第2.5話
背景並びに、騒ぎ立てた人々は時間の流れに逆らうように停止した。代替えとして神様が皮肉を吐きながら降臨する。
「はっ、茶番だな」
「ヨヒト、僕……」
未来に何が起きるのか知っていて、何もしなかった。
今回は動けなかったわけじゃない…… 敢えて、動かなかった。
それでもあそこを通ったのは偶然で、先輩が自ら選んだ道をただただ……なんて、酷くつまらない言い訳だけが脳裏に浮かぶ。
「弁疏とは下らぬ愚者の戯言よ。あれだけ豪語を施して起きながら、その程度で溺れるとは嗤える」
……返す言葉もない。
時が止まった、僕らの世界には変わり果てた――鉄柱ごと身体を貫かれた先輩が惨い姿で睨んでいるように見えた。
どうすれば最善だったのだろう、そんなこと考えずとも結論は一環していたというのに。どうして僕はおぞましく、最低で、恐ろしい行動をしてしまったのだろう。
このまま永遠に、この日を繰り返せばこの彼はきっと、この腐れ切った僕だけを相手にしてくれるって。
「……なにゆえ、お前は泣く?」
「ヨヒト、僕は……最低な人間だ……」
こんな僕に先輩を救う資格なんてあるのだろうか。ううん、その前に彼の隣に立つことだって許されていいのか。
……わからない。どうしていいかとかじゃなく。続けることで正解が導けるのか、誰も、教えてくれなのに。ならヨヒトの言う通り、諦めてしまった方がきっと楽になれ――。
「はぁー………………神社」
「……え?」
三十秒ほどの長い溜息の後、ヨヒトはぼそりと呟いた。
「ヨヒト、さっきなんて……神社?」
神社、神社って……あの?
そういえば先輩も神社で願掛けしたって。
それにヨヒトもどこかの神社の神様だったような……偶然、なのだろうか。
「ふんっ。お前の情けない顔を見るのも見飽きた。精々ありったけの思考を捻じ曲げて、ここから出ていくことに専念するのだな」
「え、ちょっ……ヨヒト、それってどういう意味で」
「ええい、煩い!これだけ示唆を与えてやったのだ、次は……無いと思え」
「ヨ、ヨヒトー!」
僕の叫び声はぐにゃりとした視界に呆気なく潰される。この感覚、何度も何度も経験をした。
時間が――巻き、戻る。
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