第3話 陽菜の新たな一面

午後の授業も終わり待ちに待った部活の時間。ホームルームが終わってすぐに部室に向かったが陽菜の姿は無かった。私は部室でイラストを描きながら待つことにした。

「先輩お疲れ様です」

「陽菜、お疲れ様」

「デッサン行きましょう!」

「そうね」

 まずは、丸山先生に鍵を借りに行った。

「先生鍵を借りに来ました」

「デッサンするのね、今日も頑張て!」

「はい、頑張ります!」

鍵を借りて昨日と同じようにデッサンを始めた。

陽菜は、デッサンの集中力は凄く黙々と描き進めていく。

私はというと、時々陽菜を眺めながら描いていた。

「先輩ピクシル見ますか?」

いきなり陽菜が話かけてきた。

ピクシルは自分で描いた絵などを投稿できるサイトだ。

「見るよ、絵を描くとき参考になるからいいよね」

「確かに参考になったりしますね」

「あとは好きな絵師さんがいてその人の作品を見たりしてる」

「そうなんですね」

でも私が好きな絵師さんは最近投稿が無い。

私はまたあの方の絵が見たい。

「先輩、そろそろ終わりませんか?」

「そうね、終わろっか」

2人は片づけをして図書館に鍵を返しに行った。

図書館に行くと閉館の看板が出ていたが先生は本棚で作業をしていた。

「失礼します、先生鍵返しに来ました」

「ありがとう」

「本棚変えるんですか」

「うん、新しい本が入らないからね」

「そうですか、私達も手伝います」

「え、良いの!助かる!」

作業内容は古い本を移動させて新しい本を入れる作業だ。

大変な作業だけど先生や陽菜と雑談をしながらするのが楽しい。

今日は部活の終礼は無いから最後まで手伝った。時計を見ると7時を過ぎていた。

「2人ともありがとう!じゃあこれ上げる」

先生がくれたのはチョコレートだった。

「ありがとうございます!」

 外に出ると空は薄暗くなっていた。

「だいぶ遅くまでいましたね」

「そうね、あまり遅くまで残ったりしないからね」

今日も2人は話をしながら帰った。

 家に帰った私はまずピクシルを開いた。

すると、投稿が止まっていた絵師さんであるMIZUさんが新規の投稿をしていた。


本日より投稿を再開します!


報告の文章と一緒にデジタルイラストが載っていた。

前まではアナログのイラストだけだったのが、デジタルイラストの投稿が出てきた。

これかは、MIZUさんの投稿を見る楽しみが増えた。

私もスケッチブックを開いて描きかけの絵を仕上げた。

「私もピクシル投稿してみようかな」

 翌朝私は、誰もいない教室でピクシルに投稿する絵を描いていた。過去作を投稿してもいいけれどせっかくの初投稿は新しく描きたかった。投稿したらMIZUさんに認知してもらえるかもしれないと思った。ホームルームが始まるまでにラフまでは描けた。

今日は部活が休みだから放課後も時間がある。こういう時は図書館のお気に入りの席で絵を描くと決めている。とりあえず放課後までに線画を描いて色塗りができるようにしておこう。

それからは授業中以外絵を描き進めていった。

 帰りのホームルームも終わり私は図書館に向かった。

お気に入りの席には誰もいない、すぐにスケッチブックを取り出して残りの線画を終わらせた。

 さそっく色塗りを始めようと思ったが。道具が美術室にあるのを思い出した。

美術室に行くとドアが開いていた。

「先輩?」

後ろから声をかけてきたのは陽菜だった。

「うわ!」

「すいません、驚かせてしまって」

「あ、うん、大丈夫。陽菜は美術室で何してたの?」

「私は、部活とは別の絵を描いていました」

「そうなんだ」

「先輩は何しに来たんですか?」

「私も絵を描いていて道具を取りに来たの」

「そうなんですね。そした一緒に描きませんか?」

「え!一緒に」

「はい、だめですか?」

もし、一緒に描くとなったら今描いている絵を見られるかもしれない。でも、可愛い後輩の誘いは断りたくない、どうしたらいいんだ。

「先輩、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫、一緒に描こう」

「じゃあ荷物持って来るね」

「わかりました」

私は荷物を待って美術室に戻った。

陽菜は黙々タブレットで絵を描いていた。

隣の席に座って色塗りを始めた。

絵を描くことに夢中で陽菜と話をすることは無かった。

絵を描き終えた私は陽菜の様子を見た。絵を描いていると思っていたら寝ていた。

陽菜の寝顔が見られた私は一人テンションが上がっていた。このままずっと見ておきたいけどそうはいかない。

「陽菜、そろそろ帰ろうか」

「ん?うわ!」

「おはよ」

「私……寝ていたんですか!」

「うん」

「そうなんですか」

「よし、帰ろっか」

「はい!」

 昇降口を出ると雨が降っていた。

「今日雨降らないって言ってたのに」

「そうですね」

陽菜はカバンから折り畳み傘を取り出した。

「先輩も入りませんか?」

まさかの陽菜と相合傘ができる!

