2章 side凛花

第1話 始まりは事故にて 凛花side

高校の入学式の日、私―朝陽凛花あさひりんかは幼馴染の霧野蒼と、中学からの友達の上坂翔斗の3人で帰宅していた。

この後、みんなでショッピングする予定だ。

そんな時、蒼がスマホを見て何か難しそうに考え込んでいる。

チラッと覗いてみるとネットニュースで、”夢現症候群”について調べている様だった。

”夢現症候群”―それは数年前に突如として現れた奇病。詳しいことは知らないが、治療法がたった一つしか無く、治った症例もまだいない恐ろしい病気だそうだ。

そんなことを考えていると、

「どうした?蒼。そんな考え込んでー」

翔斗がいきなり蒼に声をかけた

「いや、別に。この後何買おうかなと考えているだけだよー」

「そうか、ならいいんだ。もし何か悩んでいるのなら言ってくれよ。」

「大丈夫だよ翔斗。だから気にしないでくれ。」

翔斗はこういう細かいところまで見ていて、気遣いもできる。

そのためみんなからの信頼も厚く、中学のときは生徒会にも所属していた。ついでにイケメンで、もうこれ以上ない完璧ぶり、らしい。

私も翔斗に続けて蒼に声をかけた

「何かあったら、私にも相談してよね!」

「ああ、頼りにしてるよ、凛花。」

そして、蒼がいきなりボソッと呟いた

「お前ら完璧超人かよ」

そして、私と翔斗が同時に

「「蒼だけには言われたくない」よ」

と言う。ハモった。

そして、翔斗が

「いや、だって中学の時お前生徒会長だったじゃん。信頼度も俺たちとは段違いでさ。しかも、成績も学年でぶっちぎりで1位だしさ」

と言った。

そう、ああ見えて蒼は元中学生徒会長なのである。小さい頃から何かと正義感が強くて、まとめ役が得意だったため、蒼、私、翔斗を中心とした生徒会を作り学校を支えていた。そして、私の初恋の人。私は優しい彼に惹かれたのだ。

「高校でも生徒会に入るの?」

と、私が尋ねると、蒼は

「機会があったらやるかもなー」

と返してきた。すると、翔斗が

「案外今の生徒会からスカウトが来たりして。蒼って他校でもかなり有名だったし。」

「いや、流石にこの高校まで伝わっているとは限らないでしょ。」

と蒼は返した。案外伝わってるんじゃないかなーなんて思いつつ、私たちは帰っていると、蒼の目線が一人の女子生徒を捉えた。彼女は確か今日の入学式で見かけて、同じクラスで、、、名前はそう、瀬川紅せがわこうだったはず。物凄い美少女で、クラスの男子たちがうるさかった覚えがある。

そんな彼女が何でこんな所でボーッとしてるんだろうと思いながら遠目で眺めていると、普通車が彼女目掛けて突っ込んできたのが見えた。

「危ないっ!」

蒼はそう叫んで、彼女の方へ駆け出した。そして、彼女を庇うように事故に巻き込まれた。

「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーッッ」

私は声にならない悲鳴を上げた。

「おいっ、蒼、返事しろっ、しっかりしてくれーーー!」

隣では同じように蒼のもとへ駆け寄って、必死に蒼の名前を呼ぶ翔斗の姿が。

それから程なくして、救急車のサイレンが聞こえてきた。この惨事を見た周りの人が通報してくれたらしい。

私と翔斗は、蒼の乗っている救急車に同乗して病院に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る