第25話
「……なんでよ!?」
猫が喋った事に一瞬驚いたお姉さんだったが、すぐに交渉を再開させる。
はや……っ!?
むしろ、こっちが驚いてしまった。
「コユキに負荷をかけるからだよ。何より、“掟”に反する」
「掟?」
耳慣れない単語に、思わず言葉を挟んでしまう。そんなの、初耳だ。
コユキを見ると、珍しく渋面で相棒を見下ろしている。
ぼくと目が合うと、困ったように微笑む。
「死神には、いわゆる“掟”があってね。まあ、心得みたいなものさ」
「……物は言いようだね」
文句を言うミアの顎を撫で、コユキはしばし考え込む。
「そうだねえ……一つだけなら、なんとかしてやれるよ」
「一つだけ……」
その言葉に、お姉さんは神妙な面持ちで呟く。
コユキに負荷がかかると聞いた以上、軽い気持ちで頼めないと考えたのかもしれない。
「お前さんが本当に必要と思えるものなら、あたしは協力してやる。――だから、慎重に考えておくれ」
「……わかったわ。コユキさん、ありがとう」
それでも助力すると約束するコユキ。お姉さんはしっかりとその目を見据え、感謝を告げた。
「それから、聞いておきたいのだけど……それは、実在しないものでも構わないの?」
「ああ、もちろんさ。お前さんがしっかりとイメージしてくれればね」
自分の頭をつつき、コユキは茶目っ気たっぷりにウインクする。
その仕草がおかしかったのか、お姉さんは声をあげて笑った。
その光景を眺めながら、先程ミアが言っていた事を思い出す。
『掟に反する』って言ってた。『物は言いよう』とも。
そして、脳裏に蘇るあの言葉。
『――ボクは、コユキが失くしたモノだよ』
コユキは、何かを隠してるんじゃないか。
なんの為に――たぶん、ぼくの為、なんだろうな……。
そんな疑問を抱いても、ぼくはまだ前に進めずにいる。彼女の好意に甘える事しか出来ないのだ。
「はぁ……」
ため息をつき、天井を仰いだ。
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