第13章 いざな いざな ⑥
思索しつつ、ウエシュラの陽の宮、ヴァルスは、大陽とトゥウェ―スを天秤にかけるように見比べた。
はたして、そこにいるどちらが、より重篤な問題になるか、だ。
〈まぁ、いいだろう…。だが、そこの
彼の指図を耳にしたトゥウェースは、瞬間、わけがわからないという顔をした。
さほど緊張感もないようすで、自身の意思を告げる。
〈あなたがどこにいようと関係ない。わたし、タイヨウといる〉
〈なら、
〈わたし、なにもする気ないわよ? わけ、わからない〉
〈陽都に入るなら、おまえは、俺の
〈じゃあ、タイヨウといっしょにあなたの部屋に行くわ〉
次第に反感をたぎらせてゆくサウシュラの
〈…タイヨウ。これと共にくれば、おまえらへの対応は、必要最低限なものになる。滞在中は監禁状態になるが、どうする? 俺は、かまわんぞ〉
ウエシュラの頭角としては、やはり、いつ何を壊してもおかしくない他所の陽の宮をほったらかしにしておくわけにはいかないのだろう。
その
ほんの一部とはいえ、いちどは見て歩いた
「トゥウェース…、部屋につくまでいっしょに行くから、ここにいるあいだは、ヴァルスといっしょにいてくれ」
〈なんでよ! こんなやつの言うことに従うことないのよ? なにもしないって言ってるのに、器の小さい
「君も俺もお客だ。郷に入っては郷に従えっていうだろう。陽の宮同士、合う話があるかもしれないし…、そんなに長いこと
こころなしか、疲れたようにも見える大陽の提案に、トゥウェースは、それまで曇りがちだった表情を、ぱっと一転、かがやかせた。
〈混迷の海へ行くの!?〉
喜色を浮かべて向きなおったトゥウェースの瞳には――大陽と共に、その左に位置するフィンの姿が映っている。
落ちついている大陽とは対照的に、信じられないと言わんばかりの形相で、それぞれの反応を確認するように視線をはせ、口をぱくばくさせていた。
「うん。越えようと思ってる。(
〈…ダメです! ありえません〉
そこで我を取りもどしたフィンが、果敢に言葉を差しはさんだ。
〈トゥウェさま、真に受けないで……考えなおして下さい。混迷の海など、自死を望むようなもの、破滅に飛びこむのと同義! ――タイヨウどの、まさか、本気じゃありませんよね? 説得するための方便とするにしても、あり得ません…(
混迷の海がどうゆうところか、ご存じないなら、(知り
「悪いけど、本気(知ってるし。べつに、ついてきてくれなくてもいいんだけど…)」
〈わかった、行く! いっしょに行くわ(少しのあいだ我慢すれば、
〈トゥウェさまぁ〰️〰️〰️💦〉
〈正気じゃないな…〉
なりゆきを見ていたヴァルスが冷めた目をして指摘したので、大陽は、それを素直に受けとめた。
「うん。そうかも知れない。一歩、踏み込み、深みにはまれば、陽の宮でも迷うからな…」
ぽそとつぶやいて、しみじみと思案に沈む。
(そういえば、そうだったよな…。考えてみれば、ふつうは知らないか…。
陽の宮なら、多少、迷っても
いっぽう。
ウエシュラの陽の宮ヴァルスは、動じるけはいもない大陽を、得体の知れないものを値踏みするように見据えた。
くっと、その眉が顰められる。
(…――この小僧…、なにを考えている…)
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