声聞いただけでもすぐわかるようにしておこう」


これから、ほとんどのメンバーとは会うことになるとは思うからな。もう今回のようなミスをしないようにしないと。


「そうと決まれば…、また見まくるぞ!」


俺はまた、配信をしているメンバーの動画、もしくはアーカイブを見始めた。



———————————————————————


久しぶりの主人公サイド!

やっぱり主人公の方が書きやすかったですね。


そして星評価が200行きました!ありがとうございます。


また、誤字脱字等あればよろしくお願いします。


























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