第37話 思惑
ミャーギ地方の野営地で
星を眺めながら歩哨に立つハサン。
あー、綺麗だな。
昔自衛官時代も、
同じような夜空見上げていたな。
あの頃は固形燃料の暖かさに、
今回は焚き火の火の暖かさに
心を奪われ、いつしか
うつらうつらと眠かけしてしまった瞬間。
対面から、「ハサン殿」と呼びかける声。
そう、その声の主とは、
邪神アドヴァンの配下であり
センダー国の隠密でもあるシローヌである。
シローヌは話す。
実は、シローヌの心はアドヴァンの核と共に
ブローチに囚われていたのだと。
よってカンデンブルグ国王にも、
邪神アドヴァンこと宰相マンデリンにも
逆らうことが出来なかったと。
そして、シローヌは邪神アドヴァンこそが
魔王スマターを操る真の敵であると告げた。
シローヌとアドヴァンは元はトッポイ国の
海岸近くの村に住んでいた。
ところが遊び心で洞窟を探検していた矢先に、封印されていた邪神を解放してしまったのだという。
アドヴァン少年は、邪神の依代となりアヤカシと魔王を生んだのだと。
狼狽するハサンに、ロシーヌは畳み掛ける。
「かつて、存在した亜人の国
トッポイに邪神を倒す謎があります。
今は名を変えたシッポリ国に
向かってください。
あなたの長い旅が終わる重要な手がかりが、
そこで見つかるでしょう」
ロシーヌ、おまえは!
ハサンはロシーヌに語りかけようと
顔を上げようとした瞬間、
彼女の姿はそこには無かった。
邪神を倒せば、スマターも解法されるのか?
そして、アヤカシも聖騎士も、
この陰我から解法されるのか?
ロシーヌは最早邪神の支配下から
逃れているようであり、
嘘をついているとは思えなかった。
夜は空ける。
神々しい朝日と共に。
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魔王城でも、ハサンがシッポリ国の首都、
シケコム方面に向かっていることが
情報として掴んでいた。
魔王スマターは、アスタロットに命ずる。
「そなたに、聖騎士ハサン討伐を命ずる。
場合によっはトッポイの時と同じように、
シケコムも壊滅させても構わない」
きたー!やったー!
ついに私にハサン討伐を命じてくれた!
魔将軍ザンでもなく、
ダロムでもなく、私に勅命が下された。
よーし、頑張るわ。
「はは!スマター様に
ハサンの首を献上します!」
意気込むアスタロット。
邪神の欠片ではあったが
アドヴァンを退かせた
アスタロットに勝機はあるのか?
魔将軍ザンは
奴は、武力と言うより
魔法力で勝負に出るだろう。
しかし、何故だ?
何故、俺ではなくアスタロットに?
事態は少しずつ動き始めていく。
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時は戻る。
ヤマゲータ地方に入ったハサン一行。
もうここからは、シッポリ国である。
シッポリ国のヤマゲータ地方は
農作物が豊富で、
今はパンレン(梨のような果物)や、
栗や、米や小麦、サクランボ、
ブドウ等が取れる。
唯一自国の生産物のみで暮らせる国ということで『
なんて言う別名もあるくらいだ。
シケコムまでの道中にある里で、宿を借りる。
その時里長が神妙な顔持ちでこう言った。
『聖騎士様にお願いの儀があります。
この付近にある洞窟に、
最近人狼が出て旅人や、
里の者を襲うようになりました。
どうか、聖騎士様で
人狼を倒して頂けぬでしょうか』
セシアどうする?
ハサンは尋ねる。
「ハサンが承諾するなら、
アタイは従うわ。」
セシアは返答する。
人狼討伐が急遽始まるのである。
次回へ続く
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