第42話
【パープルメア視点】
配信が終わると速やかにイクスが退散した。
歩いているのに残像が見えた。
ニャリスが素早く配信を始める。
「ニャリスだよ!英雄3人の雑談後雑談配信を始めるね」
雑談後のまた雑談。
一瞬言葉の意味が分からなくなった。
ニャリスを見て思う。
イクスは、苦労をしているようね。
イクスは子供が得意ではない。
急に泣き出し、お菓子をあげれば急に喧嘩が始まり、急に笑いながら走ったと思えば急に転んで急に泣き出す。
イクスは不確実性の高い事を嫌う。
子供と思春期の子を相手にして疲れているようだった。
グランドの助け舟は、将来的にはいい方向に向かうだろう。
「もう話していいのか?」
「いいよ!自由に話して」
「おう!イクスは自分で蒔いた種を途中まで完全に忘れていたぜ。くっくっく」
「もう、自分が誰を助けたか、覚えていない」
「そうね、しかもイクスは助けた子の自立を促すわ。イクスが助けた子が他の子を助けだして、イクスは知らない内に恩人になっているわね」
「そうだな、イクスは助ける人を人格で選ぶ」
「ん、才能は、見ていない」
「イクスが欲しいのは自動で人を助け続ける永久機関なの。それを実現する為には志を持っている子を助ける方がいいわね」
「イクスは色々やっている。じゃなきゃ色んなあだ名が付くわけがない」
『言われてみれば!お母さん・魔王・英雄・慈善事業家・配信者、確かにあだ名が多すぎる』
『しかも色んなことを同時進行で進めている気がするぜ』
『プロジェクトの同時進行を100年やっていたら、そりゃ忘れて当然か』
『お母さんは一見不器用に見えて、まあ不器用なんだけど順調に奴隷解放は進んでいる』
『小さく始めて大きく伸ばすやり方は事業を始める時の教科書のようだ』
『お母さんが助ける→忘れる→時間差で力をつけてる→バレる』
『↑、本質すぎる』
「イクスは用心深いわ。事業を小さく始めて、失敗しても取り返しのつかない事態を避けるわ。更に問題が起きてもプランB,プランCと柔軟にやり方を再検討して修正していくのよ。もっと言えばイクスは今を見ていないわ。10年後、20年後に種が実ればいいくらいに考えているのよ」
『お母さんが何で気が長いか分かった。利他の精神で未来の成長を信じている。だからこそのあの寛大さなのか』
『だんだんお母さんのことが分かって来た』
『ますますお母さんじゃないか。子供の成長を喜んで見返りを求めない』
「くっくっく」
「ドラグ、どうしたの?」
「イクスは素早く逃げたつもりでいる。でもこの瞬間に色々ばらされていると思ってな」
アクリスピも笑い出す。
「お母さんは逃げても逃げられない」
「もお、かわいそうでしょ!」
「パープルメア、自分の顔を見る」
「お前が一番笑ってるぜ」
笑ってしまって話が出来なくなってくる。
『笑いをこらえられなくなるパープルメアが好き』
『お母さん、逃げたのは失敗だったな』
『逃げない=いじられる。逃げる=こうなる』
『どう転んでも一緒だ』
『お母さんが変化球のような特殊な動きをする意味が分かって来た』
『逃げると逃げないに続く第三の選択肢で状況を打開するが正解か』
『何をするんだ?』
『わかんね』
『↑わかんねで吹き出してしまったwwwwww』
『お母さんしか思いつかないんだろ?どうにかできるとは思えないけどな』
『お母さんは策を練って策に溺れるタイプだ』
「あ!」
「パープルメア、何?」
「イクスが、自分の動画チャンネルを削除しようとしたわ。でも、英雄は動画を削除できないようにしてあるから削除できないわね」
「くっくっく、ぎゃはははははははははははははは!」
「悪だくみ、一瞬でばれた」
「パープルメア、お手柄だぜ!英雄イクスの動画は残しておかなきゃな!ぎゃははははははは!」
『ネット公開で策がバレてるぜwwwwww』
『そういう手か』
『一瞬でバレたと思ったらすでに対策はされていたのかwwwwww』
『確かにグランドがいるならお母さんが矢面に立つ必要は無くなったからなwwwwwwwwでも一瞬で策が潰れた』
『一瞬でばれてるし、お母さんの行動が読まれているのも面白過ぎる』
「違う、英雄として、責任を取って、ぷくくく」
『アクリスピ、頑張って最後まで言ってくれ』
『パープルメアもまた笑い出したwwwwww』
『いいよな、3人が笑っているだけの配信もいい』
こうして、後半は話が進まないまま雑談が終わったが、この配信はかなり好評だった。
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