第7話 NTRとBSSっておもしろいけど、滅びるべきだと思う。

数時間後、帰宅路————————


 入学式を終え、帰宅していた両助は電車内で転寝しかけていた。


 一時間半かかる帰宅だ。

 いくら携帯で暇をつぶそうとも、電車が揺りかごのように眠気を誘う。


 あの後は教員の誘導に従い、無事に入学式を終わらせた。

 学籍番号順に並び、指定の席に座った両助は壇上での話を真面目にも聞いていた。

 入学式、校長の長ったらしい話があることもなく、午前中には全ての行事が終わった。


 そうなると必然、時間は盛大に余る。

 つまり、皆はお出かけタイムだ。


 各々仲良くなったグループでは、親睦を深めるため街に出かけていた者達がいたが、両助の唯一の話し相手である啓介は部活へ、内海は今日仲良くなった子と男子グループ含めどこかへ行ってしまった。

 内海、俺達の関係はその程度だったのか。誘ってくれてもよかったじゃないか。俺は悲しいよ、ひん…。


「これがNTR……いや、付き合ってないから違うか。ていうかそういう関係でもないしな、俺達」


 今の時間帯が空いていてよかった。でなければ今の発言が聞かれていた。

 耳に入るのはガタンゴトンと規則的な音だけ、それはまるでメトロノームのように一定の音程で揺れる。

 その整った心地よい音と電車内ちょうどいい空調設定に寄り、瞼が重くなる。

 もう少しで眠ってしまいそうだった時、携帯の着信が鳴る。

 アイコンを見ると内海からの連絡だった。


『ボウリング♪』


 あれまあ、楽しそうなことで。

 あの一団はボウリングなぞという玉遊びに繰り出したらしい。

 まあでもいいか。皆、楽しそうにしているなら。


 そうしてまたも着信がなる。またも内海からの連絡だ。今度は写真付きで。

 それを見た時、両助は声を上げる。


「あら~、内海さん。意外とやりますわねぇ~」


 それはボウリングの風景なのだろう。街のどこかのボウリング場だろうか。

 なんともまあ、仲睦まじく楽しそうなことで。

 その写真の中で内海は一人の男子生徒に抱き寄せられ、こちらにピースしていた。

 そうして下にはこの一文を添えてあった。


『彼氏できた♡』


 なんともまあ、幸せそうで。とてもよろしいではないか。

 そうして両助は以下の一文を打ち込んだ。


『く・ち・は・て・ろ♡』


 両助は打ち込み終わったのちにその画面を閉じ、空嗤いを上げる。

 窓に映るのは流れる自然の景色、もうどれくらいの時間見た?

 田舎も田舎、コンビニなど車が無ければいけない距離だ。マーケットに行った方がよほど近い。

 山の中のド田舎、そこにある住宅団地の一軒、それが影峰両助の自宅がある場所だ。


「あーあ、病みそ……」


 他人の幸せは好きだ。こちらも良い気分になる。

 相手もかなりの爽やかイケメンだったではないか。

 もうあんな光景は見たくないのだ。皆が楽しければいい。

 繰り返さぬためにも、この平穏を……。


「マントルの下の……力持ち」


 ふいにその単語を呟く。

 縁の下ではまだ足りないと、肥大化させた己が意思。

 少しでも多くを支えるために、大きくしたスケール。


 内海もそういう意図があったのかはわからない。

 でも結果としてあれはこれからへの警告となった。

 お前はこういうことをしようといているのだぞ、と。


 そうして少し疲れた両助は、そのまま眠りに堕ちた。

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