後輩に恋した私

@fuuriotoha

第1話

高校2年生の春私はある人に恋をしてしまいました。

私は美術部に入部している中原ゆかり。今日から部活に後輩が入って来ます。

新入部員は10人。2・3年生より人数が多かった。

 入部最初の活動は、校内のデッサン。新入生と先輩がペアになって学校内をデッサンする。

私も去年先輩とデッサンしたのを覚えている。つぎは私後輩を連れてデッサンをする。

 そして、私のペアは永冨陽菜。私は、彼女を見て一目惚れをしてしまった。身長が低く長い髪を1つに結んでいるその姿だけでも可愛いのではなく尊い。

「あ、永冨陽菜です」

「私は中原ゆかり。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

「じゃあまずは、学校のどこをデッサンするか決めないとね」

「それならもう決めています。先輩のお気に入りの場所がいいです」

「え、そうなの」

まさか私のお気に入りの場所と言われて少し戸惑ってしまった。

「もしかして私が決めないといけませんでしたか」

「いや、決めないといけないわけじゃないから大丈夫」

 大丈夫とは言ったがお気に入り場所なんてすぐに思いつかなかった。

とりあえずここにいても何もできないので2人で校内を見て回る事にした。

「とりあえず今日は校内見て回ろ」

「はい、私も分からない場所が多いので楽しみです」

「じゃあまずはこの3階から行こっか」

この学校は四階建ての旧校舎と新校舎の2つに分かれている、今いる美術室は旧校舎の三階だ、旧校舎は主に音楽室や理科室などの特別教室がある。2人は美術室を出ていろんな教室を見て回った。3階は美術室と理科室があるだけでほとんどが空き教室になっている。

陽菜と並んで廊下を歩く。廊下を歩く陽菜の横顔は尊いとしか言いようがない。

四階には、教室が少なくて音楽室、パソコン室、多目的ホールがある。2階は裁縫室と技術室がある。

「何かいい匂いがしますね」

「確かにそうね」

気になって匂いがする所に行ってみると、調理部がクッキーを作っていた。

 そして、この階には1つだけあまり光の入らない教室がある。それは第2図書室だ。この図書室は古い本や学校に関する資料が置いている。曇りガラスで廊下からは中の様子が見られない。

「先輩、ここ入ってみてもいいですか」

「え、入るの」

「ダメですか」

「いや、だめじゃないけど鍵掛かってない」

陽菜は扉に手をかけたら少し扉が動いた。

陽菜はゆかりと目を合わせた。

「先輩、鍵空いてますよ。入りましょう」

「そうね……」

私はここに入るのは初めてでじゃないが恐怖心があった。でもここで怖がっていると頼りない先輩だと思われてしまう。

「先輩、もしかして、怖いんですか?」

「いや、そんなことないよ」

「ですよね」

 中に入って見ると、窓が開けられていないからなのか埃っぽい気がした。

「空気があまり良く無いですね、喚起しませんか」

「そうね窓開けよっか」

カーテンを開けると夕陽が差し込んで来る、窓も開けると一気に風が入って来た。後ろを振り返ると見たこともない景色が広がっていた。暗くて見えなかった本が輝いてみえた。

「すごいですね」

「うん、そうだね」

図書室は暖かい光と古本の匂いに包まれた。

そんな光景に陽菜は見とれていたが私は陽菜に見とれていた。

すると、陽菜と目が合った。

「先輩、どうしたんですか」

「え、いや、何にもないよ」

それから2人で教室内を見て回った。

「ここの図書室いいですね私はこの場所好きです」

「私もここは好きかも」

「本当ですか、先輩さっきまで怖がっていたのに」

「いや、それは……」

「先輩強がらなくていいですよ」

「うん、そうね」

陽菜の一言で私は、より彼女が好きになってしまった。

 外は夕陽が沈み薄っすらと月が見えていた。

「そろそろ部室に戻ろっか」

「そうですねだいぶ暗くなってきましたね」

窓を閉めて2人は美術室に戻った。

 帰る支度をして部室の鍵を閉めた。

「じゃあ私は職員室に鍵返してくるね。お疲れ様」

「はい、お疲れ様でした」

職員室に鍵を返して靴箱に行く。外靴は私のだけ残っていた。

「もうみんな帰ってるね」

さみしい気持ちもあったがいつもの事だ。靴を履き替え静かな校舎から校門へ歩いて行った。

校門には一人の生徒が立っていた。校門に近づくにつれ見かけたことのある後ろ姿だった。

校門に立っていたのは陽菜だった。

「陽菜、誰か待ってるの」

「あっ、いや、先輩を待ってました」

「えっ、私」

「はい、もしかして迷惑でしたか?」

「私も一人だから一緒帰ろ」

「はい!」

まさか、陽菜と一緒に帰れるなんて。

もしかして、これからは一緒に帰ることができる。それとも明日私は死んでしまうの。

「明日も帰れるかな」

「先輩何か言いました」

「いや、何でもないよ」

先輩は嬉しさを隠しているみたいだが、完全に漏れていた。

「先輩はいつもこの時間に帰るんですか」

「うん、ほぼ毎日この時間かな」

「そうなんですか。部活が休みの時はどうしているんですか」

「部活がない時は新校舎の図書館にいるよ」

「そうなんですね。先輩は読書がお好きなんですか」

「読書も好きだけど図書館でほとんど本は読まないよ」

「え、そうなんですか!そしたら何をするんですか」

「図書委員の手伝いとか司書の先生と話したりしているよ」

「なるほど、お手伝い……」

「陽菜は本読まないの」

「漫画は読みますけど小説とか文字ばかりあるのは苦手で」

「そうなんだ。私も漫画読むよ」

「え、先輩はどのジャンルの漫画を読むのですか」

「私はだいだい恋愛とか日時系をよく見るかな。小説はミステリーを読むから漫画では癒されたいからね」

「私も恋愛系は読みますだけど、一番好きなのは異世界系ですね」

「異世界系は一度読んだ事があるけど自分には合わなくて」

「そうなんですね。でも、もう一度読んでみませんか先輩が好きそうな異世界漫画があるので」

「うん、分かった読んで見る」

「本当ですか!そしたら明日持って来ますね」

「うん、ありがとう」

「先輩それじゃあまた明日」

「じゃあまたね」

私と陽菜は十字路で別れた。こんなに楽しく帰ったのは初めてかもしれない。

でも、また明日陽菜と会うことができる。そう考えると明日が待ち遠しくなった。

私の中で陽菜は後輩と言うより推しのような存在になっていた。

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