でも、ぐいぐい行くと引かれるかもしれないから一度遠慮しておこう。

「でも、折り畳み傘だし狭くなるよ」

「大丈夫ですよ私の傘大きいので」

「それじゃあお言葉に甘えさせていただきます」

陽菜とまさかの相合傘距離が近い、これから雨の日は陽菜と相合傘がいい!

と言うのが本音だがそんな事言えるわけがない。

「先輩、家まで送りましょうか?」

「ん、え!」

気が付いたらもう別れ道まで来ていた。

「いや、大丈夫ありがとう!」

「そうですか、じゃあまた明日!」

「じゃあね」

家に着くまで少し濡れてしまったが、陽菜と相合傘が出来たことで頭がいっぱいだった。

 夕食を済ませて部屋に戻った私は今日描いた絵を投稿した。

名前はゆっかにした。

MIZUさんに少しでも見てもらえるようにハッシュタグは全部同じにした。

「MIZUさんに見てもらえなくてもせめて誰かの目に留まってほしい」


「あれ、この人の投稿初めて見るなあ……」


翌朝、学校が休みの日は昼まで寝ていることが多いが今日はなぜか早く起きてしまった。

まずは、昨日投稿した絵が見られたかチェックした。

すると、メッセージが1件来ていた。


はじめまして!いつも投稿を見ていただきありがとうございます。

ゆっかさんの投稿を見ることが出来てとても嬉しです。


まさかのMIZUさんからメッセージが来た!

私はすぐに返信した。

その後、スケッチブックをを開き新しい絵を描き始めた。

絵を描いていると陽菜からメッセージが来た。


お休みの日にすみません。

良かったらランチいきませんか?


陽菜から連絡が来た。特に予定が無かった私は、陽菜の誘いを受けることにした。

 出かける準備をして陽菜と近くの公園で待ち合わせをした。

先に着いた私は、ブランコをこいで待っていた。

「先輩!」

「陽菜!」

「すいません、待たせてしまって」

「私も今来たばかりだから大丈夫。それで、どこに行くの?」

「ここから少し歩いたところにあるカフェです」

「あそこのカフェね私も気になっていたけれどなかなか行く時間後無くて」

「そうなんですね、私も初めていきます」

2人で歩いて向かった。

お店に着くと外には行列ができていた。

「すごく並んでいますね」

「すごく人気みたいね」

順番を待っている時に私はあることに気づいた。

陽菜の私服姿を見るのが初めてだという事。

何で気づかなっかのだろう。にしても陽菜の私服姿可愛すぎる!

私は列に並んでいるあいだ陽菜だけを見ていた。

「2名でお待ちの永冨様」

「先輩」

「え、あ、うん」

店内に入ると木の温かみのあるオシャレな空間だった。

2人は席についてメニューを開いた。

「先輩は何にしますか?」

「どうしょうかな」

「私はオムライスとパンケーキのセットにします!」

「決めるの早いね」

「私オムライスが好きなんです」

「私もオムライスと季節のパンケーキにしょうかな」

「良いですね!私にも少し分けてください」

「陽菜も季節のパンケーキにすればいいじゃない」

「私はシンプルなパンケーキが食べたいです」

「そう、分かった」

2人は料理が来るのを待った。

「先輩私服オシャレですね」

「え、ほんとに!」

陽菜に服を褒められてうれしかった。

「陽菜も私服可愛いよ」

「そうですか!ありがとうございます」

楽しく話をしていたら料理が運ばれて来た。

「こちらふわとろオムライスですね」

ふんわりとした卵の上にトマトソースがたっぷりとかかった一皿になっている。

「おいしそうですね」

「そうね、早く食べよう」

とろとろの卵が崩れ落ちないようにスプーンですくい上げ口に運んだ。

濃厚な卵に少し酸味の効いたトマトソースとのバランスが良くとても美味しい。

付け合わせにはサラダとスープがついてくるのも嬉しい。

陽菜もすごくし幸せそうに食べていた。

 オムライスを食べ終わり第2のお楽しみのパンケーキがやって来た。

陽菜はシンプルなリコッタパンケーキ。

私は季節のパンケーキ。パンケーキの上にいちごのクリームにベリーシャーベットがのっている。

「先輩のパンケーキアイスのっているのずるいです」

「陽菜のこっちにすればよかったのに」

「大丈夫です、少し分けてもらうので」

「えーしょうがないなぁ」

「ありがとうございます」

ふわふわのパンケーキはナイフがスッと入って口の中でしっとりとした食感になる。

そしてまた、シャーベットと一緒に食べるとよりいちごを楽しむことができる。

陽菜は一口だけと言っていたのに2口ほど食べられた。


「美味しかったですね」

「そうね、また来ようね」

「はい!」

陽菜と私は店前で別れた。


 家に帰った私は、ピクシルを眺めていた。

すると一件の通知が来た。MIZUさんの新規投稿の通知だった。

投稿内容は


今日は近くカフェでランチでした。


と短い文書とオムライスとパンケーキの写真が載っていた。

私の中で少し時間が止まった。

「もしかして、MIZUさんは陽菜」

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