第58話
『アクアマリンはサンダーミミックを見つけると絶対に開ける』
『厄介なのはサンダーミミックが本物の宝箱を生成する点だ。一定確率で当りもある』
『アクアマリンちゃん、ギャンブラーだな』
『いや、スイッチを見たら絶対に押してしまうって自分で言っていた。そう言う性格なんだろ』
『そう言えばお母さんの仮面も取ってたな』
『気になったら絶対に反応する点は共通している。つまり、アクアマリンは宝箱を見つけたら絶対に開ける。電撃を何度受けても開ける』
『奴隷のお姉さん先生として失格じゃね?』
『だから議題に上がってるんだろ?クリスタルタートルとサンダーミミックの生息地は同じだ』
『このパーティーは手本になるべき存在だ。子供がアクアマリンのマネをしたら危ないよな』
『お母さんがコメントを真剣に見ている』
『向き合う姿勢が紳士すぎる』
『今まで忙しかった分スポンジのように高速で状況を把握しているな』
『お母さん、出番だ』
「状況は理解した」
アクアマリンパーティーにはクリスタルタートルが出るダンジョンの偵察とお手本になって貰う予定だった。
クリスタルタートルはイートトードやアサルトアントより弱く、スライムの次に倒す魔物として最適だと思っていた。
危惧していた問題は毒を持つ魔物がいる点だったが、思わぬトラブルが発生した。
俺はすぐグランドと連絡を取った。
「……もしもし、グランドか、クリスタルタートルを狩るメンバーには」
『分かっています。すでにアクアマリンのマネだけは絶対にしないよう教育済みです。スライムの大量発生は落ち着きました。後はイクスさんの号令一つで皆ダンジョンに向かいます』
「助かる。俺が直接ダンジョンを偵察する。それまで少しだけ待っていて欲しい」
「かしこまりました」
「すぐにダンジョンに向かう」
『おお!待ってた!今ゴレショが品切れなんだ』
『わい錬金術師、クリスタルサーバーの設置には色々時間がかかる。早めに対応して欲しいので応援してます。一気に納品されると設置地獄で日付が変わるまで残業になってきついので本当にお願いします』
「ふう。クリスタルの素材不足は深刻なようだ」
「その原因はお前だぜ」
「イクスが、配信ブームを、作った」
「はっはっは、それはパープルメアだろ」
「違うわよ。チャンネル登録者は私の方が多いけど、イクスの視聴数は群を抜いているわ」
「ブームの火付け役は1番がイクス、2番目がパープルメアだぜ」
「俺はすぐにダンジョンに向かう」
「視察をするなら1万体ほど駆って持って来て欲しいわ。コメントにもあったけど、錬金術師の子に一気に負担をかけたくないのよ」
『桁がおかしい件』
『お使いのついでに取ってきてみたいな言い方』
『1万体って普通なら狂っているけどお母さんなら、まあそのくらいかと思ってしまう』
『買い物に行くついでに持ってきて見たいにさらっと言うよな』
「分かった。大変なのは狩るより加工だ」
『本当にそう、マジでクリスタルを外すのがめんどい。それにクリスタルタートルは食えるからその素材も捨てられない』
『食べれば滋養強壮に良いけど、甲羅を外したり面倒なんだよな』
『その甲羅も使うしな』
『そうそう、皆錬金術師か解体業の人か?』
コメントで盛り上がる。
「早速出発するが、ドラグ、アクリスピ、来られるか?」
「ああ、行くぜ」
「イクス、フライドポテト」
「あ、今ボウルで持ってきましたけど、どうします?」
「貰おう。すぐに出発する!」
俺はストレージに食べ物を収納して走る。
その後ろをドラグとアクリスピも付いてきた。
『速い!』
『行動が早いし、走るのも速い。サクサク進むよな』
『お母さんの凄い所はリカバリー力だよな。対策をすぐに実行して問題を解決に導いている』
『本当はフードコートの2階を仕上げる予定だったけど、いい意味で朝令暮改だ』
『お母さんは経営者っぽいんだよなあ。問題だらけの中で重要なネックポイントをすぐに潰そうとする』
『1時間せず大洞窟に着くんじゃないか?』
『ゴレショが羽を消した?』
『英雄専用ゴレショのマグネットモードだ。お母さんの魔力と引き合う性質に魔力を変えて磁石のようについていく』
「イクス、フライドポテト」
「ついてから食べてくれ」
『アクリスピが走りながら食べようとしている』
『多分、まだ余裕で走ってる』
「早く、着く!」
俺は戦闘を走ったアクリスピについて行った。
先頭は空気抵抗が強くて疲れるんだよな。
こうして俺達は、大洞窟にたどり着いた。
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