蝶~呪われた少女~

夢月みつき

前編「天の一族の青年と呪われた少女」

◇登場人物紹介◇


1. 「カイト=ノースダリア」19歳 男性 天の一族

背中に翼を持つ空に浮かぶ島ヘヴンに住む。

天の一族の青年。蝶の神を信仰している一族の一人で

家族の命を奪った一族を恨んでいる。

地上に降りた日にマリアと出逢い恋に落ちる。


2, 「マリア=シルク―ド」 16歳 女性 地の一族

地に住む、蜘蛛の神を信仰する一族の銀髪の少女。

カイトが地上に降りた日に出逢い恋に落ちた。

マリア・イメージイラスト(AI)

https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16817330666078219678


3. 「天の一族の長・地の一族の長」

呪いで愛し合うふたりを引き裂こうとする。


4. 「蝶の神・蜘蛛の神」

天と地の一族に信仰されている神々。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


僕の名は、カイト。カイト=ノースダリア。19歳。背に翼を持つ天の一族という、

蝶の神を信仰する一族の末裔だ。空に浮かぶ島、天の国ヘヴンは穏やかで平和な国だ。

だが、それは表面上だけ、裏は掟という鎖で住人達を縛る牢獄だ。厳しい掟が僕の身を縛る。そして、家族を奪った。僕は天の一族というもの自体が許せなかった。


そんなある日、僕は地上に出かけた時に地に住む地の一族。クモの神を信仰する

一族の少女のマリア=シルク―ドと出会ったんだ。

彼女は16歳で、銀髪の長いロングヘア―が良く似合うとても、綺麗な女の子だった。

僕は一目惚れをしてしまった。しかし彼女も一族の掟に苦しんでいた。

それは、天の一族と恋愛をしてはならない。結ばれてはいけないという掟だった。

僕と同じだ。僕の父さんも地の一族の母さんに一目惚れして僕が生まれて…

そして、13になる春に一族のおさに囚われ両親共、獄中で病気になって死んでしまった。





マリアは僕の境遇を聞いて涙を流してくれた。僕はマリアと愛し合い一線を越えた。

「私はあなたが大切なの」彼女は、そう言って僕に身をゆだねてくれた。

愛し合う僕たちは、将来のために話し合った。だが、天の一族と地の一族の長は

それを決して許さなかった。

「掟を破った少女に報いを!」

そう告げると、天の長と地の長はマリアに子供が生まれない呪いを掛けた。

嘆き悲しむマリア。僕は怒り狂い一族に戦いを挑んだ。

だが、実力は歴然。翼を奪われた僕は地に堕とされ、天へと帰れなくなった。




「ごめんなさい…カイト。私のせいで」

悲しむマリアに僕は慰めるようにキスをした。

「僕の方こそごめん。僕が掟を破って君と契ってしまったから…」

マリアは首を振り、涙をいっぱいに溜めた瞳で僕を見つめる。

僕は自分のふがいなさで胸が張り裂けそうになったが、マリアの方が呪いを受けたんだ。その心の辛さは計り知れない。本当にごめん。君と生まれて来るはずだった赤ん坊にも本当に申し訳ない。僕は自分と、両一族の長達に恨みと殺意を抱き始めていた。




そうだ。僕は突然、天の島、ヘヴンの図書館で読んだ魔導書の一文を思い出していた。地の者が呪いを受けし時、天の者が魂振たまふりの舞いを舞うべし。

さすれば、忌々(いまいま)しきその呪いから解放され、地の者は救われる…

誰が書いたのかは不明だが。おそらく、天の一族を良く思っていない者なのだろう。




本は大事な部分が無造作に破られていた。だが、これだけ分かればマリアは助けられる。

「たとえ、どんな運命が待ち受けていようとも、マリアだけは救って見せる!」

突然、声を張り上げた僕にマリアは驚いたが。悲しげな表情を浮かべている。

「カイト…何をしようとしているの?お願いだから、危険なことはやめて」

「大丈夫だ。マリア!何も危険なことなんてない。君は、何も心配することはないんだよ」

僕は、マリアに心配を掛けないために優しく言い聞かせた。大丈夫だ、マリア。

君だけは守って見せるから。


次の日、僕とマリアは儀式にのぞむため身を清めてひとけの無い森の中を選んだ。



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ここまで読んでいただきありがとうございます。

後編に続きます。

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