血の飴
「刑事さん、怒った」
わーい、と嬉しそうに手を上げ、ササッとカニバルの後ろに隠れる。
「俺は仕事で来てる。変に刺激するな!!」
剣崎の真面目な言葉にブーッと口をつぼませ。
「刺激って言うか。感化されて勝手に染まってたの刑事さんじゃん」
その言葉に剣崎は凶器に満ちた表情。コイツ、人殺すんじゃないかと言わんばかりの邪悪な顔に「貴方、本当に刑事? 私達と同じに香りしかしないけど」とブラッドの静かなる言葉。続けて、「確かに」と同感するカニバル。
「なんだ、そんなに血の匂いがするか?」
刑事らしからぬ言葉にブラッドとカニバルは静かに頷く。
「消してるつもりでしょうけど」
ブラッドの言葉に割り込むカニバル。
「匂いますよ。貴方も女性が好みですか? なんなら
と、カニバルの指差す手をブラッドは叩く。
「痛いです、辞めてくれませんか。さっきもやりましたよね」
「カニバリズムのクセに弱いからよ。あーあーもっとかっこよくて強い人がよかったわ」
突然始まる喧嘩に剣崎は頭を悩ませる。
話が進むも戻るのだ。
「夫婦喧嘩は止してくれ」
「夫婦じゃないわ(です)」
二人に睨まれ、口を閉ざすと今度は狂。珍しく話を強引に進める。
「あのさ、お姉さん。血で絵を描きたいから要らないのあったら分けて欲しいんだけど」
急な展開にブラッドは思い出したように返す。「そうだったわね。待ってなさい」とバックヤードに行くと木製の箱に敷き詰められた瓶。
瓶の重さにしてはやや重い。
振ってみるもペチャりとも音も無し。
結晶化が進み、売り物にならないモノか。
手に取り証明に当てるとドス黒くもほんのり赤い。モノによれば黒くも感じるが。“血”ならではの深みや色合いの強弱。それが好きだとか。
「オレもお姉さんと似てて人を殺すと絶対血を瓶とかに詰めてさ。臓器ギューッと絞って吐瀉物混じっても良いから使ってるんだよね。その人ならではの色があるから魅力的でさぁ」
目を輝かせ、口が少しずつ開く。
「いくら? 全部欲しいんだけど」
「お代は要らないわ。売れないし。
飴と聞き、興味を持った狂は――。
「(パクッと血の塊を口へ)うえっ!? スッゴい鉄!!」
と、仰け反る。
「ウフフッ坊やには早いわね。それは大人の味だから、もう少し血を好きにならないとダメよ。刑事さんなら分かるんじゃないかしら」
ブラッドの煽りに剣崎は血の欠片を一つ取り口へ運ぶ。グフッと初めは噎せるも後は何もなく、ゴクッと飲み込む音。
おや、とカニバルは驚き。ブラッドは違う飴玉を手渡す。
「これが貴方の部下の飴」
透明な包み紙に包まれた”深紅“な飴玉。先程食べた黒いモノとは違い新鮮さが違うと一目で分かる。
“部下の血”と聞いて引くと思いきや、興味ありげに口の中へ放り込むと暫く硬直。
「お気に召さなかったかしら?」
その言葉に首を振り、スラックスに手を突っ込んでは何かを隠すように俯く。そして一言。
「また来る」
「あら、素直な子ね。嫌いじゃないわ。と、言うことは今回の件は見逃してくれるのかしら」
アハハッと笑うその言葉には返事を返さず、剣崎は一人外に出ると口に手を当て小声で言う。
「部下の血がこんなにウマイとは……」
誰にも聞こえてない、そう彼は思ってるだろうが――狂はなんとなくだが察する。
剣崎刑事、笑ってたな。と――。
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