第13話 戦闘

 「それで君はどこから来たの?」


 俺はようやく泣き止んだ少女に質問した。

 

 「ミミィって呼んでも大丈夫だよ」


 「わかった。じゃあ俺のことはリウスって呼んでくれれば大丈夫だ」


 お互いの呼び方が決まったところで本題に戻ることにする。


 「ミミィはね、あっちから来た」


 ミミィは後ろを振り返ると、華奢な腕を持ち上げいてミミィが来たであろう方向を指さした。


 でも結局木しか無いんだよな。これじゃあ目印がないから探そうにも探せない。


 「何かミミィの家の近くに珍しい何かは」


 ミミィの家の近くに特徴的なものがないか聞こうとしたその時、


 「グララララァァァァァァァァッ!!!」


 木の上から俺たちに咆哮を浴びせながら巨大な魔獣が飛び降りてきた。


 体中が黒く染まり、ところどころ赤い線が入っている。この特徴の魔獣は、


 「グロキュラス……」


 ミミィは小さい体を震わせながら、小さな声でつぶやいた。

 

 この魔獣は巨大な体では考えられないような動きをし、直角な壁でも歩き回ることができる。


 この魔獣に出会った場合の選択肢は3つある。1つ目は討伐する。2つ目は空へ逃げる。3つ目は殺される。この3つだ。到底人間の足では走って逃げることなど不可能に近い。


 どうする。まずは絶対に3つ目の選択は避けなければならない。だからといって1つ目の選択も成功する確率は0に近い。魔獣の力が上手く使えるならまだしも、今の俺にはまだ使うことができない。


 残るのは2つ目。でも空か……。


 「そんなの魔法使いがいないとできるわけ……」


 いや……できる。多分だができる! さっき雷光腕の次に出した死神鳥の翼なら!


 でもどうやって出すんだ?まだ色々試せてないからどうすればいいのかわからない。でもやるしかないな。


 俺は小さな体を震わせるミミィに近づき、片腕で抱きしめる。


 「え……?」


 困惑するミミィに、できるだけ落ち着かせるように普段通りの声で説明する。


 「もしかしたらだけど、今から俺がやることが成功すればグロキュラスから逃げれるかもしれない。だから少しの間だけ俺に捕まっていてくれるかな?」


 まだ少し困惑気味なミミィだが、俺の顔を一度見て、そして頷いた。


 「わかった……」


 「グララララァァァァァァァァッ!!!」


 巨大な魔獣は咆哮するとしまっていた鋭く、長い爪を全ての指から出した。


 死神鳥の翼、死神鳥の翼、死神鳥の翼……俺は必死に同じことを心の中で呟き、頭の中でとにかく思い浮かべた。


 早く、早く、早く……


 すると、俺の背中からバサッと大きな音がした。


 「リウス……それ……」


 「ああ、成功だ」


 グロキュラスは両後脚力を入れると、俺たちに向かって一瞬で飛びついてきた。


 太い腕が俺とミミィに振り下される直後、俺の背中の翼は大きくはばたき、空へ体が持ち上がった。


 


 


 

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