転生先の時代を塗り替えたいと思います

牙崎鈴

銃がないので作ります。


「あーー我慢なんない。これしか作れないなんて、ほんっとにつまんない。」

古びて傷ついた簡素な木の机。

その机の横に立てかけられた何の装飾もされてない長剣。

その反対には白く、うっすらとほこりの積もったこれまた簡素なベッド。

その上に置かれてあるのは長く、だれもが想像しそうな猟銃に似た長い銃。

スナイドル銃。

そして、これまた簡素な木の椅子に座り込み、だらしなく椅子の背もたれに体を預け、髪が乱れているというのに気にしない様子で天井を仰ぎ見ている少女、クロアは溜息を吐いた。

端整な顔立ちに吸い込まれそうなルビー色の瞳、多少乱れているものの、長く、つやのある黒髪をしたアイドルになれそうな美少女だ。

その美少女は今悩んでいる。

99%の人は聞いた途端に唖然とくるであろう。

「スナイパーライフルとかアサルトライフルとかロケットランチャーとか作れないじゃん!」

銃が作れないことに悩んでいるのだ。

ゲームの世界ででも、おもちゃとしてでもない。

本物を作りたいのだ。

彼女だけの。

でもこの世界には存在しない。

なぜなら、

「あ~あ。どうせなら銃がある世界に転生してほしかったよ。」

彼女は実は転生しただからだ。


もともと彼は何の変哲もない平凡な学生だった。

ただ、部屋中にモデルガンを飾るほど銃が大好きだった。

でも、ある日突然乗っていたバスが誤ってどうやったらそうなるのか高架橋に入る直前に道を外れ、そのまま海に落ちてしまったのだ。



「丸一年かけて作ったのに使えるのはこれだけかよ~。」

ちなみに家のそばには自分で作った倉庫があり、中には作られたけど使い物にならなかった失敗作の銃が大量にしまってある。

コンコンコン

突然、ドアをノックする音が聞こえた。

「ん?はあーい?」

返事をしながらドアを開けるとクロアに似た、でも髪をショートヘアにまとめた二十代ほどの女性がいた。

「お母さん?どうしたの?」

クロアに似たショートヘアの女性—――クロアの母はどこか疲れた様子で、戸惑ったような声音で発した。

「おばあさまがあなたに会いたがってるそうよ。」

「へ?」

おばあさま―――クロアの祖母は兵士を志願し、驚くほどの才能を持っていることから王の護衛を任されている。

そのおばあさまがなぜ……自分や家族の命より大事な王の護衛を外れてまで会いに来るなど……

とりあえず会ってみるかと思い、待っているであろうリビングへと向かう。

やっぱりいた……。

もうどこにでもいるおばあちゃんの見た目なのに、静かに佇む姿は政治家に似た威厳を感じる。

「久しぶりですね。クロア。」

声はほんの少しかすれているものの、アルトに似た高音でも低音でもない不思議な音。

でもその一言でクロアは背筋をただした。

少しの乱れも許さない。

祖母の目がそう語っているように見えたからだ。

「ええ、お久しぶりです。」

そう返すと、祖母は、目元をやわらげ、苦笑した。

「そう硬くならなくてかまいませんよ。今日お前に会いに来たのは悪い話をしに来たわけではないのですから。」

でも怖いんだよなぁ~

大体この祖母からくる話は銃を高値で買い取ってくれる業者を見つけたぞとか、学校から推薦状をいただきましたよとか、クロアにとっては嫌なことなのだ。

え?学校はいい話だろ?

そうではないのだ。

銃をだれよりも愛でるクロアにとって学校とはただ時間を無駄に食う場所でしかないのだ。

「リアラーズ学園から推薦状が届いたのですよ。」

ほうら。やっぱりそう……?

「え……?」

今……なんて?


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