第3話
3話
ある日、いつも2人で歩く帰り道。この頃には気付くとクラスのみんなは気を使ってくれてるようだった。見える位置にいるのに距離を取って僕達を2人にしてくれている。
僕達は並んで歩く。夕陽で影が伸びて2人の姿が目の前の地面に映る。当たり前だけど並んでる。あの佐藤さんと、僕が。
途端に恥ずかしくなる。まるで恋人のような距離に立って歩いていることを地面で確認したからか、急に顔が熱くなった。
「どうしたの?なんか耳まで赤いよ?」
指摘が早い。そんなに赤かったんだろうか。
「なんでもない、ただ。近いなって。それだけだよ」
「なにそれ」
そう言った佐藤さんの顔は急に赤くなったのを僕は見た。赤くなった佐藤さんはそっと。こっそりとだけど。僕の手に手を近づけてきた。彼女の左手の指の第一関節が僕の右手の甲にコツンと当たる。
心臓が飛び出るくらいドキンとした。
「手、繋ご」
ポソッと彼女が言った。ウソだろ。
(後ろに同じクラスの子たちいるよ)と手振りで僕は説明したが
「いいよそれでも。少しだけ。手繋ぎたいな」
本当のことだろうかこれは。何が起きたんだろう。僕の片思いっていう認識だったんだけど。違うのか?
僕はそっと手を近づけて握る。彼女も握り返す。心臓の音がうるさい。死ぬのかなってくらいドキンドキン言ってた。もうこれ聞こえてるんじゃないの?ってくらいの経験したことないくらい大きな心音だった。すると。
「心臓、うるさいな」と佐藤さんが言った。
「え?!やっぱり聞こえんの?僕の心音うるさすぎだもんね?」と言ったら。
「やだ、私のだよ、私の心臓」
と佐藤さんは笑った。僕も思わず吹き出してしまった。
なんだ。佐藤さんもか。
佐藤さん、好きだ。
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