第13話 ドテチンと目が点

王都センダー。

数百年栄えてきた水の都と称される

古代都市である。


王であるカンデンブルグ家の祖

カンデンブルグ1世は、

かつては聖騎士であったとも言われている。


ミャーギ地方

ヤーマン地方 

ワーテル地方

をセンダー王国が治め、

その首都が王都センダーである。


王都センダーの宰相

マンデリンは、カンデンブルグに進言する。


「聖騎士を、ウェーダー卿側に

従いたら不利です。

なんとしても、こちらの陣営に入れなくては。


しかも影からの情報によれば、

今回の聖騎士ハサンは

イレギュラーで召喚されているためか、

能力は未知数。

はたまたウェーダー卿に付くぐらいであれば

ほふる事もやむ無しかと」


カンデンブルグは頷く。


「朕も同じ事を考えていた。

聖騎士がどういう行動を取るかで

マーラの行末は、

我々の国の衰退も決まる」


セシアはミャーギ地方を治める

領主ウェーダーの勅命を受けた

オーサキ村の村長から

聖騎士召喚の命を受けた。


しかし、三要素の一つであり

『自己破産』の条件を満たさないにも関わらず

聖騎士を召喚してしまった。


そして鼻が短くなって、

さらに本来であれば回復魔法が使えるはずの

聖騎士が回復魔法も毒耐性も無く、

普通の下位アヤカシの毒により

聖騎士ハサンは死の淵を彷徨っていた。


……と言うのが前回までのあらすじ。


セシアは言われたことをやっただけ。

だから、領主ウェーダーの本意を知らない。

国家転覆を狙うと言われているウェーダー。


ウェーダーの真意を未だ一行は気づかない。

それよりも、大きな敵意が近づいているとは、

この時の二人は知る由もなかった。


セシアとハサンは、

先ずはレベル上げをしようと、

付近の洞窟を散策してレベル上げを図る。


しかし、レベルが幾分上がった為なのか、

二人の経験値は思うように上がらなかった。


そして散々冒険者達に探索し尽くされた

オーサキ村の近くの洞窟には、

何もアイテムが隠されているはずもなく、

徒労に終わったと言う初のダンジョン探索であった。


ハサンは考える。

何故、あの時感謝して経験値が

豊富にゲット出来たのか?


もしかしたら、この世界は

ドラゴンクエステトラのような

王道ロールプレイングゲーム

のような設定ではなく、

レベルや経験値を上げるのに

別な方法があるのではないか?


そう考えるようになった。


そして洞窟を出ようとしたその時、

あのイノシシに似たアヤカシ。


『ドテチン』がハサンの前に立ちはだかった。


ドテチンのパワーは半端ない。

召喚されて3倍のパワーを誇る

ハサンでさえも、

その強力な突進力により

反対側の壁にふっ飛ばされた。


『波動スラッシュ!』

三鈷剣を振りかざし

波動を込めた斬撃波を繰り出す。


しかし、ドテチンには効かない。


今の武器は、波動スラッシュと、

最大攻撃『ミステリアンウェーブ』だ。


こうなったら俺の最大限の技、

ミステリアンウェーブを出すしかないか?


そう考えたハサンだが、

ふと思った。


ドラゴンクエステトラ5では、

モンスターが仲間になった。


もしかしたら、

アヤカシと話ができるのではないか?


『目が点』と言う悪魔のゲームも、

確か話が出来た筈だ。


意を決してハサンはドテチンに話しかけた。


「ごめんよ、本当は敵意は無いんだ。

ビスケットあるんだけど食べるかい?」


ドテチンは、

「食べる。ありがとう。

あなたは、言葉がわかるのかい?

実は、とってもお腹が空いていたんだ。

お腹を空かせた子どもたちに

お乳も呑ませれなくてね」


そうか!アヤカシとは言葉が通じるんだ!

これはいける!


ハサンは言った。

「そうだったんだ。それなら、

この薬草とクコの実を食べるといいよ。

きっと乳の出も良くなるよ」


丁度オーサキ村で買った薬草と、

クコの実をドテチンにあげることにした。


セシアは驚いて声を上げる!


「貴重なクコの実と薬草をアヤカシにあげるなんて! ハサンあなた何してるの?

アタイはね、そんな事のために

貴重な薬草を買ったんではないよ」と。


セシアの話を無視して、

クコの実と薬草をドテチンに食べさせた。


ドテチンはありがとう、ありがとうございます

と後ろを振り返りながら、

洞窟の奥へ姿を消した。


すると、なんと大幅に経験値が上がった。

矢張りそうだ!


感謝するのと、感謝されるのを心がけたら

大幅に経験値が上がった。


すると、アヤカシは本当に倒すべき魔物なの?


ハサンは疑問をもつ。

レベルは6に。聖騎士ハサンはヒールの魔法を覚えた。

念願の回復魔法だった。


次回へ続く

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