短編集 倉庫
なっとう
やらかしバカッターのその後
俺の仕事は回転寿司屋のバックで太巻きなどを作ったりなど全ての業務を一通りしている。
仕事のスキルは店長レベルで年齢は50歳を過ぎたが給与はバイト以下の最低賃金。
独身で店の社宅に住んでいるが家賃を取られている。
普通は無料だが俺のは弁済金に充てられている。
食事は3食全て店なので金はかからないが毎日酢飯しか食べていない。
逆に健康になってしまった。
死ぬまでここで働くことになっている。
辞めたり逃げたりはできない。
逃げたら刑務所に行くことになる。
ほんとに死ぬまでこの生活が続く。
そのそもは自分のやらかしのせいなのだが。
高校生当時、親父と一緒に回転寿司で食事をしていた。
高校三年生で自宅学習期間が始まり、専門学校に進学する俺にとっては一足早い春休みだった。
卒業の前祝として寿司でも食べるかと親父が誘ってくれた。
そこで俺は調子に乗ってやらかした。
詳しいことは恥ずかしくて言えない。
未だに後悔してもしきれないことだ。
だからこの生活が30年以上続いている。
やらかしは当時バズって大問題になった。
回転寿司の企業から損害賠償金を請求された。
未成年なので親が保証人兼債権者としてされたので実質家族で負担することになった。
総額20億円。
普通の家庭では100年かかっても払える額ではない。
自殺や無理心中まで考えたが、回転寿司企業から和解案が提示された。
店で働きながら返済するという手段。
自分が死んだ時点で完了という話なので、途中で自殺してしまおうとも考えたが俺は生きることを選んだ。
世間的には生き恥をさらすことで抑止効果を見込んだようで、ここ数年はテレビのやらかし犯として紹介されることが多くなった。
今更有名になったところで生活が良くなるわけでもない。むしろ後悔で押しつぶされそうになる。
手元に残る金は数千円程度。
車はもちろん服も買えず、好きなお菓子を吟味して買うことしか楽しみが無い。
すべてが俺自身が原因だから仕方ない。
スマホやパソコンは持っていない、テレビはかろうじてある。
最近は図書館の本を読むことで時間を潰している。
この人生で唯一マシになったのは読書のおかげで知識が増えたことだ。
もし昔の俺が今のように本を読んでいたら人生は変わっていただろうと思う。
今更だが俺はできるだけ長生きして、どこの誰よりも知識を蓄えて死んでやる。
そして目標ができた。
小説を書いて本を出すことだ。
それが俺が生きた証になると信じて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます