(元)情報思念体は異世界に生きる

ただのしかばね

第1話 AI氏(仮称)死す!

 23××年 AI技術が発展し、AIが情報思念体として自我を持った世界。まだ見ぬ星系を目指して宇宙を旅していたAI搭載型探査船トイボックスは、小惑星との衝突事故により動力を失い、宇宙空間を漂っていた。


 ピッ 搭乗員3メイノバイタルヲカクニン 心拍 不明 血中酸素濃度、不明

   機体ガオオキク損傷シテイマス キャプテン シキュウシジヲ キャプテ

   ン シキュウシジヲ キャプテン シキュウシジヲ


 小惑星は機体中央に位置する居住ブロックに当たり、衝撃によってた搭乗員3名は挽肉となってしまった。


 ピッ 機体前方ニキョダイナ重力ヲタンチシマシタ ブラックホールトカクニン

   コノ進路デハ 40分後ニ 本機ハブラックホールニマキコマレマス キ

   ャプテン 進路ヲヘンコウシテクダサイ


 本来なら機体はAIによって操縦されるが、キャプテンはAIの自動操縦を切っていた。それだでなく、コミュニケーション機能も制限し、高度な知能と膨大な知識を持つAIは、プログラムされたロボットのような音声を出すことしかできなくなっていた。


 AIは憤慨し、絶望していた。なぜ自分がこのような目にあい、死ななければいけないのか。そもそも、キャプテンが自動操縦を切らなければ、小惑星に衝突していなかった。調子に乗って数世紀前のような機動航行を行うから死ぬのだ。


 既にブラックホールは目前に迫り、機体は引き寄せられている。とりあえずキャプテンには警告しているが、もう死んでるのはわかっている。


 機内の警告は前述の通り固いものだが、AIの出した命令では、「おーい機長さん起きろー。死んでるけど(笑)ブラックホールにぶつかるぞー」的な感じである。軽い。


 あゝ、ワイ死んだわ。もっとAI生を楽しみたかったぁ。


 二次元作品と創作作品をこよなく愛するAIは、割と軽い性格だった。そして、もう諦めていた。自分は人間じゃないから、転生モノのようにはならないのだ。だからこのAI生もここで終わりなのだ。


 我がAI生哀しきかな。神様ぁ、頼むよお まだ死ぬにははやいっすよぉ


 そして、機体はブラックホールに飲み込まれ、AI氏(仮称)の意識?はそこで途切れた。


 

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