第71話 怒涛のアナウンスラッシュ

〈特殊クエストをクリアしました。該当イベントに成功報酬として参加していたプレイヤー9名にプレイヤーレベル経験値1000、そのパートナードラゴンに経験値1000が加算されます〉


 こうして村人のお願いから始まった特殊クエストは無事にクリアとなった。


 何やら莫大な量の経験値を貰ったが、どうやらユートピアらのパーティーもこのクエスト、というよりはイベントの参加者として組み込まれていたらしい。良かった。


 しかし、経験値1000なんて、今の僕の次のレベルに上がるまでの経験値量よりも遥かに高いのだが、これはかなりレベルアップするのでは……?


〈レベル5になりました。アビリティポイントが追加されます〉


〈レベル6になりました。アビリティポイントが追加されます〉


〈レベル7になりました。アビリティポイントが追加されます〉


〈レベル5に到達したことで、死に戻りの際のデスペナルティが解禁されます〉


〈レベル5に到達したことで、ドラゴン召喚時の召喚コストが軽減されます〉


〈レベル5に到達したことで、ボーナスアビリティポイントが5ポイント追加されます〉


〈ジョブ『ブラッドサポーター』がレベル5になりました。それに伴いジョブアビリティ【血脈強化】がレベル3になりました。新しいアビリティ【血の解放】を習得しました〉


〈【後方支援】がレベル5になりました。それに伴い、新しいスキル『クイックメイク』を覚えました〉


〈【魔術】がレベル3になりました〉


〈【魔力供与】がレベル7になりました〉


〈【支援回復術】がレベル2になりました。それに伴い、新しいスキル『ライフリカバー』を覚えました〉


〈パートナードラゴン『【龍閃姫】ルヴィア』がレベル2になりました。ステータスが強化されます。また、新しいアビリティ【魔力喰らい】を習得しました〉


〈称号『邪鬼の討伐者』を獲得しました。称号の項目がステータスに追加されます〉


〈習得条件を満たしたので習得可能アビリティに【炸裂魔術】【魔力付与】【魔力循環】【灰魔術】が追加されました〉


 その後は案の定、怒涛のアナウンスラッシュである。一気にレベル7まで上がり、レベル5で迎えるデスペナの解禁と召喚コストの緩和、そして初めて知るボーナスアビリティポイントの獲得を経験する。


 デスペナは今後戦闘する際により自分のHPに気をつけて行動する必要が出てくることになる。


 召喚コストに関しては、ルヴィアの【常在戦場】によってかなり高くなっているので、多少程度にしか下がらないだろう。


 経験値に関しては……まだ多く手に入るかもしれない希望が出てきただけマシと思う他ないだろうな。


 しかし、ボーナスアビリティポイントは本サービスで追加になったのだろう。初めて知った。


 おそらくは、これもアビリティポイントの入手手段増加の1つだったのだろう。何にせよ、5ポイント増えて合計8ポイントだ。これなら、新たに習得可能になったアビリティも余裕で獲得できるだろう。


 他にはジョブや、アビリティレベルが上がるアビリティのレベルが上がった。


 ジョブの方はレベル5になったので新しいアビリティである【血の解放】を習得した。


  これは、場にブラッド・ドラグーンがいる場合、ドラゴンを対象にしないものも含めた全ての支援スキルに対して、別の支援スキルや補助スキルで上書きされないという補正を与えるという効果だ。


 つまり、自己強化スキルと両立することができるようになるのだ。いや、レベル5で覚えていいアビリティじゃないなこれ……。


 そして【後方支援】もレベルアップで新たなスキル『クイックメイク』を習得したが、これは予め戦闘の前に自身が製作可能となっている生産アイテムのレシピを選択しておくことで、戦闘中にそのアイテムを生産することができるというスキルとなる。


 確かに後ろでアイテムを補充できれば十分支援と言えるのかもしれないが……。


「けど、このスキルよく見ると凄い事書いてるな……」


 スキルの詳細を読んでいく中で、僕は『クイックメイク』の異様な万能加減に驚くことになる。


 まず、基本的に生産スキルを発動するには生産キットを使わないといけないという仕様から、通常だと戦闘中には生産スキルを使うことはできないという制限がある。生産キットは一部の戦闘中以外では使用できないアイテム扱いとなるからだ。


