第25話チェリーとヴァージンのフィズ

「殺し合いの真っ最中」

「俺に手伝えといったのは?」

「遅いから始めた。あと2、3人死ねば終わるから待ってろ」

「鬼畜かよ……」


 黙れロリコン。性欲を制御できないお前には言われたくないわ。

 なんだよ、お前にブーメランじゃんてか?

 俺は制御してますー。ちゃんと我慢してますー。アマネちゃんだって、殺さずに牢屋で飼ってたし。磔組だってちゃんと生かしてるし。


 イジメて愉しんでるだろって?

 煩い!

 俺が良ければいいんだよ!


「友梨佳、危ないっ!」

「キャッ」


 ん?

 んん?

 なんか、仲良しね。

 バトロワの真っ最中に人を守る余裕があるのかね。


「あの野球部員と美形の子、付き合ってたりする?」

「ああ、よく分かったな」

「チェリー、どう?」

「はっ。昨日、交尾をしているのを見ました」

「こ、交尾ですか。なるへそ。君には刺激が強かったろうね」

「ええ、反吐が出そうでした」

「よく頑張った。ありがとう、下がっていいよ」

「はっ、お褒めに預かり光栄でございます」


 交尾とな?

 交尾、交尾。ふーん。

 ゆーりーかーちゃーーーーん。絶対に捕まえたいっ!


 にしても、でゅふふCは雑魚いな。死にそうだ。

 アッチは元気だけど。よくも切られずに生き残ってる。俺なら速攻で切るけどな。切り刻んでチャーハンの具材にでもするけどな。


「あん中入って、全裸を助けてこい」

「アイツ以外は殺すぞ」

「ノーだ」

「は?ふざけ……」

「今はノーだ。楽しみは取っておくべきだろ」

「――――プランがあるのか」

「ロンロンロン!モチモチロン!」

「分かった」


「ユウキッ!」


 トタタッと走ってきたのはフレデリカ。


 ――――もう嫌だ。

 何で服がはだけてるの?お前ら、キスだけだよな?それ以上は禁止だぞ!いくら異世界だからってツルペタへの挿入は厳禁だからね?


 もう嫌だよ。マジで倫理観バグってるって。

 どーせ死んでもらうから良いんだけどさ。


 フレデリカが入れ込みすぎるのは良くない。だって、青頭が死んだ後の扱いが難しくなるじゃん?適度にイチャイチャさせて、恋に恋してたんだって気付かせてあげようと思ってたのに。

 処女だったんだろうね。

 初めての彼氏は、重いよなー。

 あーあ、魔族って殺しちゃあダメかね。クソメンドイわー、あのガキ。


「行ってくる」

「気を付けてね!」


 族長の視線はめっちゃ険しい。これはもう、お父さんの目だ。チャラチャラした恋愛は認めんっ!って腹巻きしたお父さんが言うような目だよ。

 他の魔族も複雑そうだ。

 子供は嬉しいけど、相手がね。ただの人間なら良かったろうに、転生者じゃあね。


「ふんっ」


 ――――はあ?


