第三十三話 戦い終えて
「おお~い! 飲んでるか、ゼクト! 」
「飲んでラァ! 」
リリの村の酒場にて、オレの前で金色のエールが
危機が去って、これからの
その実、騎士達の死体処理などの
オレ達は村長のそう言った考えを察しながらも、
賊の侵入によって起こった戦いだが死者は狼獣人のご老人二名のみという奇跡的な数字を出した。
一般的に獣人族の平均寿命は八十から百歳。お二人は百二十歳を超えていたこともあり『いつかは』は覚悟していたが戦闘で落としてしまったとなると心が痛む。
息子夫婦に孫夫婦も「獣人族としての
本来ならば数十の賊の侵入を許した時点で自警団が責められるべきなのだが、そうはいかなかった。あの脅威を目の当たりにした村人はもとより、彼ら十六人で半数以上を門の前で引き
故に責めるに責められない。
それもあってかこうして全員のガス抜きのようなことをしているのだが……。
「ゼクトさんはぁ~もっとぉ~わたしにやさしくするべきですぅぅぅ~」
「ダリア。ちょっとあんた飲み過ぎじゃない?! 」
声がする方をみると、顔を赤くし、べろんべろんに酔っているダリアがそこにいた。
それに気づいたのだろう
掛けられたダリアはその子の近くに顔を
何を……してるんだ?
「むむむ……。ぶれてますね」
「ぐぎゃっ! 」
両頬に手をやると首を九十度曲げた。
……。あれ、生きてるか?!
「しかしゼクト。お前さんよく倒せたな、あの怪物じみたやつを」
エールを飲みながらギルムさんがこちらを向いていそう言った。
顔を赤らめながらもどこか真剣な感じで聞いている。
「速度で打ち勝つ方法があっただけですよ」
「……それでもすごい。しかし、正直なところお前さんの魔闘法でもあの速度についていけない、と踏んでいたのだが」
酔いながらも鋭い。
「まぁまぁいいじゃないですか。ギルム君。そんな
「む? そうか」
横からエリック助祭がギルムさんのジョッキにエールを注ぐ。
ちらりとこちらを見てきたので「ありがとうございます」と軽く呟く。
ギルムさんに怪しまれないように軽くお辞儀で返しつつ、
「しかしながらホムラ君も大活躍だったようで」
ちびちびとエールを飲みながらエリック助祭がそう言った。
ホムラは子供達を救い、そのあと治療院と教会周辺を
まだどのくらい数を倒したのか聞いていないが、この様子だとかなりの数を倒したのだろう。
「最近は生産系ばっかりさせていましたが、ホムラは武人ですからね」
「彼女がいてくれて助かりました。この
と、アルコールで顔を赤らめたまま祈りだすエリック助祭。
気持ちは分からなくもないが酒場で祈らないでほしい。
「して、そのホムラ嬢は今どこに? 」
「彼女はオレの家で休んでいますよ。どうも疲れたようで」
「彼女の力の秘密について飲み明かせれば、と思っていたのだが」
「それは聞かないが原則でしょう? ギルム君」
「むぅ。彼女の強さに興味があったのだが」
本当に残念そうにそう言うギルムさん。
どれだけ戦闘好きなのだろうか、と思いつつも多分だが今回賊に入られた事に責任を感じ更に訓練でも考えているのだろうと思う。
「毎日の団長の
「本当だ。厳しいがな」
「もっと優しく教えてくれればいいんだが」
「こっちには本業があるってのによ」
「だが実際、その
「分かってるが……次の日に持ち越す痛みは止めて欲しい」
「「「それなぁ……」」」
ギルムさんの後ろでぼやく団員達。
彼の額の角がキラリと光ったと思うと「悪いな。少し外す」と言い席を立ってしまった。
どうしようかと思っていると更に声がする。
「エリック助祭は厳しいのです! 」
「そうです。この前だって——」
遠くから、教会の修道士達が話しているのが聞こえてくる。
それを聞き正面のエリック助祭の手が止まる。
額に
遠くで
一人になったところで軽く一杯エールを飲み干し、机に「ダン! 」とジョッキを置いた。
「はーい! 皆さん今日はこの辺で! 」
「「「ええぇぇ! 」」」
店員が終わりを告げると、
腰に手をやり「困った人達だ」と言わんばかりの顔で
「今日は村長の
「もう少しくらいいいじゃねぇか」
「そうだ、そうだ! もう少し飲ませろ! 」
村人達がそう言うと店員が怒りを
「いつまでも飲んでんじゃねぇよ! 早く帰りな!!! 」
「「「は、はい……」」」
こうしてオレ達は酒場で解散となった。
★
「で、結局こうなる訳か」
「むにゅむにゅ……。ゼクトさんの匂いだぁ」
「はいはい」
今はダリアを背負い、彼女の家に向かっている。
酒場の
ダリアはお酒に弱い。
よっていつも酔っぱらってはオレが家に運ぶのだが、
はぁ、と軽く息を吐きながらも家に着く。
軽く背負い直して、腰から
中へ入り、ベットにダリアを置いてその場を離れようとするが——
「なにやってんだ。ダリア」
「……まだ自分にあの剣を使う資格はない、と思っていますか? 」
オレの服を引っ張られた。
彼女はまだ酔っぱらっているらしい。
目をウトウトさせながら
だが
少し
「……思ってるよ。だが……」
「だが? 」
「ま、色々と吹っ切れた」
「それはよかったぁ~」
と、言いながら後ろに倒れて
仕方ないと思いながらも上下する双丘を隠しながら布を掛ける。
「全くダリアには
そう言い残し、オレは家に帰るのであった。
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