026 呪いの人形

 ある日私は人形に出会った

 それは玩具屋でというわけではない

 私が人形と出会ったのはゴミ捨て場である

 ゴミ捨て場でボロボロの人形が私を見上げていたのである

 見上げていたというのは比喩ではなく人形の首が上を向いていたのだ

 目と目が合う

 普通に考えるのであるならこれは呪いの人形であろう

 髪が伸びたり捨てても戻ってきたりするあれである

 だが私はそんな霊的なものは全く信じていない

 それはそれとして人形は私を見上げているのである

 まるで私に持って帰ってくれと言っているように

 しかし私はその人形を持って帰らなかった

 目と目が合った人形をいちいち持って帰っていたら私の家は人形屋敷になってしまうからだ

 だが行く道があれば帰る道もある

 つまり毎日二回人形と目が合うのだ

 しかしある日それは終わりを告げる

 人形が下を向いていたのだ

 誰かがその目線に耐えかねて下を向かせたのだろう

 だから私は人形の頭を動かして上を向かせたのだった

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