第4話 落第勇者、妹に付き合わされる①
「———参った! 降参! 無理無理もう無理!」
矢上先輩が全身傷だらけでボロボロになり手を挙げるも、その表情は何処か晴れやかそうだった。
やはり根っからの戦闘狂は違うな。
俺は無傷の身体の状態のまま、先輩に手を差し出す。
「大丈夫ですか、矢上先輩? とても楽しかったですね」
矢上先輩は俺の手を取ると、笑顔で頷く。
「うん、めちゃくちゃ楽しかったなぁ! 久しぶりにナンパよりも楽しかったわ!」
「ナンパなんかと比較しないでください!」
突如優奈さんが『次元隔絶室』に入ってきて矢上先輩の頭を叩く。
どうやら優奈さんはナンパに嫌な思い出でもある様だ。
まぁ優奈さんは美人だししょうがないか。
「隼人君、今日はこれで終わりだから帰っていいからね」
「はい! 今日は妹からの催促メールがあったのですぐに帰ります。また今度会いましょう!」
俺はそれだけ言うと、急いで家に向かう。
その道中で電話を掛ける。
勿論相手は妹の遥。
「もしも———」
『———遅いお兄ちゃん! 今日は私がご飯皆の為に作るって言ったじゃん!』
あまりにうるさかったので、俺は耳からスマホを離す。
そして少し経つとだらだらと冷や汗をかきながら再び耳に近づける。
「す、すまん遥……ちょっと清華と優奈さんに
会ってて……」
俺は組織に居たとはとても言えないので、取り敢えず誤魔化してみる。
2人とは実際会ってたし、あながち嘘ではないぞ。
嘘に真実を混ぜるのがバレない嘘のつき方って何処かの誰かが言ってた。
『……むぅ。まぁお姉ちゃん達ならいいけど……早く帰ってきてよね!』
「了解だ。お兄ちゃんが10秒以内に帰ってみせるぞ!」
『気を付けてね!』
そう言われて電話が切れた。
俺はポケットにスマホを仕舞うと、全速力で家へと直帰した。
次の日の放課後。
俺は
昨日遅れた手前、流石に今日まで遥を待たせては、今後「お兄ちゃん嫌い」とか言われそうなので何としてもそれは避けたい。
そんなこと言われたお兄ちゃんぶっ倒れる自信がある。
俺が急いで正門に向かうと、そこには周りの目を一身に集めている遥の姿があった。
遥は俺を見つけると、ジトっとした目で俺を見る。
「今日はなんで呼ばれたか分かりますか、お兄ちゃん?」
「昨日可愛い妹が手料理を作ってくれるのを忘れてたので、その償いをする為です」
俺がそう言うと遥はうんうんとご機嫌そうに頷き、俺の腕を引っ張りながら笑顔で此方を向く。
「お兄ちゃん! 今日は新しく出来たカフェに行こ! あそこ結構高くて私1人じゃ行けなかったの!」
「あ、ああ……お兄ちゃんに任せな」
「ありがとお兄ちゃん!」
俺は喜ぶ妹を見ながら、お金足りるかな……と自分の財布を確認した。
まぁ無くても銀行から引き出せばいいので問題ない。
そんなことより遥が喜んでくれるなら、例え家でも買ってみせよう。
「少し待ってくれ遥ーー!」
俺は先々いく遥を追いかけて、改めて異世界から帰ってきたことを実感していた。
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