[ 152 ] ギルドの異変
ギルドへ入ると、声を荒らげたマスターの怒号が飛んできた。
「ラッセ! 他の支部からの情報はどうだ!」
「ダメです。聞いたことのない症状だと……」
「クソが! 一体どうすればいいってんだ!」
ギルド中央にある大テーブルには、誰かが寝かされており、その周りをギルドマスターとラッセさんが取り囲んでいる。
「どうしたんですか?」
「なにしてんの?」
僕らを見るなり、一番に声を上げたのはラッセさんだった。
「ロイエさん! こっちへ!」
「え? は、はい」
ラッセさんがこんなに声を大にして叫ぶなんて、尋常じゃないと感じた僕は、慌てて大テーブルへ駆け寄よった。テーブルには男の子が横になり唸されていたが、様子がおかしい。
「……うぅ!!! ぁあああ、うう!」
男の子は、手足がどす黒く腫れ身体中に汗がびっしり……嘔吐した後もあり、明らかに異常な状態だった。
「え、どうしたんですか……この子」
「どうしたもこうしたもあるか! 解毒薬か何か持ってねーか?!」
「え? 解毒薬?」
「マスター落ち着いてください。つい先ほどです。子供達がギルドに駆け込んできて、友達が急に倒れたと」
「慌てて見に行ったらこの状態でよ! 俺は湿地帯のデッドリーフロッグにでもやられたのかと思って解毒薬を飲ませたんだが効かねーんだ!」
「え? 子供達で湿地帯に行ったんですか?」
「いえ、そもそも子供達は街から出ていませんから、それはマスターの早とちりです」
街の中にいて毒に? しかも解毒薬は効かない?
「グイーダはこの子の親を呼びに、シュテルンさんは街に出入りしてる業者に解毒薬を持っていないか聞きに走り回ってます」
「レッドポーションで延命してるがそんなに量もねぇ! 他の支部に聞いても聞いたこともねぇ症状だっていうじゃねぇか!」
なるほど、それで街の外からきた僕に解毒薬を持っていないか?と、解毒薬は持ってないけど、状態異常回復魔法なら治せる可能性がある……。
「ロイエさん、ここのメンツは信用できます。やってもらえますか?」
ラッセさんの真っ直ぐとした瞳は、僕に治せと言ってきている。僕はこくりと頷いた。
「わかりました」
「お! 解毒薬持ってんのかよ! 早いとこ……」
「アノマリー」
僕から発せられた黄色い光で男の子が包み込まれる。
光に包まれた男の子は、徐々に手足の腫れが引き、表情も穏やかになった。どんな毒かわからないけど、クーアもかけておこう。そういえば、アノマリーは無詠唱で発動出来るんだった。
「もう大丈夫でしょう。念の為に回復魔法もかけておきました」
「ありがとうございました」
ラッセの声に合わせて後ろを振り向いたら、マスターが僕を指差してわなわなと震えていた。あ、ヤバい。
「お! おまえ!! かいふ「グリーゼル・オルト・ヴェルト!」」
マスターはラッセの本気を出した氷魔法により、カッチコチに氷漬けにされた。
「ごめんなさいロイエさん。マスターの声は馬鹿みたいに大きいので、これしか対処法がありませんでした」
「いえ……。マスター生きてますか?」
「これくらいで死ぬような人では無いので大丈夫です」
マスターが氷漬けにされるのを見て、レオラは慌てて口に手を突っ込んで声を我慢していた。
「レオラ落ち着いて、ゆっくり口から手を取るんだ。いいね?」
こくこくの首を縦に振っているが、レオラの性格からして叫びたいのを無理やり我慢したんだろう。
「ふぅ、危なかった……私も叫んじゃうところだった……。ロイエは回復魔法も使えるんだね」
「うん、黙っててごめんね」
「ううん、びっくりしたけど、ロイエがいなかったら子供は助けられなかったと思うよ」
レオラに褒められて少し嬉しかった。人の役に立てる事が……、助けて喜ばれる。それは前世でも僕の原動力だった。やっぱり回復術師はこの世界に必要だと改めて思った。
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