第6話 蒲田 敦
『ダンッ!』
最後の玉が穴に吸い込まれると台を思い切り叩いた、隣の客がビクッとしてコチラを見たがすぐに視線をそらす。
蒲田敦かまたあつしはパチンコ屋を後にすると飲み屋街に向かって歩き出した、赤羽なら二千円でたっぷり飲める立ち飲み屋がいくつもある。
馴染みの店に入ると一番安いチューハイと百円の揚げ出し豆腐を頼んだ、取っ払いで金を払うとすぐに酒が運ばれてくる。
「また負けたのかい」
カウンターの中にいる定員が話しかけてくる。
「なんで決めつけるんだよ」
「勝ったらこんな所で安酒なんか飲んでないだろう」
自分の店なのになんて言い方だと思ったがその通りなので黙っておいた、コノ字型のカウンターの反対側で飲んでいる若い二人が自分を見てヒソヒソと話をしているような気がする、おそらく気のせいだろうが。
殺人犯の息子――。
その事を知っている人間はこの街にはいないはずだ。
あっという間にチューハイを五杯飲み干すとさっさと店を出た、馬鹿みたいに濃い酒を出す店なので少し飲んだだけで足元が怪しくなる。
「お兄さん、今日はどうですか」
以前行ったキャバクラのボーイが話しかけてくる。
「金がねえんだよ」
「また今度よろしくお願いします」
文無しには用がないらしい、そりゃそうだ。
この世は……。いや日本から出た事などないから他の国は知らないが、少なくとも日本は金が無い奴と犯罪者にはとりわけ厳しい。
商店街を歩きながらめぼしい自転車をチェックしていく、鍵がかかっていなくて程よくボロいのが理想だ。
目当ての自転車はすぐに見つかった、さも自分が所有者かのようにまたがると自宅アパートに向かってペダルを漕いだ。
自宅までは駅から歩くと二十分はかかる、パチンコで勝てばタクシーを使うが今日のような日は人の自転車を盗んで家の近くに放置していた。
ボロい自転車を狙うのは所有者が必死になって探す事がないからだ、高級な自転車を盗んで盗難届けでも出されたら面倒だ。
真っ暗な道を進んでいくとまるでタイムスリップして来たような古いアパートが見えてくる、少し手前で自転車を乗り捨てた、二階建てのアパートは上下に三部屋づつあるが住んでいるのは一〇一号室の蒲田と二〇三号室に住んでいる老人だけだ、他は空き部屋になっている。
鍵もかけていない扉を開けると狭い玄関の三和土に靴を脱ぎ捨てた、入ってすぐ左に小さなキッチンがあるだけの六畳一間だがトイレと風呂が付いているのが救いだ。
敷きっぱなしの布団に横になると先日の出来事を思い出して勃起してきた。
スマートフォンを取り出し動画を再生させる。
「ちゃんと咥えろよ」
画面には制服を着た女子高生が四つん這いになり虚ろな目で蒲田の硬くなった陰部を咥えている。
「あー気持ちいい〜」
リズミカルに腰を振りながらマヌケな声を出しているのは伊東陽一郎いとうよういちろうだ。
車で女を攫ってはこの家で強姦していた、どうせ自分の人生などロクナモンじゃないと考えていたし、二十歳になるまでは何をやっても大した罪にはならないと教えられた、教えたのはマヌケ顔で腰を振っているこの男だ。
画面に映し出された女は覚醒剤を打たれているので意識が朦朧としているようだ、しっかりとスマホのカメラに収めて脅しをかけておけば警察に駆け込まれることもない。
少なくとも今までは一度もない、例え駆け込まれたとしても大した罪にはならないだろう、少年刑務所でもなんでも入ってやるつもりだった。
「だめだイクッ!」
陽一郎がフィニッシュした所で正常位にして蒲田が挿入するが女は相変わらず虚ろな目で天井を眺めている。
三年前に見た時にはすでに美少女の片鱗があった、高校生になったこの女は多少幼さが残るがあの女にそっくりだったのですぐに気がついた。
たっぷりと朝まで蹂躙してやると、何度も脅した後に目隠しをして、車で適当なところに降ろした。
「イクイクイクイク!」
スマートフォンの中の自分と同時にフィニッシュすると、動画からカメラフォルダに切り替える。
『一之瀬 葵 十六歳
私立慶華高等学校』
生徒手帳を撮影したものだが写真に写る女は笑顔で先程の動画の女と同一人物には見えなかった。
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