第92話 次の一手
「……ゴーレムは土属性だから『ウインドカッター』を使いたいけど、斬撃だから効かない」
ミリィはゴーレムに対して魔術を発動しているがその効果は程々といった感じだ。
斬撃ほどダメージが与えられない訳では無いものの、打撃のような有効打にはならなさそうというのが現状であった。
しかもギガントゴーレムは土属性のモンスターで、弱点となる風属性から通りはいいのだろうが、【黒魔術】の傾向で覚える属性魔術で風属性となっているのはよりによって斬撃扱いになる『ウインドカッター』である。
魔術は基本的に物理系の攻撃とは別物の扱いになるのだが、たまに物理系と同じ斬撃や打撃の傾向を持つものも存在する。
例えば道中でミリィが使っていた『ストーンバレット』は魔術でありながら打撃攻撃になり、『アイシクルランス』も魔術でありながら斬撃攻撃となる。
『ウインドカッター』の場合、弱点なのでかなりダメージを与えられそうだが、ゴーレムの斬撃耐性によってダメージが大きく減らされてしまう。
結果としてそこまで効果がないような感じになってしまうのである。
因みに土属性に対して水属性の攻撃は半減され効果がないので、斬撃属性持ちの『アイシクルランス』はまさかのノーダメージとなっていた。
なのでミリィはさっきから『ファイヤーボール』を使っていたのだが、それも有効打にはならなさそうな感じだった。やはり、ゴーレムだけあってVITは高いが、MINの方もそれなりに高めのようだ。
打撃系の攻撃も多数当ててはいるもののまだまだ削りが悪い。シルクによる攻撃適度しか効果がないからだ。それもそこまでといった形だ。
その状況がしばらく続いたとき、アイギスがふとギガントゴーレムを見上げて睨みつけていた。
「くっ、キリが無いわね……! ここは私が一発噛ましてやるわ!」
そう言うとアイギスは盾を構えてギガントゴーレムの眼前に立つ。
「ちょっ、アイギス!? いくら盾持ちでも危ないわよ!」
ウルカが危険を察知して叫ぶが、アイギスは平然とした笑顔をウルカに向ける。何かしらの策があるのだろう。
こういう時、VITを上げられる『ガードアシスト』が使えればサポートできたのだろうが、生憎覚えていない。
そしてアイギスの眼前にギガントゴーレムの拳が迫っていく。そしてそれが思い切りぶつかるとアイギスは縦を構えたまま後ろへと下がっていく。踏ん張ってはいるが、やはりすごい勢いで地面を足が滑って行く。
そしてある程度下がった位置で止まると、息を切らせながら周りに無事であることをアピールする。
「……さて、これでダメージを貯めることができたから、反撃よ」
そう言うと、今度は盾を持ってゴーレムへと迫っていくアイギス。すると、何やらエネルギーのようなものが盾の中心に集まっていた。
「そうか、『シールドチャージ』を使ったのか」
「知ってるのか、ガンツ!?」
ガンツの呟きに隣でゴーレムに殴りかかっていたナインスが問いかける。
どうやら『シールドチャージ』は【盾術】のアビリティレベルのレベル12で使えるようになった、本サービスでの新スキルとなるらしい。ガンツもこのレベリングの間にそのレベルに到達して覚えていたようだ。
その効果は発動後、盾を構えている間に発生したダメージを盾にチャージすることができるという効果になるらしい。
ただし、この効果の発動中はVITやMINのステータスを上げるスキルやアーツ、アビリティの効果が無効化され、盾と自身の元の防御系のステータス値によるダメージ軽減しか行われないらしく、かなりダメージを負いやすくなってしまうというデメリットも存在しているらしい。
つまり、支援スキルをかけていても無駄だったわけだ。
そして、貯めたダメージは盾による攻撃を与える際にそのダメージ量に追加して与えることになる。
ダメージを跳ね返す『リフレクター』の場合、許容できるダメージ以上だと受け切れずにスキル自体発動しない仕様となっている。
こちらの場合、堪えきれればそのまま次の攻撃のダメージに追加することができる為、かなり強力な技となるのだ。
「アイギス! あの核を狙って!」
ウルカがセンディアをアイギスのジャンプでも届くような位置で止まらせる。どうやら踏み台にする事で、弱点と思わしき核へと攻撃させようとするつもりのようだ。
それを察知したか、ゴーレムが動き出そうとするがそれらは撹乱させるメンバーと、アイギス以外の物理攻撃のメンバーで阻止される。
「お前は黙ってろっての!」
「さぁ、行くんだ!」
ナインスやユートピアの叫びを聞きながら、アイギスはセンディアの背を踏みつけて飛び上がる。センディアはアイギスが飛び上がるタイミングで思い切り上昇したので、余裕で核の位置に到達する。
「任せなさい! 『シールドバッシュ』!!」
そしてアイギスはそのまま盾を核へと叩きつけると、抑え込まれていたギガントゴーレムの攻撃によるダメージを含めたシールドバッシュのダメージが勢いよく核へと流し込まれる。
やがてそのダメージによって核が砕けるのと同時に、ギガントゴーレムのHPは半分を切る事となった。
「ふん、どうよ。私だって、やれるんだから……!」
そのままアイギスがダメージを負いすぎたことで意識を手放して倒れそうになるも、そこはセンディアが支える形となった。
流石に無茶をしすぎだ……が、お陰で次への一手を打つことができた。
僕はお疲れ様という気持ちを込めて満身創痍のアイギスに向けて『ユアヒール』を発動する。
まだまだ戦いは続くようだが、一先ずゴーレムは動きを止めていた。
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