一次選考を突破するためだけの小手先テクニック(有益度★★★★★)
前回のエッセイに軽く書いたんですが、これはもともと商業デビューが決まる前から推していただいていた皆さんに10年近い投稿生活で会得したコツのようなものを感謝の気持ちと共に共有するために書いて1日だけ限定で公開していたものがベースになっています。
(その時はたった1日だけ、しかも近況ノートでしか公開していなかったんですが、かなり反響がありました)
今回は書籍刊行に際しての宣伝のために掲載します。
もし役に立ったと思われた方はですね、私のデビュー作のご予約をいただけますと幸いです。予約したよー、みたいなツイートとかコメントをいただくと非常に喜びます。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322210001442/
さて、本題。
まず私はデビューが決まるまでに新人賞の最終選考に6回残ったことがあるのですが、落ちた作品は一部あるいは全面改稿して色んな賞に出し直してきました。その度に比較検討というのを10年近く繰り返してきた中で掴んだ傾向を今回皆さまにお伝えしましょう、というものです。
いつだったか、新人賞で一度落ちた作品は他の賞に出し直すべからず、というようなことを賞の選考に携わる書評家の方が主張して少し話題になったことがありますが、個人的には改稿して出し直して結果が変わるということを何度も経験しているのでその意見には基本的には否定的です。
基本的、と付けているのは、1作に固執していても仕方ないという点では同意ですが、新作を書きながら過去の自信作のブラッシュアップをして実験するのは成長のための有効手段でしょう、ということですね。あと選考委員は全知全能ではなく好みもあるので1社に落ちたからその作品がダメとは言い切れないはずです。落選作をカクヨムや投稿サイトに掲載したり、逆に掲載したものを賞に出す、というのも良いと思っています。皆さんも自分だけの小手先テクニックというものをぜひ編み出してみてください。
では始めます。
・一人称で書く
→何気にこれがかなり大きな要素だと思っています。三人称で書いていた作品を内容そのまま人称を変えただけで、二次落ちだった作品がいきなり最終や一個手前まで残ったということが何度かあります。
個人的には三人称・視点人物固定が一番書きやすいですし、作品クオリティとしては高くなると思っているのですが、おそらく想像以上に『感情移入できるかどうか』というのは評価において大きなウェイトを占めているのではないかと考えています。
三人称だと(視点人物がいて心情描写もあっても)感情移入できない、一人称しか読めないという意見を1回2回くらいは見聞きした記憶があるのですが、出版社で選考しているプロの中にも一定数そういう人がいるのか、マーケティング的なものなのかはわかりませんが、そのくらい結果に差が出る印象です。
・笑い、ユーモアを入れる。
→これも同じ作品で何が足りないのか考えて、シリアスな作品でも悪ふざけにならない程度にユーモアを散りばめたバージョンを作って、複数の賞に出したのですが、良い結果が出ました。
これについてはずっと緊張感が持続すると読むのも疲れてしまいますが、所々リラックスできるポイントがあることでストレスが都度都度リセットされて長編も読みやすくなるのではないかと考えています。
また「笑った」というのはイコール「面白かった」という感想に直結しやすというのもあるかもしれません。泣いたり怒ったりと感情が揺さぶられる感覚を得られるものもまた面白い作品と言えますが、読み終わった直後にストレートに面白かったと言えるかというと難しいですよね。
数日経った後に、あぁ良いものを読んだなとか人生の糧になったなとか思うわけで。
なんだかんだ笑えるというのは読後すぐに評価せざるをえない選考だと結果に響いてくるのかなぁと。
担当編集者さんにも『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』に限らず他の短編にもユーモアが差し込まれていることは気づかれていました。
・書き出しとラストが大事
→だいたい書き出しにパンチがあれば最後まで読んでもらえますし、ラストがエモければ全体的によかったような印象与えられるんじゃないかと思います。
プロローグで歴史語ったり、よくわからない詩とかを入れるよりは爆弾を爆発させたり、死体転がしておいた方が良さそうです。(冒頭で死体転がせはミステリー小説の書き方の格言として超有名ですが、意外とミステリーを読んだり書いたりしない方にはなじみがないのかもしれません)
個人的な感覚ですが、書き出しとラストでうまくインパクト出せた作品はトータルの完成度がイマイチかなぁと思ったり、中盤に結構粗あるかなぁという時もかなり見逃してもらってきた印象あります。でも、そういう作品は所詮はインパクトで誤魔化してるだけなので、最後までは勝ちきれないですね。ザ・小手先です。
・参考資料
→まず本エッセイに何度か登場している貴志祐介先生の『エンタテインメントの作り方』はかなりエンタメ小説には特化した内容ではありますが有用だと思います。即効性のあるアドバイスが沢山載っています。
もう1冊ご紹介しますと、色んな作家さんが「この本を読んだおかげでデビューできた」とインタビューやあとがきで挙げている『書きあぐねている人のための小説入門』(保坂和志先生)ですね。この1冊だけを読んで書けるようにはならないです。そういう本ではないので。エンタメにもやや否定的なスタンスですし。この本には小説を書くということ、についてが書かれています。これは一次選考を突破した後や長く小説を書き続けていっていつか立ち止まりそうになってしまった時に効いてくる気がします。本記事の趣旨とは少しズレてはいますが。
と、ここままでつらつらと書いてきましたが全部主観なので鵜呑みにはしないでください。私はそうだったよ、というだけです。
本当に小手先のテクニックなので、別にそれだけでなんとかなるようなもんではないです。
とはいえこれだけやれば一次選考くらいは通るんじゃないかなぁと個人的には思ってはいます。
この記事が一次も通らないとか二次止まりとかで伸び悩んでいる人が壁を破るキッカケになったら嬉しいなとは思います。
そしてもし役に立ったよ、とか参考にするよという方は、私のデビュー作への課金をお願いします。
(あんま売れなかったらこの記事は消えると思いますので、買ったよっていう方は書籍の購入特典としてそっとスクショなりコピペなりして持って帰ってください)
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