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 勝手に敷地内に入るのはマズイと思い、僕は門の前から屋敷へ向かって声を張り上げた。


 中にいる人に聞こえないと困るので、大きく息を吸い込み、お腹に力を入れながら可能な限りの大音量で解き放つ。


「すみませーん! どなたかいらっしゃいませんかーっ?」


 自分の耳が痛くなるほどの声が空の彼方までこだまする。でもそれはすぐに発散し、その場には沈黙が訪れる。


 その後も同じように何度か叫んでみたものの、全く返事も反応もなかった。結局、喉を痛めた上に息を切らせるだけで、僕の行動は徒労に終わるのだった。


「アレスよ、屋敷の前まで行ってみよう。もし勝手に敷地内に入ったことを追求されても、あらかじめ門の前から声をかけたという事実があるのだ。釈明も出来よう」


「う、うん。そうだね……」


 僕は小さく頷き、外門に手をかけた。



 →105へ

https://kakuyomu.jp/works/16817330652935815684/episodes/16817330652939325227

 

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