勇者の朝
「ふぁ〜あ、良い朝だあ」
特に夢を見ることなども無くぐっすりと眠りにつけた俺は、スッキリとした清々しい朝を迎えられた。
「早起きは慣れてるけど、ここまで目覚めが良いのも久しぶりだな」
上半身を起こした後「んっ」と、癖のように両腕を上方へと伸ばしたところで思い出す。
そういえば怪我をしていたはず。
くるはずの痛みに備えて身体を強張らせても何も起きない。
「え、痛くない!」
結構思いっきり伸びをしてしまったので相応の痛みを覚悟したのだが、治りが良かったのかミリアの腕が良いのかはわからないが、 痛みはなくなっていた。
不思議だが、とにかく良かった。
コンコン、ガチャ。
「おや、朝早いんじゃな。おはよう、勇者殿」
「あ、村長さん。おはようございます。昨日はありがとうございました」
村長さんがノックの後に部屋に入ってきた。村長さんの家だし帰ってきたが正しいのか?
「良いんじゃよ、儂もこの通り年じゃ。死ぬまでに救えるものはできるだけ救ってやりたい」
笑顔で、当たり前の事を言うように続ける村長さん。こういった台詞をなんの
「あぁ、そうそう。ミリアには昨日のうちに渡したのじゃが、お前さんには朝食の後にでも
「俺も頂けるのですか!」
「ああ、もちろんだよ。食べ終わった頃にまた来るよ。できるサポートはしてあげたいのじゃ」
勇者様じゃしな。そう続けて村長さんは出ていった。
昨日怪我でお風呂に入れなかった分、今入ってきても良いとも言ってくださったのでお言葉に甘えることにした。
「あぁ~気持ちいいいいい死んでないけど生き返るううう」
まさかお湯まで準備していてくれたとは、本当にありがとうございます村長さん、いや村長様。
それにしても気持ち良い、一生浸かっていたいくらいだ。
そう思っていたが、少し経ったらのぼせそうになったので出ることにした。
「……え?」
着替える前、あることに気づき体中を見渡す。
「無い……」
「おはようございます勇者さん、どこにいます……きゃあ!!」
「え、ミリア!?」
全裸で体を見渡している時にあろうことかミリアが俺を探して入ってきた。
目を見開き、顔を真っ赤にしたミリアを見て咄嗟に色々と隠すが間に合わなかったかもしれない。
「ご、ごめんなさい!」
ミリアは謝ると物凄い勢いで出ていった。
「なんか……こっちこそごめん」
年頃の少女に、ましてやこれから旅をしようという少女に全裸を見せてしまった。これで付いて行くのやっぱ辞めますとか言われたら何も言い返せない。
無言で着替えを済まし、再び部屋に戻ると丁度ミリアが朝食を運んできていた。
俺は謝ろうとミリアのもとへと急ぐ。
「あ、ミリア。さっきはなんか本当にごめん!」
ミリアの前に膝をつき、頭を垂れる。
そう、最大の謝罪。土下座である。
「そんなやめてください!顔を上げてください、不注意だったのは私ですから! あなたは何も悪くありません!」
優しい言葉に顔だけ上げる。
「本当に? 旅、付いてきてくれる?」
「はい、女に二言はありませんよ!」
ミリアはドンと、年相応で控えめな胸を叩いてみせる。
「ミリア様!!!」
「変な呼び方恥ずかしいのでやめてください!!それじゃあ、朝ご飯にしましょう! 差し支えなければ私もご一緒しても良いですか?」
確かに、良い匂いのするトレイには二人分のご飯が乗っている。断る理由は無い。
「もちろん! 二人で食べたほうが美味しいもんな」
「ありがとうございます!」
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