108

108


 肝心な時に動けなくなってしまっては困るから、僕は何もせず休んで体力を回復させることにした。すでに村に到着しているとはいえ、いつどこで何が起きるか分からないから慎重になっておいて損はない。それに休める時は休んでおかないとね。


 そこで僕はどこか休めそうな場所はないかと周囲を見回してみた。すると村の出入口から外側へ少し離れた位置に、石製の正六角柱が地面に突き刺さっているのを発見する。


 高さは腰を掛けるのにちょうど良くて、太さも両腕で抱えられるくらい。まさに座ってくださいとでも言わんばかりの大きさだ。


「ミューリエ、僕はあそこにある石に座って待つことにするよ」


「そうか、分かった。一応、周囲に意識を向け続けるのを忘れぬようにな。何か異変を感じたらすぐに戻ってくるのだぞ。まぁ、私からも見える位置だから過度な心配は不要だとは思うが」


「うん、注意しながら休むよ」


 僕はミューリエに返事をすると、小走りで石柱のところへ移動した。そしてそこへ座ろうとした時、ふと石柱の違和感に気付く。


 遠くからでは分からなかったけど、こうして間近でじっくりと見てみると石柱の表面には模様というか、文字のようなものがいくつか彫られている。これは明らかに自然に出来たものじゃない。


 もしかしたらこれは道祖神様を祀ったもの、あるいはそれに類するものなのではないだろうか? 道が交わる地点や集落などの境界には、結界の一部としてそうしたものが置かれていることがある。


 でもこの石柱は見るからに新しい。汚れがほとんどないし、風雨にさらされているにしては表面に傷もない。つい最近に設置されたというような感じがする。つまりきっとこれは単なるデザインに違いない。


 ゆえに僕は気にせず石柱に座り、休憩しながら時間を過ごしたのだった。



 →75へ

https://kakuyomu.jp/works/16817330652935815684/episodes/16817330652938717384

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る