一人の中の一位じゃなくて、大勢の中の一位がいい
乙女の悩み
人に好きと言い回ってた時には想像もしなかった。
誰しもが「好き」と言ってもらえれば嬉しいものだと思ってた。
でも恋先輩はきっと違う。
好意を向けてる相手に「好き」と言われて喜びはするかもしれないけど恋先輩はそれを一つの実感としてしか得ない気がする。
今日のご飯美味しくて嬉しいとか今日は虫に刺されなかったぞとかそんなレベル
そんなの嫌だよ。好きな人に言われるんだからやっぱり飛び跳ねるくらい喜んでほしい。
というか恋先輩が自分を好きと当たり前のように仮定してるけど、思い返すと顔から火が出るくらい恥ずかしくなる。
「どうしたらいいんだろ」
ずっとこうやって夕夏ちゃんに悩みを話して実際に悩んでみてもなかなか解決法は見つからない。
「自分の思ったことが正しいと思っちゃう癖かぁ」
夕夏ちゃんは今度はテーブルに向かうように座っていじいじとテーブルの木目を子供みたいに指でなぞってる。
「絶対恋先輩は人が好きなんだよ。嫌われちゃったから諦めてるだけ」
「まぁたしかにあの見た目だもんなぁ。そりゃいじめられるよね」
見た目は関係あるのかな
「というか、夕夏ちゃん驚かないの?あの恋先輩がいじめられてるなんて」
「え?だって、されてそうじゃん。見てて分かるし、直接話したから」
「え!?」
そういうものなのかな。
見てても分からないけど...
ただあんな目の覚めるようなべっぴんさんが嫌われてるところはなかなか想像し難いけど、変わり者が爪弾きにされちゃうのはよくあることだろう。
昔はあんなパンクな感じじゃなかったとしても可愛くて頭良いとか女の子からもまぁまぁ嫌われそうな気がしなくもない。
「うん、考えよう。悠里。どうしたらいいかを漠然と考える前に目的と手段を明確にしよう」
「そ、そうだね」
何をしてほしいか、そしてそのためにどうしたらいいか。
どうすれば周りを好きになってくれるか、恋先輩の中に入れてくれるのか。
したいことはいっぱいあるけれどその中で考える。
全てにおいて一番なことは
「わたしは、恋先輩に変わってほしい」
「それじゃ漠然としすぎ。もっと具体的に」
「え、えー」
夕夏ちゃんも本気で考えてるようでいつもみたいに甘やかしてくれない。
ただそれは真剣に考えてるってことの裏返しだから嬉しくなる。
喧嘩したけれど夕夏ちゃんは悠里のそばにいてくれてるという安心感が湧き出てくる。
だからはっきりと、自分の気持ちに正直になれる
「人を好きになってほしい。距離を、人を入れる距離を広げてほしい。その上でわたしを受け入れてほしい。一人ぼっちの先輩をわたしは見たくないし、他の人たちを好きな上でわたしを好きになってほしい」
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