第22話 活躍するバイト忍者
「甲賀忍法――灯籠流し!!」
降りしきる青や茶色い葉は、ダストンが破壊光線によって木々をなぎ倒すからだ。子供達が拾って投げた落ち葉のように、葉っぱのシャワーは、当分止みそうにない。
六股君はそんな中、腕の長さほどの枝を拾うとすぐさま投げた。投げられた枝は、両の先端で数字の八を作り、奇妙な回転をして飛んだ。特殊な投げ方でもあるのだろうか、真っ直ぐではなく、大きくぶれながら枝は進むと、ダストンが払った腕を
――効いてる! 効いてるぞ! 目が弱点っぽい!
流石は忍者。と喜んでばかりもいられない。さっきは風魔忍法だった。今は甲賀忍法だ。
――掛け持ちだ! バイトの掛け持ちだ!
僕の心は激しく掻き乱された。やはりバイト忍者。あっちこっちの忍法使って、まるで統一性がない。六股君は流れるように攻撃を続けているが、そのうちメッキが剥げるだろうと仮定する。即座にブレザーを引っ張って、調子が良い内に逃げ出す事に決定。上りはきついので、せめて斜めに逃げよう! 多分、ナイスな判断!
六股君は、僕の手を振り払うようにして言った。
「ちょい待ち靴下君! これで最後! 伊賀忍法奥義! 竜擊瀑布!」
六股君は斜面を跳んで、一気にダストンとの距離を詰める。着地と同時に体操選手がやるような美しい側転を見せると、また飛んで、空中でぐるんと一回転した。そこから足が一本伸びた。
「近付いたら危ないよ!」
僕は咄嗟にそう言った。
この足元の悪い中、よくも器用に接近できるものだ。ビームで焼かれるかもしれないし、大きな口で食べられてしまうかもしれないのに。
そんな些細な事は、お構いなしに六股君は飛ぶ。一本伸びた足は、遠心力をふんだんに溜めていて、ダストンの肩を打ちつけた。ダストンの目が口が、大きく歪んで前屈みになった。
六股君は、反対の足でもダストンを蹴り跳ばすと、その反動を利用して距離をとった。一部始終を目で追いかけた僕の感想は、六股君の動きは【まるで本物の忍者】のようだった。
――お、恐るべしバイト忍者。
「うしっ! 決まった!」
六股君は、這うようにして斜面を上ってくる。ようやく逃げてくれる気になったらしい。後方でダストンはうずくまっていた。六股君の攻撃のせいだと思った。まったく凄いよ六股君は!
「もう十分だよ! 今のうちに逃げよう」
倒木が折り重なり、もはや逃げる道など存在しないのだが、それでも乗り越えて行かなくてはいけない。さっそく腰の高さに横たわる木の、上を行こうか下を潜ろうかを悩んでモタモタしていると、十メートル先で山の斜面が弾けた。急な坂の途中で、火山が噴火したようだった。ダストンの仕業かと振り返ると、まだうずくまったままだ。何かを仕掛けたような気配はしない。
「イッヒッヒッ……。見つけたでぇ~ダストン」
少し先の、山の斜面に穴が空いたようだ。そこから
――ち、違うな、これカティアの声だ!
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