第五章 天魔降伏編

第26話 化身の術

薄暮の空に雪が舞う。

もう冬だ。  


マーラに来て初めての冬。


ミャーギ地方は

小麦の収穫が終わる頃である。


ハサンは戻った。

このマーラの地に。


だが、これは死んでもあの世へは行けず、

召喚士が死んだ場合はアヤカシになり、

召喚士が生きている間は

何度も蘇るという呪いだった。


ハサンは思い出す。

長男と長女と過ごした

地球の人としての人生を。

 

「パパあそば」

「パパ誕生日会おめでとう」

「パパお仕事お疲れ様」

「パパ大好き」


あー。死ねないというのは辛いのかも。


いつか子供達に天国で再会出来るのか?

離れれば、それだけ募る想い。


帰りたいな。


ちょっとセンチになってしまった。

昨夜はセシアや、ジンタン、シオリが

生還パーティをしてくれた。


旨かったな。

キノコとドテチンの鍋。

出汁がよく出て、

マシカも麦酒で臭みを抜いて焼くと

本当に旨いんだ。


あったかいな。

ありがたいな。


こうして今を生きれるだけで感謝だな。


すると、温かな光が集まり、

ハサンはレベルが上がる。


聖騎士専用の魔法

『化身の術』を会得した。


天魔降伏、真言で

内なる神を開放する荒御魂の大技。


術者のイメージによリ体躯は変わり、

パワーが大幅に上がる。

断然イメージは不動明王だ。


「みんな聞いてくれ。

私は今回の復活で化身の術を会得した。

今から化身するので見ててくれ。」


洞窟の中を壊すといけないので、

一同は外へ出る。


『ノウマクサンマンダー、

バーザラダンセンダー、マーカロシャーダー、

ソワタヤウンタラターカンマン!!』


印を組み真言を唱える。

まばゆい光と共にハサンは、

不動明王へと姿を変える。


炎のような赤白いソウルパワーが身体から溢れ出ている。

躯体はハサンの時より大きく筋力が増し、額には神眼と言われる第三の目が開いている。

赤い髪には靡き、身体は青く変色している。


そして口元には牙が生えて、息吹と共に自らの神を仏を内在化し、化身する。


三鈷剣は力を増しさらに

青白いほのおまとうのであった。


「この身体の状態で

波動スラッシュしたらどうなるんだろう?

みんなやってみてもいい?」


軽くねー。

なんて笑ってみていた皆も


ハサンの振る力の増した三鈷剣の

一振りの波動スラッシュは、

向かいの山の先端を切り崩した。


いっ!!!?


こりゃすげー、……。


ハサンは元の姿に戻ると

反動で気を失ってしまうのだった。


セシアとジンタンは言った。

「この技は切り札ですね(汗)」


明日は領主ウェーダー卿に会いに行こうか? 

どうせ利用されるのが目に見えているが、

ウェーダーの本心を探ろう。


セシアとジンタンは、ハサンを寝かせ、

明日の作戦会議をするのであった。 


その矢先、洞窟の外に近い岩肌の影が動く。

「誰か!」

ジンタンは誰何すいかする。


影は逃げようとする。

セシアは金縛りの術で止める。

間髪入れずに、ジンタンは小太刀を投げる。

シオリはヒババンゴの姿となり襲いかかる。


影は瞬間捕縛呪を破り、

小太刀を跳ね洞窟から逃げていく。

「誰かが我らの動向を探っている。」


恐らく王の手の者であろう。

長居は禁物だ。

敵はアヤカシ以外にもいる。

気を引き締める一同だった。


次回へ続く

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