料理×死体=?
「刑事さん、大丈夫?」
狂はコンコンッと男子トイレの個室のドアを叩く。ジャーッと流れる音が聞こえ、ドアが開くとスッキリした顔の剣崎。
「見たことないヤツで耐性がなくてな」
手を洗い、しっかりうがいまで。
「それ言っちゃぁ負けよ」
「珍しく強気だな、お前」
吐き出すや置かれたペーパーで手と口を拭う。
「エヘヘッ、実はオレも初め見たとき
楽しそうに爆弾発言する狂。剣崎は溜め息を漏らし、足で軽く足を蹴る。
「嘘つけ」
「ホントだって。料理×死体=何って話よ」
美学の問題か。
さては、各自の思考。
「それな」
中々戻ろうとしない二人。剣崎はともなく狂も少し顔色が悪いか。タンマ、と個室に入るや「オェッ」と聞き苦しい声。
「お前がなってどうする」
「だって、知り合いと考えたら――」
「辞めろ。感化させるな」
しばらく二人がトイレに籠っている頃。
カニバルは一人、お玉で目玉や指を掬い器に注いでは何一つ気にせず、甘くやや鉄臭い汁を飲む。
みかんの爽やかな香りと甘味。
リンゴのシャキシャキ感。
キウイの甘酸っぱさとフレッシュな味。
ゼリーもフルーツ同様様々な味でプカンッと浮かぶさくらんぼがホンノリと可愛さを出す。
「美味です。人間臭さもありフルーツ達の甘さが上手くそれを打ち消してる。前にグリルで焼いたときはハーブを使っても臭すぎてダメでしたがデザートなら相性良さそうですね」
スプーンで目玉を掬い、上品に口の中に運ぶとガリッゴリッと見た目に反して固いか良い音が鳴る。
「目玉も美味しい。この汁に付けたのが正解でしたか」
次は指。
食べやすいよう骨まで達するように蒸す角切り込み。ガブリと噛みつけば血が少々飛び出すも意図も簡単に千切れてしまい、クチャリクチャリとガムのように噛む。
「うーん。これは……微妙ですね」
物足りなかったか根元までは食べず手離す。
「まさか、この腸も……激マズでは?」
一人デザートを楽しむカニバルの背に二つの足音。二人の気配に手を止め、振り向くと苦笑いの二人に対して笑顔で出迎える。
「良かった。ちょうど味見してたんですよ。遠慮しないで食べてくださいね」
アハハッと料理そっちのけで楽しむカニバルに狂と剣崎は顔を合わせ言う。
「結構です!!」
「あらあら、そう言わずに」
断っても退かないカニバルに狂はこう返す。
「カニバル、もしそれが――仲間だとしたら喰える?」
腸を口の中に入れ、クチャリクチャリと嫌らしい音を発てながら食べるも口の動きが止まる。
「はい?」
「だから、それが仮にカニバルの職場の人だったらってこと」
「見た目が美味しそうでボク好みなら」
とゴクリと飲み込む。
「その逆だったら? ほら、謝ってミンチ機に手が入っちゃってミンチにされた知り合いの肉をハンバーグにして食べたらどうなの」
狂の言葉を素直に真面目に想像したのか。顔を背け片耳を塞ぐ剣崎。
カニバルはやはり気にしてない様子で二人を見ては「なるほど、ボクの料理が食べられないと」とやっと理解したか目に影が掛かる。
「違う違う、そうじゃない。普通に聞いてるだけだって。ほら、トイレって連れが席立ったとするじゃん。そしたら、帰ってこなくてステーキになってたら――」
狂の言葉が煽りに聞こえるか。ダークなオーラを放つカニバル。反対に剣崎は今にも吐きそうだと言わんばかりに口を押さえ我慢。
「バカタレ」
「ごめん。今思ったんだけど……取引以外話すの初めかも」
笑い誤魔化す狂に剣崎は一言。
「この地雷め!!」
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