 もし戦闘中に使用したければ、通常だと一部の生産職や特殊職が持つジョブアビリティの効果による場合などに限られてしまう。その場合、キットを使う必要もない。


 このスキルもそれらの生産職の効果と同様にキットを使わずに使用可能なのだが、ここで更にミソなのはである。


 基本的に、非セット時にも効果を発動するアビリティでない限り、そのアビリティを外してしまうとそれによって覚えたスキルやアーツは使用不可になってしまう。


 その為、生産スキルは基本的に対応する生産技能をセットしてなければ、レシピを登録していようが使用することはできない。


 当然、生産職がジョブの効果を使って戦闘中に生産スキルを使う際も、元の生産技能をセットしている事が前提となるのだが、『クイックメイク』の場合、どうやら【後方支援】そのものが万能的な生産技能のような扱いとなっているようで、該当の生産技能アビリティをセットしていなくても生産可能となるらしい。


 ただし、さっきも告げたが『クイックメイク』で作れるのはレシピ登録したアイテムのみなので、使えるのは習得済みの生産技能に限られる。


 何故なら、レシピは習得済みの生産技能のものしか登録することができないからだ。厳密には、登録はされているが技能を習得するまで『ロック』がかかっている、というのが正しいらしいのだが。


 まぁ、アビリティを圧迫せずに生産スキルを使えるというのは、ある意味ではかなり大きなメリットとなるだろう。


 因みにスキル使用時は普通にオート生産となるようだ。それは生産職のそれも変わらないので仕様なのだろう。戦闘中にセルフ生産なんてしている余裕があるわけがないので当然だ。


 その際、『クイックメイク』だと本来のアビリティによる補正効果がないので、それこそDEXがある程度ないとそもそも作れない可能性もあるのだが……僕の場合は多分問題ないだろうとは思う。後で確かめてみよう。


 まぁ、作れたとしてもその品質はかなり悪くなるのは間違いない。……とはいえ投擲に使うような簡単なアイテムであれば、品質が悪くてもそこまで影響はないだろうから、その手のアイテムを作るのに使うというのも良さそうだ。


「まぁ、戦闘中に使う機会がそもそもあるのかどうか次第だけどね……」


 僕は【後方支援】の新スキルを確認しながらそう呟く。どんなに凄そうな効果でも、結局使わなければ意味はなかったりする。


 気を取り直して残りの項目を確認する。


 【支援回復術】では新スキル『ライフリカバー』を覚えたが、これは対象に一定時間HP回復効果を与えるスキルとなる。効果は30秒で0.5%なので僕のフルセット効果のものより回復量が低い。そして、例の如く自分には使えない。


 【後方支援】の効果で1.5倍にはなるものの、それでも僕らの物には及ばないというのが残念なところだ。【支援回復術】のアビリティレベルがもう少し上がれば効果も上がるだろう。その時が楽しみだ。


 称号については確認したところ、どうやらこのイベントの全ての参加プレイヤーに与えられる物らしい。効果としては『自身と召喚ドラゴンの、ゴブリン種に対するダメージ量が1.2倍になる』というものだ。


 ゴブリン種限定なのが残念ではあるが、ゴブリン種は意外と種類が多いのでそれ全てが当てはまるこの称号は割と使えるかもしれない。


 称号については、 その多くが今回のようなゲームイベントで獲得することが多いらしい。効果があるものに関しては、特にアビリティのようにセットする必要も無く、ただ所持している事でその効果を発揮するというものらしい。これは持っていればそれだけ得する事になるだろう。


 そして新たに習得可能になったアビリティだが、【炸裂魔術】に【魔力付与】、【魔力循環】に【灰魔術】となる。一気に4つも習得可能になった。


 まず【炸裂魔術】だが、これはおそらく魔力暴走させて大爆発寸前の魔術を使ったことによって解禁されたのだと思う。何故ならその習得条件が『威力1000以上の魔術の発動』だからである。


 本来なら各種レベルやステータスを上げて、補助的なスキルを重ねがけすることで、ようやく達成できるものなのだろうが、自分の場合は変な方法で達成してしまったようだ。


 その中身は、【魔術】とは異なる高威力の魔術スキルを覚え、それに対する補正を与えるという戦闘技能アビリティだ。その威力はなんと固定値らしく、威力が大きい分かなりのMPを消費するようだ。