 はあああああ?何?今の、ふんっ、は何?ナメてんの?ねえ、ナメてんのかガキ!?クソが、マジで…………。


「族長、やっぱり殺すか」

「神の使命は宜しいので?」

「魔族を助けろって言ってたんだ、神様は」

「はい」

「俺と魔族の神は転生者が嫌い。何故なら魔族が転生者を嫌うから。魔族が祈って神は生まれた。神が転生者を嫌うのは必然だな」

「はい」

「つまり、転生者を嫌わない魔族は存在しないんだよ」

「しかしフレデリカは……」

「見た目も魔力も魔族だけど、神様が庇護する魔族ではない。神様が庇護するのは、転生者を嫌う魔族だ」

「それはつまり」

「アイツは、真の魔族ではない。ネオ魔族とでもしよう。お前たちとは似て非なるものだ」

「さすれば、使命を違えることもありませんな」

「青頭の目の前でこーろすっ!」


 世間話をしている間に、結界が解け始めた。

 青頭、マジで使えねえな。間に合ってねえよゴミが。でゅふふCは?生きてる、か。辛うじて息はある。金玉こっちに向けるんじゃねえよキモいな。


「標様、王国騎士団の斥候を仕留めました。そろそろ動き出すかと」

「絶対にここの情報を持って帰らせるな」

「はっ」


 騎士団のタイミングはバッチリだ。熟達してる感じがするな。

 でもうちの御庭番が見張ってるから、簡単に情報は持ち帰らせない。そうすると、出撃タイミングが計れずに、指を咥えて待ちぼうけを食らうだけ。


 それでいい。


 コイツらもだいぶ疲弊しているから、そろそろ帰してやろう。バトルロワイヤルもできたし、後はそっちでギスギス殺し合ってくれい。


「魔王!お前だけは赦さない!」

「帰っていいよ。ああそれと、アイツらどうする?」

「帰るだとっ!?ふざけるな!」

「幸太、落ち着け!」

「そうよ、一旦引きましょう」


 帰れ帰れー。ゆりかちゃんを置いて帰れー。


「あの、彼らを解放してくれますか?」

「チミ、名前は?」

「み、深雪みゆきです」

「返してほしい?」

「はい。クラスメイトなんです」


 偽善者面してんなあ。いいローブだけど、使用者がクソみたいな面してるわ。見え透いてるぞー!いいカッコして、好感度上げたいの見え見えだぞー。


「代わりに何をくれんの?」

「代わり、ですか……」

「お前が残ってくれる?それとも他の子を置いてく?」

「それは……」

「ああ、死体を残していくなら1人解放してやるよ」

「出来ません!大切な仲間を置いていけなんて」


 この演劇、誰が見たいの?ウザさが極まってて吐き気がするわ。


「じゃあ解放しない。さっさと帰れ」

「さっき解放するって……」

「ああそうだ!この女と子供、トゥカナから拐ったんだけど使い物にならないんだよ。コイツらは連れて帰っていいよー」


 衣服がボロボロになり、エッロイ横乳がはみ出した女性を転がした。それから、良い感じに怪我している子供たちも……えっ!?何で怪我してんの?そこまでしろって言った?いやいや、青あざだらけじゃん。やり過ぎだろうがっ!変なスイッチ入れんじゃねえよ、狂戦士めっ!


「この人たちは……」


「ヒィィ、お助けを!お助けを、勇者様!」

「うええーーん。お母さーん」


 アカデミー賞受賞です!演技派だ!残念なエロい女かと思っていたが、演技は一流だな。いい女ほど、演技派、か。男は辛いね。いつの時代も、翻弄されるねえ。


「ほれ、連れて帰れ。5秒以内に消えないと、魔族たちが動くから。お前ら見せてやれ」

「はっ」


 ミチミチと音がすると、真の姿が顕になった。漆黒の翼、真っ赤な瞳、紫紺の肌。刺々しい爪がカチカチと脅しを掛け、鋭利な尻尾がゆらりと的を絞る。

 この禍々しい魔力、うーん好み。

 ビビってやんの。嫌いかな?この魔力。こんなにどす黒くて汚らしい魔力、他にないぞ?


 ――――ちっ、ああムラムラするわ。


 なんでだろう。性欲が爆発って感じではない。けど、本能から求めてるって感じだ。

 コイツらの姿か?いや、控えめに言ってもキモい。マジで化け物だ。だったら魔力?

 うーん、魔力か。確かに心地良いんだよ。可能性はあるな。

 まっいっか。

 健全な男子なんだから、ムラムラぐらいするよ!


「5ーーー4ーーー3」

深雪みゆき、その人たちを連れて転移だ!」

「分かってるわよっ!命令しないで!」

「2ーーー」

「――ってお前、優紀!?何でここに!」

「気づくの遅くね?」

「1ーーー」

「じゃあな、必ず殺しに行くわ」

「優紀、まだあの事を恨んで……」

「0」

転移トランスファーランス


「転移できないやつが、何人か居残りですねー」


 置いてけぼりが今のトレンドか。

 くううう!楽しみだ!上手くいったか!?


「ターゲットは捕らえました」

「ナイス!ナイスチェリー!」

「はっ、光栄でございます」

「居残り組は牢屋にぶち込め。暴れたら手足を千切っとけ」

「はっ」


 ああ、ああああああああ!マジで堪らんわ。ゾクゾクするぅ!これからいっぱい楽しめると思うと、もうヨダレが出る止まらないよお!

 風俗行きたい!一発どころか、十発ぐらいヌかないと治まらないよおお。


「標様、万事上手くいきました。始めますか?」

「すぐに、はあはあ、すぐにヤッちゃおうか」

「はっ」


 この世界は、すんばらすぃぃぃーー!


