第23話 熊のレオナルド
セシアとジンタンは
朝食を食べながら作戦を寝る。
そもそもが固いパンなのに、
カチコチになるまで軍議を開く。
あーでもない。
こーでもない。
眠らせるのはどうだ?
火なら効くのではないか?
所詮はエテ公。
知恵比べで勝つ。
だが、一歩間違えば
性獣の餌食。
文字通りボロボロになるまで犯され、
最終的に臓物を出されて食われるなんて想像するだけで、食欲を失くす。
「セシア様。正攻法でいきましょう。
私は剣で挑みます。
後方からセシア様は、炎の魔法と
眠りの魔法で援護願います。」
ジンタンが提案する。
それが、妥当か。
エテ公は眠りの呪文で寝ると相場が決まっている。サルは人間様には勝てないのだ。
いや、待てよ。ここは魂の世界。
見た目や種別でレッテルを貼らない方が良いな。
用心の為、煙幕弾も用意しよう。
戦況が不利となれば、いつでも逃げれる準備をするのだ。
マヨールの街を出て、
深い森=マヨールの森の奥へ進む。
奥へ奥へ、段々と薄っすらと日も差さなくなり、辺り一面が木で覆われている。
ウェーダーが行った魔獣ヒババンゴの住処は、
この先である。
あと数百メートルで、到着するか否かのところで大きな影が俺達の前に立ちはだかった。
な、何だ?!
獣だ。熊?いや違う。
目の色が赤く、その体躯から
アヤカシだ。
大熊のアヤカシ=レオナルドが現れた。
なんとヒババンゴ戦の前に、
強敵が現れたとジンタンは率直に思った。
セシアが言っていた。
炭焼きをしていた頃に、お父さんから、
『ドテチンはまだしも、レオナルドが出たら
後退りしながら距離を取って逃げなさい』
そう言われていた。
それくらいレオナルドはヤバイ奴だという。
レオナルドのパワーはドテチンの比ではない。
パワーだけなら、
あの魔将軍ザンに勝るとも劣らない。
「グ、ググォォォ」。
レオナルドは立ち上がった。
身の丈3メートルはあろう巨体。
でかすぎる!
セシアはひるんだ。
その時、一陣の風が
レオナルドの横をかすめる。
その瞬間、レオナルドの巨体から
血飛沫が上がり、
レオナルドは、ゆっくりと前のめりに倒れた。
理解するのに一瞬遅れる。
「い、一撃……。」ごくっ。
息を呑んだ。
そう、その風のような剣捌きは、
タンレンの息子ジンタンだった。
颯爽とレオナルドの眼前に立ちふさがると、
目にも止まらぬ居合で厚い
レオナルドの皮膚を
いとも簡単に両断するのである。
剣を持つと、あの優しい顔から
逞しい顔つきに変わる。
ピ、ピクッ。
レオナルドはまだ息があった。
止めを刺そうと身構えるジンタン。
「ま、待って!殺さないで」
セシアはレオナルドに回復魔法ヒールを施す。
「セシアさん、何をしてるんですか!」
驚くジンタン。
レオナルドは息を吹き返して、
また立ち上がる。
「待って!あなたお腹空いてるのでしょ?
私、マシカの生肉があるの!」
※マシカ=鹿のような動物
レオナルドの顔は怒りの形相から、
だんだんと優しい顔になって、
ハッハッと舌を出している。
「ありがとう。実はお腹が空いて、
気が立ってたんだよ、ごめんね。」
モフモフと、生肉をかじりつくレオナルド。
セシアは昔小さい頃に、アヤカシのレオナルドではなく、熊を飼っていた。
野生の子熊で母熊の姿は無い。
捕獲されたか、殺されたか、
育児放棄で捨てられたのだろう。
父は「今夜は熊鍋だな!」なんて
喜んでキノコを取りにいったが、
セシアは最終的に両親に哀願して、
熊を飼うことを許してもらった。
熊の名前はアカカブト。
アカカブトとの生活は
掛け替えのない物だった。
だが、アカカブトは野生の熊。
既に3歳の頃には、
身の丈2メートルを超えるのであった。
ある日アカカブトとの生活は終わりを迎える。
里に降りて農夫を襲ったのだ。
村長は、会議の結果アカカブトを
魔法による術殺することにしたのである。
ところが、既にアカカブトの姿は消えていた。
きっと森に帰ったんだ。
セシアの父はそう諭した。
実はこのレオナルドは、
アカカブトの息子がアヤカシとなった姿なのだが、この頃のセシアは知る由もない。
「じゃあ、あなたは今日からレオちゃんね。
アタイが呼んだら助けて。」
契約の印をさっと結ぶセシア。
セシアはレオナルドの召喚が
出来るようになった。
これはいい!
魔獣ヒババンゴ戦でもきっと重宝するだろう。
そして二人の経験値は大きく上がる。
ステータスの大幅な上昇と、
セシアは洞窟やダンジョンから
地上に脱出出来る魔法
『ソトデル』を覚えた。
しかし、ジンタンがここまでできるとは。
ジンタンが、生い立ちを少し話してくれた。
次回へ続く
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