第27話

 驚いて彼女を見ると、息を呑む程に真摯な瞳をしていた。


「――お願い。わたしに、の仕事をさせて」


 その言葉には、仕事への想いと切なさが溢れていた。

 泣き笑いに似た表情を浮かべるお姉さんに、ぼくは何も言えなくなる。

 ――ぼくは、ここまで情熱を注げる何かに出会えただろうか。

『あの事』が頭を過ぎり、急いで打ち消す。

 ぼくには似合わない。きっと嘲笑われる。

「へえ、面白そうじゃないかい」

 横からひょいと顔を出したコユキが言った。

「つまり、ミライだけのオリジナルって事だろう?」

「ええ、そうよ! それをコユキさんにお願いしたいのだけど……いいかしら?」

「もちろんだよ! 素敵な話じゃないかい!」

「ふふ……ありがとう」

 ぼくを置いてけぼりにして、どんどん話が進んでいく。

 どうすればよいか分からずあたふたしていると、お姉さんと目が合った。

「ミライくん。どうかな?」

 改めて問いかけられて、ぼくは少し悩んだ。

「ぼくが……消えたら、もう失くなっちゃいますよ」

「……そうね。それでも、君に受け取ってほしいと思ったの」

「……どうして?」

 コユキの方が形に遺るのに――。

 そんな事を考えて、ぼくは愕然と目を見張る。

 コユキは、ずっと独りだ。ぼく達がいても、いつかはいなくなる。

 永遠に、寂しい想いを抱え続ける――?

「……? どうしたの?」

 そんなぼくの様子に気付いたお姉さんが、ぼくに問いかける。

「あ……えっと……」

 今はどう言葉にすればいいか分からず、ぼくは言い淀んだ。

 そして、お姉さんの提案をひとまず受け入れる事にする。

「それじゃあ……お願いします」

 お姉さんは、とても嬉しそうに微笑んでくれた。

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