 ※※※


 クソがっ。汚ねえイチモツを向けやがって。アイツは絶対に殺さないと気が済まねえよ。それに、他のが見てたはずだ。ナメられる要因になる。


「ディキ様」

「――――標様のお側を離れるな」

「今は安全でございます」

「ということは、転生者共を逃したのか?」

「はっ。計画通り、何名か捕らえました」

「混ぜたんだろうな?」

「抜かりなく」

「良くやった」


 帰っていった転生者の中には魔族がいる。殺し合いの果てに死んだ者や、影に引き摺り込み殺した者に成りすまして、潜んでいる。

 そして、標様が指定したターゲットも捕らえた。

 あの乱戦の最中、対象を捕らえて魔族が変装している。生き残った転生者8人のうち、4人は魔族だ。結束を掻き乱し、内紛が起きるよう仕向けるだろう。


 そして、拐ってきたという人間はバイア様だ。

 あの子供はバイア様の部下たち。よって、計7人の魔族が転生者たちと行動をともにする。恐らく、機が熟すのは2日後。そうなればユーラケー王国は我らの手に落ちる。


 ああ、ディキ様。お労しや。いつにも増してお顔の色が悪い。でも欲しいのです。頑張った僕に、情けを……。


「では、頂けますか……その、ご褒美を……」

「俺の容態を見て言ってるのか?」

「は、はい。僕が、その……動けばいいのでは?」

「――――標様にご迷惑が掛かる」

「そんなぁ」

「だからすぐに終わらせよう」

「はいっ!」


 標様のお側にいると、気が変になりそうだ。あの魔力に当てられて、体が疼く。魔族の本能だろうか。だからディキ様もこんなに……。


 ※※※


 ニンニンニンニン。トゥカナに帰った転生者は4人。でも転生者と者を合わせると、8人だ。


 上手くいったわー。影使い強えー。


 トゥカナで仲間割れをしてもらいます。そうすると、殺し合いが始まります。

 何故か?

 だって、さっきクラスメイト殺してたじゃん。理由なき殺人はない。けれども理由があれば殺す、それが殺人鬼。

 殺人鬼になるにはどうするか、人を殺すだけ。初体験は、そりゃあ怖い。緊張もするだろう。しかし一度ヴァージンを卒業すれば、あら不思議。


 理由さえあれば殺せる体になってます。


 必ず殺るね。殺らなきゃ、向こうにいる魔族が殺してくれるさ。転生者とされる8人のうち、4人は魔族が擬態しているだけ。更に、あの巨乳と子供たちはゴリゴリの魔族。

 ムハハハハ!くたばれ転生者!


 オイラ、愉しんじゃおーっと。


「ゆーりーかーちゃん。ツンツンつんつん」

「ひっ」


 何か雰囲気が出ない。ここが古民家だからか?牢屋って感じはないんだよな。一応、座敷牢にはなってるけど。もっとこう、脱出不能みたいな、無駄に堅牢な感じじゃないとな。

 ああ、アマネちゃんが入ってたあの牢屋が懐かしいよ。


 作ろう!

「チェリー」


 ん?

「チェリー?」


 あれ?

「チェリーフィズ」

「はっ、申し訳ありません。只今チェリーは別件で外しております」

「あ、そう。別件てなに」

「ディキ様へのご報告でございます」

「ふーん。了解。大した用じゃないんだけどさ」


 ということで牢屋を新築してもらう。その間に俺の前にいるメンバーを紹介しよう。


 まずはゆりかちゃん。普通に可愛い子だ。モテるだろうね。

 次にでゅふふCだ。治療してやったので生きている。コイツはクソ雑魚いので、適当に殺して魔族の苗床になってもらう予定だ。

 次に、でゅふふを置いて逃げていったでゅふふ。メンバー紹介が終わり次第、殺す。

 それから深雪みゆきちゃん。君だよ君!いじめられっ子は君だったのか。転移できなくて残念でしたねー。

 後は、モブだ。コイツらは魔族の玩具にする。

 それから磔にされてるでゅふふAとBがいるな。魔族が今肉刺しを喰ってると思う。


 魔力が少なくなったから、俺も回復させたいな。寝る以外にないのかねー。


「お前さあ、ミッションクリアできなかったな」

「申し訳……」

「ソイツ殺せ」

「えっ」

「543210」

「そ、そんないきなり……」


 ごちゃごちゃ言い訳ばっかり。マジで使えねえな。

 いや、使えるか。うん、苗床は延期だな。

 でもでゅふふCの横にいる君!お前は要りまへん。


首チョンパイモレーション


 ゆで卵をタコ糸で切るみたいに、首がもげた。頑丈なタコ糸だこと。魔法は便利だねえ。


「お、おぇぇぇ゛」


 女の子が吐くなよ。飲み込めい!

 ピコン!

『ステータスの引き継ぎを開始します。暫く……』

『中……いや、続行で』

『暫くお待ち下さい』


 ステータスに魔力も含まれてるよな。回復すんじゃねえの?


『現在のステータスに加算します。宜しいですか?』

『加算かいっ!引き継ぎっていうから入れ替わるのかと思ったわ!』

『…………ヂヂヂ』

『ああ、オッケー。YES!』

『ステータスの引き継ぎが完了しました』


 うん、魔力が戻った。何かキモいな。魔力が童貞臭い。臭え、臭えよ。自分の魔力じゃないのがよーく分かる。いずれ馴染むんだろが、キモいな。魔族の魔力を全身から浴びて、洗い流したいぜ。


「標様、完成しました」

「おう!コイツら移動しといて」

「はっ。この死体は……」

「それはあげる」

「有り難く」




 さあああああて!着きました、新しい牢屋!外観は石!内装も石!前の物とほとんど同じ!変わったのは囚人部屋の数ぐらい!


「C!童貞捨てるか?」

「えっ」

「ちょうど女もいるしな」

「……嘘でしょ」


 マジですよ、ゆりかちゃん。

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