13

13


 ミューリエとタックは何も言わないけど、もしかしたらふたりだってお腹が空いているかもしれない。そうでなくてもそろそろ休憩をした方が良いような気がする。


 もちろん、ふたりは大丈夫だろうけど、僕自身はちょっと不安だ。知らず知らずのうちに疲労が溜まっているかもしれないし、それで倒れてしまって迷惑をかけるのも悪い。だから僕はふたりに休憩と食事をするよう提案してみることにする。


「ねぇ、ふたりとも。そろそろ休憩をしない? 昼食だってまだだしさ」


 そう声をかけると、ミューリエとタックはほぼ同時に立ち止まってゆっくりと振り返った。


 そういうところは息がピッタリなのに、なんであんなに仲が悪いんだろう。あるいは性格的な波長が似通っているからこそ、合わないってことなのかな?


 そんなことを思いつつ反応を待っていると、ミューリエがわずかに視線を上に向け、思い返すように『ふむ……』と小さく声を漏らす。


「――そういえばそうだな。ここまで休憩せずに歩いてきていたな。よし、ひと息入れよう」


「あそこの木陰で休もうよ。座りやすそうだし」


 僕は街道の脇にある、少し開けた場所を指差した。そこにはおあつらえ向きにも平べったい岩がいくつか転がっているし、もしかしたら街道を往く多くの人々が休憩場所として使っている場所なのかもしれない。


 すると直後、タックは荷物を地面に降ろし、その中から空っぽの水袋を取り出す。


「じゃ、オイラは水を汲んでくる。あっちから水の音がするから、きっと近くに沢があると思うんだ」


「えっ? そうなの? 僕には何も聞こえないけど」


「エルフ族は人間と比べて聴力が優れてるんだ。ってわけで、ササッと行ってくる☆」


 タックはケタケタと笑うと、軽い身のこなしで森の中へ駆けていった。


 まるで風のような素早さと静けさ。モンスターなどとの戦闘ではきっと心強い能力になることだろう。もちろん、争いなんてないのが一番良いんだけどね。


「では、私はお茶や食事の準備をすることとしよう。アレスは枝を拾ってきて、火をおこしてくれ」


「うんっ!」


 その後、僕は周囲に落ちている小枝や燃えやすそうな枯れ葉を集めていった。この辺に生えている木は水分が少ない種類みたいだから、焚き火をするには適していて助かる。


 木にも種類によって色々な特性があって、燃やすのに向いているものとそうでないものがあるからね。そういう知識を故郷の村のみんなから教えてもらったなぁ。



 →45へ

https://kakuyomu.jp/works/16817330652935815684/episodes/16817330652938031105

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る