第6話
【次の日】
「アクアマリン、ゴレショの使い方を教える。魔力を流しつつ起動と唱えるのだ」
「起動」
ゴレショが立ち上がり飛んでアクアマリンを撮影する。
「それでいい。次はギルドカードを起動させてここに入り、ここを押せば配信開始だ。配信を止める場合はここを押せばいい。実際にやってみるのだ」
「分かりました」
「それではダンジョンの前まで移動した後スタートだ」
「はい!」
「おはようございます。アクアマリンです。昨日から冒険者を始めて3000ゴールドの報酬を受け取りました。1億ゴールドの返済を目指して頑張ります」
順調だ。
ゴレショの操作も問題な、ん?
「待つのだ。寝癖が付いている」
「あ、ごめんなさい」
「女性たるもの身だしなみには気を付けるのだ。……朝に弱いのか?」
「そう、かもしれません。少し眠いです」
「まだダンジョン2日目だ。疲れが溜まっているのかもしれん。明日から少し遅れて配信を開始するのだ。たっぷり眠ってから働くのだぞ?」
「はい」
こうしてダンジョンを2往復しその日の配信は終わった。
「明日から7日ほど留守にする。無理はしないようにな?」
「分かりました」
「ゆっくり休むのだ」
次の日、俺は出かけた。
【アクアマリン視点】
次の日、ダンジョンに行こうとすると声をかけられた。
「アクアマリンだよね?」
「ちっちゃくておっきいひとの方ですね?」
「ん、そう。名前はアクリスピ」
「えーと」
「イクスは?」
「7日ほど出かけて帰ってきません」
その瞬間にアクリスピさんがにたあっと笑った。
「コラボしよ」
「で、でも、かってに決めるのはまずいと、思います」
「ん、同時配信にしてパーティーを組むのは?」
「パーティーも……ちょっと」
「分かった。私は勝手にスライムを狩る」
そう言って私の後ろをついてきた。
アクリスピさんの後ろを見ると、同じゴレショを使っていた。
「アクアマリン、魔物を倒すと力が増すよね?」
「そう、ですね」
「たくさん倒すといっぱい上がる」
「そう、ですね」
「配信、スタート、しよっか」
「あ、はい」
私は配信をスタートして洞窟に入った。
「奥に、入らないの?」
「ご主人様に禁止されています」
「ん、分かった……アクアマリンが奴隷から解放されるまでのアクアマリン、偶然だね!」
アクリスピさんは棒読みで言った。
そして洞窟の入り口にアイテムを投げた。
洞窟から物音が聞こえて大量のスライムが集まって来た。
「アクアマリンがピンチ!気になる人はアクアマリンが奴隷から解放されるまでにチャンネル登録して」
アクリスピさんが棒読みで言った。
「ス、スライムが一杯来ます!出口が塞がれます」
「ん、でも大丈夫。私がスライムを倒せばアクアマリンは魔物の生命力を吸収できる。強くなれる。無事に帰れる」
出口が完全にふさがれた。
「わわわ!今投げたのは何ですか?」
「魔物をおびき寄せるアイテム。超強力」
「逃げられなくなっちゃいますよ!」
「大丈夫」
アクリスピさんは斧を横なぎに振った。
そのままくるくると回転を始めて踊るようにスライムを倒していく。
100を超えるスライムをあっという間に全滅した。
私の力が増していく。
「全部倒した。奥に進もう」
「でも、入り口から離れないように言われました」
「離れすぎなければ大丈夫。それにここに魔物はいない。少し奥に行って入り口から離れすぎないようにすれば大丈夫」
「……分かりました」
私は少しだけ奥に進んだ。
「大きなスライムです!逃げましょう!」
「今のアクアマリンなら倒せる。その装備ならちゃんと当てれば倒せる」
「でも!」
「いつかは倒す相手」
いつかは倒す相手。
その通りだ。
アクリスピさんが前に出て注意を引き付ける。
「今!」
私は死角からショートソードで何度も斬りつけた。
「うあああああああああああああああああ!」
大きなスライムが倒れる。
私の力がさらに増した。
「おめ~」
「あ、ありがとうございます。アクリスピさんが注意を逸らしてくれたおかげです」
「倒したのはアクアマリン。いい子にはご飯をごちそうする」
そう言ってアクリスピさんは大きなスライムを収納するとギルドに戻った。
アクリスピさんがギルドでスライムを取り出す。
「全部アクアマリンの討伐」
「え、でも」
「まずは会計の計算をしますね。しばらくお待ちください」
「アクアマリンにご飯を奢る」
「では食事を摂りつつお待ちください」
私はテーブルに案内されてアクリスピさんと一緒に座った。
「あの、配信はまだ止めないんですか?」
「会計待ち、終わったら一緒に止めよう」
食事が運ばれてきた。
「遠慮なく食べて」
「い、頂きます」
受付のお姉さんが歩いてきた。
「魔物の討伐報酬ですが、スライム1000ゴールド×103体、更にボススライム1体が10万ゴールド、計20万3000ゴールドとなります」
「アクリスピさんが受け取ってください。アクリスピさんのおかげです。私は強くなれたのでもう充分です」
「ん、寄付する。アクアマリンに寄付する」
「はい、アクアマリンさんに報酬をお支払いします。ギルドカードをお願いします」
「で、でも」
「ギルドカードをお願いします」
「アクリスピさんが」
「ギルドカードをお願いします」
「……はい」
その後一緒に食事を食べる。
「配信、切り忘れてた」
「そ、そうでした」
私は挨拶をして配信を切った。
私のチャンネルは登録者数が1034人になっていた。
アクリスピさんの登録者数は万を超えている。
そのおかげだ。
小さき巨人 アクリスピ。
100年前の英雄と同じ名前。
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