第8話
更にアクリスピの動画を見ていく。
今度はパープルメアと一緒に雑談をしている。
コラボでアクリスピの登録者数を増やす気か。
『どうも、パープルメアです』
『今から2人で『魔王の奴隷講座』を見ていく』
『私もはまってるよ』
俺の動画が流れ、2人の顔も映る。
だが問題は無いはずだ。
何故なら俺の動画は少ない。
アップしている数が少なければこの形式はすぐ終わる。
『くっくっく、ようこそ我がチャンネルへ。魔王だ!俺の奴隷を紹介する。アクアマリン、挨拶をするのだ』
『おいおい、キャラが定まってないぜ』
パープルメアが口に手を押さえて笑い出す。
アクリスピはにたあっと笑顔を浮かべる。
『くっくっく、助けたくば『アクアマリンが奴隷から解放されるまで』にチャンネル登録をして応援するのだな。俺の動画にそのリンクも貼ってある。くっくっくく』
アクリスピが俺のしゃべり方をマネする。
『くっくっく、可愛そうなアクアマリンを助ける為にチャンネル登録をお願いします。リンクを張っておくのでどうかよろしくです。くっくっくく』
パープルメアがそれを聞いて小刻みに震えるように更に笑いだした。
『魔王さん、ぶどうジュースのおかわりはいりますか?』
『う、うるさい!だが、貰うとしよう。言っておくがワインはジュースの様な物だ。そういう意味なのだ』
アクリスピがまた俺のマネをする。
『ありがたく貰います。アクアマリンに何かあってはいけない。俺は酔うわけにはいかないのだ!』
このパターンがしばらく続く。
『くっくっく、魔王であるこの俺は奴隷を使って優雅に生活を続ける!助けたければ奴隷を買って解放するがいい!アクアマリンを解放したければ投げ銭や繰り返し動画を視聴する事によって解放に近づくだろう!この世に闇がある限り俺のようなものがうごめき続けるのだ!ふはははははははははははは……』
『くっくっく、世の中にはお金持ちが居る一方で借金奴隷のような恵まれない人がいます。借金奴隷を解放したいので寄付や奴隷解放をお願いします!ふはははははははははははは……』
『スライムダンジョンは足場が悪い。洞窟には水が流れている為所々湿っている。洞窟が光っている為見えはするが薄暗くて視界が悪い。足を滑らせないように気を付けるのだな』
『ここは地面が濡れていて視界が悪いです。滑らないように気を付けてください』
アクリスピは完全に俺をからかっている。
俺の動画は少ない。
もうバカには出来ないだろう。
もう終わりなのだ。
2人がしばらく笑うと話題を変えた。
パープルメアが優しい口調で語り出す。
『昔話をします。100年前、苦しい修行で不老の力を手に入れた4人の英雄がいました。厄災の魔物を討伐しましたがその時4人は呪いを受けました。恥ずかしがり屋の英雄は考えました。俺は英雄じゃなかった、そういう事にしよう。こうして他の英雄の手記や機密文書を燃やし、自分の事を英雄から付き人に変えた嘘の絵本をみんなに配り、手を変え品を変え4英雄から3英雄に歴史を改変していきました』
俺の事か!
優しい3英雄が付き人の俺を不憫に思い一緒に英雄にしてくれた、そんなストーリーの3英雄物語を発売した。
『恥ずかしがり屋の英雄はさらに考えました。奴隷が嫌いだ。特に借金奴隷が嫌いだ、と。そこでこの国を含めた周辺4国に働きかけて奴隷を廃止しようとしました。でもうまくいきませんでした。それでも英雄は諦めません。英雄は考えます。孤児院を作ろうと。そして孤児院を作り奴隷は減りましたがそれでも奴隷は無くなりません』
そう、焼け石に水だ。
投資を始めて資産を減らさないようにしつつ持続的に運営できる孤児院協会を立ち上げた。
少しずつ成長しているが孤児院自体がそもそも足りない。
1つの事だけをやっても駄目だ。
世界はそんなに単純ではない。
『他の英雄が呪いを癒す中、恥ずかしがり屋の英雄は呪いを治す事を後回しにして人を助け続けました。最初に呪いが癒えた革新の英雄と協力してインターネット・ギルドカード・魔道具を作り4国を便利な世界に変えました。それでも奴隷を無くすことは出来ませんでした。英雄はさらに考えます。そして魔王の奴隷講座を立ち上げました』
パープルメアはにっこりとほほ笑んだ。
『さて、問題です。彼は今何をしようとしているでしょう?いえ、みんなに何をしてほしいと願っているのでしょうか?英雄も人間です。一人の人間が出来る事は限られています。さて、4人目の英雄は皆にどうして欲しいのでしょうか?』
奴隷制度を廃止すれば国力が落ちる。
この周囲は4か国の島国で形成されている。
仮に4国の内1国が奴隷を廃止すればその国は生産力が落ち、人が流出して衰退する。
奴隷をゼロにはできない。
ならば、100の問題をを90に変える、80に変える。
ゆっくりでいい、時間はたくさんある。
「計画を、変更しないとな。身バレしてしまった」
俺は、アクアマリンのいるギルドに戻った。
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