[ 041 ] 魔石実験

 期限まであと五日……そろそろまずい。


 クルさんトとの練度上げは、昨日からジオグランツは発動させたままなので、今日の昼過ぎには練度★二まで上がる目算。こっちはがんばれば練度★三が間に合うかもしれないけど……。


 金貨あと四枚を五日……。つまり、一日銀貨八枚の仕事をしなきゃいけない。日に日にハードルが上がっていく。


 今日の午前中は、ナルリッチさんとのたこ焼き、焼きそばの試食会と打合せがあり、午後はクルトさんとの練度上げ。とてもじゃないけど今日はお金を稼げそうにない。


「実質四日で金貨四枚……。一日金貨一枚を稼ぐ仕事を探さないといけないのか」


 そんな給料が良いのは東側くらいしか無いと思うが、今日は一度も行っていないCエリアに、仕事を探しに向かおうと思う。


 道中、西側からDエリアへ入った時に、ロゼの店をチラッと見て行くと、今日は開いていた。


「こんにちはー?」


 ドアを開けた店に少しだけ顔を出して声をかけると、奥からロゼが飛び出してきた。


「わぁ、ロイエさん! いらっしゃいませですわ! 昨日はごめんなさい。来ていただいたのに留守で……」

「な、なんで来たことがわかるんですか?」

「ドアに匂いがついておりましたもの」


 怖い怖い……。


「嘘です。ロイエさんなら律儀に来てくださると信じていましたわ」


 ロゼは天使のような笑顔で微笑んだ。今まで何人の男性が恋に落ちたのかわからない、僕もくらっと来るほどの満面の笑みだった。


「それで、魔石を食べてからお身体に異変はありませんか?」


 研究者モードになったロゼに、あれこれ質問され、僕は魔石を食べた後の違和感について話した。


「なるほどですっ。体が暖かくなって魔力が漲るような感じですか……」

「何かわかります?」


 ロゼは何か思い当たることがあるのか考え込んだあと、何かを閃いたのかポンッと手を叩いた。


「あの日はここに来る前に、何か魔法は使いましたか?」

「使ってないね」

「なら、魔力の最大値が上がってる可能性がありますね……」


 それはあるかもしれない。ただ、食べた量が僅かな量であると事。捕まって鍛えられてたから魔力最大値が高く、ここ数年は魔力切れを起こしたことはないし、最大値が増えてもわからない。


「誰かすぐに効果がわかりそうな人……か。魔力の最大値が低くて……いるな」

「あら、お知り合いに良い実験台がいらっしゃいますか?」

「実験台……否定はしない。今日の夜に会うから少し魔石貰って良いですか?」

「はい、お店にある物ならどれでもどうぞですわ」


 僕は近くにあった瓶から、二十個ほど魔石を取るとポケットへ仕舞った。クルトさんならすぐに効果がわかるかもしれない。


「そういえば街の復興財源として、リンドブルムの魔石がオークションに掛けられましたので落札しましたわ」


 それで昨日居なかったのか。


「三つ魔石をゲットしましたので、今度持ってきますね」

「う、うん……」


 話をしていると身体がポカポカと温まり、魔力な漲るのを感じた。やはり魔力が回復してるというよりは、どちらかというと最大値が僅かに増えた気がするな。


「あの〜ロイエさん。今日この後のご予定はありますか? 宜しければ、是非わたくしとお食事を……」

「あ、お昼はナルリッチさんと試食会の予定が入っていて……」

「そうですか……。あら? ナルリッチさんって、数多くの飲食店を経営している。ナルリッチ・トロッツアルター様のことですか?」

「あ、そんなミドルネームだった気がする。息子がテトっていう子で」

「さすがロイエさんですわ。トロッツアルター様は人嫌いで有名でして、わたくしですらお食事会に誘われた事がございませんのに……」

「まぁ……成り行きというか、なんというか」


 適当に誤魔化して店を出ようとしたら、ロゼにズボンの裾を掴まれた。珍しくロゼが下を向いて少し恥ずかしそうにしている。


「で、ではお昼まではお時間ありますか?」

「それなら空いてるけど……実はCエリアを見たことがないから、行ってみようかなと」

「では、ランチは諦めますので午前中だけ、わたくしとCエリアをデート致しませんか? あそこは観光名所にもなっているので案内いたしますわ」

「じゃあ……頼もうかな」

「はいっ」


 デートという単語にちょっと恥ずかしさを感じつつ、ロゼと二人でCエリアのデートをする事になった。

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