第43話 家族との通話
その後、部屋の整理をしていると再び電話がかかってくる。これは……あぁ、
『やっほー、琉兄さん! 元気してるー?』
彼女は潤花の
一応、潤花と同じ学校に通っているらしい。なんでもこの家の女子の伝統なんだとか。既に家族なのによく分かってないのがなんとも言えないのだが、そういうしきたりの家なのだろう。
そもそも、潤花が中高大学の一貫校という、とてつもなくお金がかかるであろう学校に行けるのも、彼女の実家がかなりデカいところの家であるためである。
うちの母親は、その実家がやってる企業で働いていた縁で潤花の祖父に見初められたとかなんとかで、潤花の父親との縁談を勧められたという経緯で知り合ったらしい。子持ち同士でもトントン拍子に結婚まで行き着いたのはそういう流れがあったようだ。
僕もしっかりしたマンモス校とかに進学させようとしてくれてたみたいだけど、小学校の知り合いとかと別れなくなかったから普通に進学したんだっけ。あんまり覚えてないけど。
一応、祖父は大学の学費とかこの家の家賃とかを出してくれているので、感謝してもしきれない。
ゲームにうつつを抜かして大学に行かないなんて事にならないよう、ちゃんと気を引き締めないとな。
さて、瑞希の方だが家が学校に近いからと寮生活をしていないので、この春休みの間はうちの方に泊まり込んでいる。
「今のところは元気にしてるぞ。
『元気だよ! 今のところ毎日遊んでる! でも、琉兄さんもたまには電話してあげなよー? 寂しがってるからさ』
「え? あー、うん。分かったよ」
瑠衣とは、僕と潤花の歳の離れた妹だ。ちょうど再婚した辺りに産まれたので今は6歳になる。なのでちょうど今年から小学生になるわけだ。
将来的には瑠衣も潤花と同じ学校に通うことになるだろう。小学校も祖父の鶴の一声でそれなりにしっかりとしたお嬢様学校だったりするし。
しかし、電話か。一応、昨日したばかりなんだけどなぁ……。まぁ、一緒にいた兄が居なくなったから仕方ないかもしれないか。
「うちの母さんとは仲良くしてるかい?」
『
「そりゃそうだろ。一応、受験がなくても成績良くなかったら学内進学できないんだろ?」
電話の向こうでブーブーと不満な意思表示をしている瑞希。ここでどれだけ不満を意思表示しても何も変らないぞ?
『あっ、ちょうど瑠衣ちゃん来たから変わるよ? いいよね?』
「ん? あぁ、大丈夫だよ」
そう言って少し間が開くと、電話の向こうから幼い声が聞こえてくる。
『おにーちゃん! 元気ー?』
「元気だよ。瑠衣はどうだい?」
『んー!』
そう言うと、何やらゴソゴソと何かを弄る音だけが聞こえるようになり、声が遠くなってしまう。
何事かと思っていると瑞希が電話に出て『ごめん、ちょっと映像付き通話に変えるねー』と言ってきたので、少しだけ端末を離してみる。
すると、画面に瑞希と瑠衣の姿が現れる。瑞希は長めの黒い髪の方、瑠衣は姉譲りの茶髪を短く切りそろえている方だ。まぁ、背丈で分かるだろうが。
そんな瑠衣の背中には綺麗な真っ赤なランドセルがある。そうか、祖父が用意してたというランドセルが今日届いたのか。どうやら瑠衣はそれを僕に見せたくて仕方なかったみたいだ。
「可愛いね、瑠衣。よく似合ってるよ」
「えへへー! ありがと、おにーちゃん!」
その後、瑞希と瑠衣の2人としばらく話をしていると、今度は母親まで入ってきたので何だか家族との会話みたいになっていった。
時間も結構長くなったのでそろそろ電話も切ろうとしていると、ふと瑞希が話しかけてくる。
『そういえば琉兄さんって、うるちゃんから勧められてドラクルやってるんでしょ? どうなの?』
ふと瑞希からドラクルの話題が出てきて少しだけ驚く。うるちゃんというのは潤花の事だ。昔からそう呼んでいたらしい。
「どうって言われても、僕もまだ少ししかやってないからなぁ……まぁでも潤花にも言ったけど結構楽しめそうではあるよ」
『そっかー。実は私も二次出荷分で参戦予定なんだよねー! まぁ、取り敢えず楽しみに待っててよ』
「いや、待つのはそっちだろう?」
どうやら瑞希は二次出荷の方を予約できていたようで、そっちから参戦するようだ。これは月末辺りが騒がしくなりそうだな。
『アハハ! そりゃそうだ! その時は色々、ご指導ご鞭撻お願いするね、琉兄さん!』
「んーそうだな。あんまり先の方に進んでなかったら考えておくよ」
『いやいや、琉兄さんの性格的にそんなにサクサク先には進まないでしょ! どうせ、1週間経っても同じ街に居るって』
「いや、それは……どうだろう?」
言い返そうとは思ったが、ゲーム内での1週間後でもそんなに進めてない可能性は確かに無くはないな。
『いや、そこは言い返そうよ琉兄さん……』
「あ、ごめん……」
いや、なんで謝ってるんだ僕は。
とにかく、そのまま僕は瑞希との電話を終わらせる。気付けばもうゲーム内では朝を迎えようとする時間になっていた。随分と長電話してしまったなぁ。
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