第19話

 12人を送った後アクアマリンを見た。


「まだ元気か?」

「はい、もっと戦いたいです!」

「では戻るか。アサルトアントの巣に」

「はい!」


 アサルトアントの巣に引き返した。




 イクスはその間に掲示板で拡散されている事実を知らない。

 ネットで拡散され、解析動画と切り抜き動画が続々とアップされつつあった。



「ここでいいだろう。巣に入るには早いが配信をスタートするのだ」

「はい!え?」

「ん?どうした?」


「登録者数が5万を超えています」

「おめでとう、良かったではないか」

「でも、急に伸びたような」

「うむ、伸び始めると急に伸びるらしいからな。アクアマリンの努力が実ったのだ」


「ご主人様がいたおかげで伸びました」

「そんな事は無い」

「でも、ご主人様のチャンネル登録者数が20万を超えています」

「……ん?」


 俺はそこまで動画をアップしていない。

 おかしい。


「そ、それよりも配信をスタートするのだ」


「はい!どうも、アクアマリンです。アサルトアント狩りの配信を始めます」

「5万人達成を報告するのだ」

「チャンネル登録者数5万人を突破しました。ありがとうございます」


「凄い勢いでコメントが流れてます」


『来た来た来た来たああああああああ!』

『まおうかあさんもいる!拡散せねば!』

『お母さん発見!』


「む、アサルトアントが6体来たようだ」

「は、はい!行けます!」


 アクアマリンは順調にアサルトアントを倒して収納した。


 ギイイイイイイイ!


「む、ソルジャーか」


 アサルトアントには働きアリと兵隊アリがいる。

 今まで倒して来たのは働きアリだ。


 アサルトアント・ソルジャーは体が大きく身長はアクアマリンと同じくらいだが体格で考えればアクアマリンより遥かに大きい。


「俺も戦おう」

「大丈夫です」


 アクアマリンがソルジャーに回り込むように位置取りをしながら足を攻撃していく。

 ソルジャーはあごで攻撃しようと回転するが徐々に足を切られて動けなくなる。

 アクアマリンがソルジャーにジャンプして剣を何度も突き刺した。


 ソルジャーが倒れるとアクアマリンが手慣れた様子で収納する。

 収納にも慣れてきたか。


『おおお!かっけえ!』

『攻撃力不足を武器で補ってるね』

『あの武器俺も欲しいわ』

『それ魔王様の聖水蒸発案件になるぞ』

『お母さん、ご自愛ください』


「アクアマリン、そろそろ次の魔法を覚えようではないか。氷と水の適性がある。攻撃の為の氷と、回復の水、どちらにするか決めておいた方がいい。おすすめは氷だ。やられる前に倒すのが魔物狩りの基本なのだ」

「はい、でも、水にしたいです」


「……うむ、やる気がある方を覚えようではないか。だが今日帰ってからだ」


『本当は氷を覚えて欲しかったんだなwwwwww』

『お母さんが言葉を飲み込んだ』

『今の間!ウケる!』

『アクアマリンちゃん、バッサリ言ったな』


「はい!」

「巣に向かう」

「はい!」


 ギイイイイイイイイイイ! 


 またソルジャーか。

 運がいいのか悪いのか、数が多い。


 アクアマリンは前回と同じ要領で問題無くソルジャーを倒した。


「「ギイイイイイイイイイイ!!」」

「は!ソルジャーが4体が現れた!」


 俺は前に出た。

 4体が俺にターゲットを移す。


 アサルトアント・ソルジャーのタックルをギリギリで躱し、次のタックルも体をひねって躱した。

 俺は逃げ回るように攻撃を避けた。

 ソルジャー2体が頭をぶつける。


『あれを避けるのか!』

『倒すより難しくね!!?』

『切り抜き案件だな』


 その隙にアクアマリンが後ろから飛び込んで1体、2体と倒していった。

 最後のソルジャーを倒すとアクアマリンがジャンプして喜んだ。


「力が増してきました!」


「うむ、それでいい。しかし、運がいいのか悪いのか、ソルジャーが多い。だが先に進むか。巣に入り、雰囲気だけを見て戻って来るのだ。言っておくがまだ一人で巣に入ってはいけない!ソロで、ソルジャーとの複数戦闘は絶対に避けるのだ」

「はい!」


『やばくね?このまま進むのか?』

『お、お母さんがいれば大丈夫だ。ガクブル』

『嫌な予感がする』

『そしてその後、2人を見た者はいない』


「「ギイイイイイイイイイイ!!」」


 巣に入ろうとするとソルジャー4体、働きアリが、数十体か。


「ご主人様と一緒なら行けます」

「……うむ、行くか」


『アクアちゃんは意外と特攻隊長だよな』

『やばくね?危ないだろ?』


 俺は魔物を挑発してターゲットを取りつつ、一切攻撃せず見守る。

 あごの噛みつき攻撃を躱して後ろに回り込む。


 アクアマリンの討伐速度は上がっていき、どんどん魔物を倒していく。


「さすがアクアマリンだ!動きにセンスがある。俺を追いこしてCランクになるのも時間の問題だろう!」

「どんどん行きます!」


「これで魔法を覚えればさらに強くなる!」

「はい!」


 アクアマリンは魔物を全滅させてすべてを収納に収めた。


「魔力を使いすぎて苦しくはないか?」

「大丈夫です」

「今日はここでやめておくとするか。巣は今度にする」

「はい!」


『また話が変わった!』

『冒険者は不確実性の連続よ?やばいと思ったらやめておくのは賢い選択』

『アクアを見てればここで引き上げるのが正しい判断』


 配信を終了させてギルドに帰る。



 アサルトアントを納品すると受付嬢が驚いていた。


「こ、こんなに!」

「会計まで時間がかかる。その間に水魔法の訓練をする。一度魔力が無くなる経験をした方がいい」

「はい!」


 俺達は外に出た。


「まずはこのように水魔法で青白い輝きを発生させるのだ」

「はい!」

「それと、ウォーターの魔法を使うのだ。威力は低めだが使い続ける事で回復魔法を覚えやすくなる」

「見せて欲しいです」


「うむ、ウォーター!」


 水球を発生させて飛ばす。


「ウォーター!」


 アクアマリンの水球が途中で地面に落ちる。


「うまくいきません」

「いや、魔物の牽制には十分だ。慣れればもっと良くなる。これからは戦闘中にも使っていってくれ」

「はい!」


 訓練を終わらせ、魔物の報酬をアクアマリンに受け取らせて帰った。


 



【受付嬢視点】


 あれだけ動き回って呪いは大丈夫なのだろうか?

 普通はあれだけの呪いを受ければ死ぬ。

 それなのにケロッとしている。


 ネットで何かをするたびに話題になっている事に気づいているのだろうか?

 アサルトアントに素手で飛び込んで攻撃もせずによけ続ける事は難しい。

 まだ普通に倒した方が楽なのだ。


 冒険者ではない人にも、時間差で解説動画が流れる。

 いやでもイクスさんの能力を知るだろう。


 仮面と同じだ。

 力を隠せば隠すほど目立っている。

 イクスさんは感覚がずれている。

 浮世離れしている。


 私はギルドカードを取り出した。

 早速イクスさんの切り抜きと解説の動画がアップされ始めていた。


 イクスさんとのコラボ効果でアクアマリンさんの登録者数はすぐに10万を超えるだろう。

 そろそろ次の奴隷を買ってもいい頃だと思う。

 でも、忙しそうだ。

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