 今までINTの数値が低くて攻撃手段が無かった僕にも、ようやくまともな攻撃手段が見つかったことになる。これは勿論、習得する事にした。


 次に【魔力付与】だが、これは魔力供与のアイテム版となる。スキルが対象とはいえ、プレイヤーやドラゴン以外に魔力供与したため、習得条件を満たしたらしい。


 同時に覚える『魔力付与』のスキルを使って、MP消費系のアイテムに魔力を付与することで、実際に扱う際にMP消費無しで使用する事が可能になる。


 ただし、付与した魔力が無くなるとそのアイテムが壊れるという条件付きとなる。尤も、無くならないようこまめに付与することで耐久値まで使用可能となる。


 これはその手のアイテムを手に入れる、もしくは作れるようになれば便利かもしれないが、今のところはわざわざ取る必要はないだろう。


 次に【魔力循環】だが、これは消費したMPの30%を30秒後に回復するという効果アビリティとなる。タイムラグが生じるものの、MPが回復するアビリティとしてはかなり効果の高いものとなる。


 その習得条件は『総消費MPが10000を超える』とある。確かにずっと『魔力供与』や支援スキルで消費していたが、もう10000も使っていたのか……。


 僕の場合、MPは幾らあっても困らないので、回復手段が増えるのはむしろラッキーだ。これは間違いなく習得だ。


 最後に【灰魔術】だが、これは【黒魔術】や【白魔術】のような魔術スキルの傾向を決める効果アビリティとなる。何故今更、傾向を決めるアビリティを覚えたのかと思えば、習得条件が『【魔術】習得後、傾向を決めるアビリティを習得せずにレベル5に到達』だった。成る程、覚えてないから覚えられるようになったのか。


 因みに効果としては【黒魔術】のように攻撃傾向というわけでも、【白魔術】のように回復傾向というわけでもなく、どちらも適度に習得するらしい。……というか、【魔術】単独の時と覚えるスキル自体は変わらないようだ。


 それなら、別に習得しても今までと変わらないのではないかと思うだろうが、実は傾向を決める効果アビリティは効果アビリティというだけあって、ちゃんと魔術スキルに対して補正効果を与えてくれる。


 つまり、これは今までの魔術スキルを使う際に補正効果を与えてくれるアビリティとなるというわけだ。


 ただ、この手のアビリティは、習得すると【魔術】をセットする際に必ず合わせてセットしなくてはならなくなるため、必ず付ける必要のある戦闘技能と合わせて、動かせないアビリティのスロットが2つになってしまうという欠点がある。勿論、【魔術】を外していれば、これを付ける必要はない。


 取り敢えず、他に【灰魔術】を取ったプレイヤーが居ないか確かめて、もう少し情報を集めてから習得するかどうか検討してみようと思う。


 こうして僕は、【炸裂魔術】と【魔力循環】を習得し、セットすることにした。代わりに外すのは【加工】と【採取】となる。生産技能や特殊技能に関しては、必要になった際に付け替える形になるだろう。


 幸いにも、アビリティのセット内容に関しては3つまで編成状態を記録し、メニューですぐに切り替えることができるため、そこまで面倒ではない。


 因みにこの編成状態の記録枠だが、例のエクステンドサービスに加入してるとあと2つ程、記録枠が増えるようだ。


 あとアビリティポイントは4ポイントあるが、今後【炸裂魔術】で使えるようになる魔術スキルでMPを多く消費することから、ステータスアップのアビリティである【魔力強化】のレベルを上げる事にした。


 取り敢えずアビリティポイントを2つ使って、レベル3まで上げる。それにより、僕のMPは更に40増加する事になり、総量は360となった。


 残りはいざという時のために残しておくことにしよう。


「主殿! 主殿! 妾、とうとうレベルアップを果たしたぞ!! おい、聞いておるのか? おーい!」


 僕が自身のレベルアップ等によるステータスの変化を確認している最中、隣でルヴィアが嬉しそうに飛び跳ねており、しきりに僕のことを呼んでいた。


 良かった。どうやら、さっきの不機嫌はどっかに飛んでいってくれたようだ。

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