Crazy Red

龍玄

喜劇・戦浪外交

 これは、現代日本に酷似したパラレルワールドでのお話です。


 中酷の偵察気球が米国領空圏内で撃墜された。戦闘機が飛べない、いや跳びにくい高度での出来事だった。

 旅客機は1万m、戦闘機が1万5千m、高度2万mは中酷に取って安全であり、最も地上に近いと考えられた高度だった。


 中酷外務省は気球について「気象研究などに使われる民間のもの、偏西風の影響を受けコースから外れた」と軍事目的を否定しました。そのうえで「不可抗力でアメリカに誤って入ってしまったことを遺憾に思う。適切に処理するためアメリカと引き続き意思疎通する」と発表しました。前・負鬼外相は実質上の左遷をされ、後任に辛氏が外相に就任した。

 前・負鬼外相は新型ウイルスに感染。その際、夫を思う妻が「強酸党員であり高官である夫にさへ薬が手に入らない」とSNSで呟いた。国民からは高官にも薬が行き届かないのかの不安を与え、一般国民からは党員なら手に入るのが当たり前なのかと批判を受け、政府批判に繋がるのを恐れての左遷だった。上から目線で恫喝的な戦浪外交の顔だった前・負鬼外相は批判の的に立たされやすい今の中酷には不都合な事が多く、米国との関係を緩和したい秀欣平は駐米大使の辛氏を起用した。辛氏は物腰が柔らかく滅多に自らの非を認めない中酷であったが、自国の物である事を認め、さらには「遺憾に思う」と謝罪の意も示した。弱みを見せれば負けを意味する国民性からは考えられない対応を見せた。

 中酷は、戦浪外交の恫喝姿勢。恫喝は思考力の低い人間が思考の限界を超えた際誤魔化すための手段。今回、共和党だけではなく、中酷擁護のマスゴミまでが中酷の偵察気球だと確信している報道を受け、逃げ切れないと感じたのだろう。ならば認めるがあくまで民間の失態で国には関係ないとの姿勢を貫けば切り抜けられると考えていた。日本相手なら十分に通用する。それに慣らされての失態か。中酷の民間企業は強酸党の管理下にある事を世界のどの国も知っている。民間は使い捨ての道具であり強酸党員ではないという考えから自然と生まれる発想だと自らが気づいていない証だった。譲歩し、誤ったから許して貰えると安易に考えていた。しかし、米国は気球を撃破し、部品の回収に走った。これに中酷は驚きを隠せないでいた。回収されれば情報収集の証拠を握られかねない。自然に落下させ、海の藻屑か関係国に着陸させデータを抜き取る策略が水の泡と化す。撃墜を受け、明らかに過剰反応で国際的慣例に反すると強烈な不満と抗議を米国に行った。常に自らは国際的慣例を守らない反社国家の身勝手な言い分が通用すると考える時点で愚かなことであり、必死になれば成る程そこに隠さなければならないことがあると自白しているのと同じことに気づけないでいる。

 聞く耳を持たない米国に中酷は抑えきれないジレンマを覚えた。その捌け口に選んだのが日本だった。

 中酷は今回の気球が米国に到着したのは日本のせいだと世界に訴えた。


 「偵察気球が米国に侵入したのは、日本上空を通過したの見過ごしたからだ」と激高してみせた。今までの日本なら怯えて対応できなかっただろうが今回は違った。外務省に中酷担当の部署ができ中酷生活10年を超えるコメディアンで在り役者だった者が異例に採用されていたからだ。彼はmetubuで中酷に関して語る有名なインフルエンサー・冥光だった。

 冥光は、辛氏が日本上空で処理しなかったから大きな問題になっている、に対して、すみません。これからは日本上空に所有者不明または応答不可の物に関しては直ぐに撃墜します。それが飛行機の形でもきっと風船でしょうから躊躇わず撃墜します。それで文句は言わないんですね。辛氏は口ごもりながら、そうしろ、と言った。冥光はそれを受け、はい、頂きましたぁ、と大声を出した。今のは全て録音しています。これを全世界の主要な言語に翻訳して吹き替えで面白おかしく拡散します。これで言った言わないは通じませんから。取り敢えずTiktokerとInstagramerに投稿します。metubeは辞めときますね。じゃ、と電話を切った。冥光は中酷がTiktokerとInstagramerに規制を掛ける事に期待していた。冥光の狙いはmetunbeとWitterでの拡散だったから。


中酷「偵察気球が米国で撃墜されたのは、日本が日本領空で処理

   しなかったせいだ」

冥光「何処の物か分からなくても処理していいんですか」

中酷「当たり前だ」

冥光「次回からはバシッと問答無用で撃墜します、お任せくださ

   い。どんな形でもね」

中酷「そうしろ」

冥光「はい、頂きましたぁ。これで我が国の物を無許可で撃ち落

   としたは言わせませんよ」

中酷「我が国の物と分かった上で落とせば、私権侵害だ」

冥光「それは通じません、はい、お仕舞い」


 冥光は、電話の音声を主要国言語に翻訳し、吹き替えで動画を作成し世界に拡散した。それからは、日本の上空に気球は鳥羽亡くなった。


 

 

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