第13話 亡国の皇帝になろう

「アン…ドレ?」


私がそう発言した時、残った瀕死の赤いやつが叫ぶ。


『アンドレ?違う!その外見、その武器…そしてその技…貴様、はガーディアンナンバー2「灰龍」!?』


え、えええええ!


こいつの発言からすると、アンドレはこいつの同類!?


「…久しいな、赤龍、そして相変わらずだな貴様は…」


アンドレが呆れたように言う。


『おのれ灰龍!なぜ皇帝の御膳での神聖な処刑の邪魔をする!』


「…皇帝?」


アンドレが疑問符を浮かべている…そういえばさっき、赤いこいつ…赤龍は私を皇帝にするとか言っていたような…あれ?


なんか私の右手の甲に変な紋章のようなものが描かれている。


『灰龍!あのお方こそ、第251代インガ皇帝であらせれる』


「っ!?お嬢様、右手の甲に何かありますか!」


「なんか…変な紋章が…」


「ちっ、赤龍…面倒なことを!」


あ、やっぱこの紋章なんかヤバいやつっぽい。


『反転の秘儀!』


と赤龍が突然叫ぶ。


すると、聖剣が消えた後に残った奴の傷が見る見るうちに治っていく。


『ちょうどいい!帝国の意向にあまり従わないお前は昔から目障りだったんだ!』


そういってアンドレに飛び掛かる赤龍。


こいつアンドレが現れてから、口調が崩れてる、これが本性か?


それより


「アン…ドレ!」


「問題ありませんお嬢様」


そういってアンドレは高速で筒が付いた剣先を赤龍に向ける。


「ガンフューリー」


そしてそう呟くと


筒から、赤黒い業火が吹き荒れる。


あれは…砲が剣についてる…ガンソードみたいな?


『グあああああっ!』


そして呆気なく焼かれる赤龍。


これは…赤龍が雑魚に見えるくらい、アンドレが規格外なのかっ!?


「所詮、制圧機能しかついてないお前に、執行機能がついた俺に勝てるはずがなかろう」


アンドレはどうやらインペリアルキネティックガーディアン?のなかでも戦闘特化…なのかな?


焼かれてドロドロに溶けている、赤龍、これは…。


「いえ、まだこいつは生きております」


ええ…まじで、生命力高すぎないか…いやこいつ機械っぽいから機械力?


「こいつはこの特性ゆえ今まで始末できずにいました…こいつは皇帝の任命権を保有してたからさっさと始末したかったのですがね」


はぁ…さすがの鈍い私でもそろそろ、話の全体像が少し見えてきた…つまりインペリアルキネティックガーディアンとはインガ帝国の近衛騎士団のようなものなのだろう。そして私、いやコーザリティー家は二千年前に存在したインガ帝国の皇族の末裔であるということ…


「任命権があるこいつに私が皇帝に任命された…と」


最高権力者の任命権っていうのもよくわからないけど…


いやそもそもさっきから赤龍がアキ達を指して言った「偽人」っていう言葉が一番意味不明だ。


「ええ、もはや後の祭りですね…」


インガ帝国の皇帝という地位そんなにヤバいのだろうか?いくら元大陸国家と言っても、もう滅びているのでしょ?


「私が皇帝だと何か問題が?」


「…いずれ知ることになるでしょうから…教えてしまいましょう、皇帝には帝国無人兵器軍の統帥権があります」


「…無人兵器、まさか…?」


「お嬢様がどこで無人兵器という概念を知ったのか謎ですが…ええ、偽人戦争時に温存された帝国無人兵器陸海空あわせて数万、その7割が即時稼働可能状態にあります」


偽人戦争…また知らない単語が出てきた…しかし数万の無人兵器って…


「この…世界を…」


「ええ、今の世界なら滅ぼせる戦力だと」


ええ…まじでぇ…。


おかしいな…確か私は誰も傷つかない優しいスローライフを望んで全力の一撃を放ったのに…。


なんか、世界を滅ぼせる戦力を手にしてしまったのですが!?


「すごく、いらない」


「…皇帝は終身制ですので、もうお諦めを」


「はぁ…」


もうこれスローライフとか無理じゃん?


「お嬢様、それとあなたが皇帝になったことはあなたの協力者と私以外に離さないでください」


協力者って…あれ魔王の存在がばれている!?


―まあこいつはこの世界でもかなり上位に入る実力者だからな、俺の存在に気づくことなど造作もないだろう、なんせ俺は戦闘以外は割とからっきしだからな―


また脳内に直接…なんか魔王ってなんでもできそうなイメージがあったけどそうでもないのね。


あれ?ていうか


「…お父様とお兄様には報告しないの?」


「ええ…彼ら…特にご当主様に知られると非常にまずい事態に」


「ええ…ど、どんな?」


「…私はコーザリティー家の家族の和に亀裂を入れたくないので言えませんが、とにかく非常にまずい事態です」


非常にまずいかぁ…アンドレがそう言うんだから相当まずい事態なのだろう。


…なんだろう、お父様とお兄様がなんか得体のしれないもののように思えてきた。


まあ、一番得体のしれない存在になってるのは私なんですが…はぁ。


「どうですか?お嬢様?」


「うん、理解した…あなたたち以外には誰にも話さない…」


もうすでに厄介ごとだらけなのだ…これ以上はもう勘弁!

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