ウォーミングアップ

 ↵


 人狩りいこうぜ。

 リンピアといっしょに盗賊討伐へいくことになった。

 この世界の犯罪者は2つに分けることができる。街の中にいる犯罪者と、街の外にいる犯罪者だ。このふたつのうち、アーマーを使って犯罪をするのは外にいる奴らのほうだ。アーマーを使って加害すれば簡単に人が死ぬので重罪になり、特定されて賞金がかけられるからだ。

 戦闘モードのアーマーからは固有のノイズが発生している。このノイズパターンはジェネレータとドライバーズドメインに起因し、ノイズデータさえあればアーマーと操縦者を特定することが出来る。もしアーマーを犯罪に使っても、周囲の人間の記憶回路やアーマーの履歴にデータが残っていればすぐに特定され懸賞金がかけられる。

 このためアーマーを使った犯罪者は街に入れず、荒野で暮らすことになる。

 荒野に暮らす犯罪者……野盗たちは不安定な土地に拠点を構え、街のあいだを行き来する商隊などを襲う。どうせ治安組織に捕まったら死刑なので、徹底的に奪い、殺し、壊し尽くす。被害者が生き残ることはほぼ無い。いや、生存者は奴隷にされるので死んだほうがマシだ。

 警察組織はなにをやっているのかというと、彼らは街の中の犯罪者へ対処するのに忙しい。

 では街の外にいるアーマーで武装した凶悪犯罪者を掃除するのは誰か……それはディグアウターの役目になる。


 ↵


 リンピアといっしょにフライトブーストで出発。戦闘モードは街からやや離れた平地──『沖』に出てから起動する。沖とは流動する荒野を海に見立てた言い方だ。ちなみに本物の海はこのあたりに無く、海という概念を知らない住民も珍しくない。


『こちら赤兎セキト。フライトモード、巡航速度。操舵同期を申請する』

「同期許可。進行方向、南西49」

『よし、いいぞ』


 自分で飛び、僚機の操舵も預かるのは初めてだ。反重力フィールド内は質量が軽減されるため独特のフワフワ感がある。タマもヒュンする。だがシミュレーションと練習は十分やってきたのでなかなか順調な飛行。リンピアも文句ない様子だ。

 今の俺はちゃんとコクピットに入り、カメラからの視覚情報を見ながら操縦している。戦闘モード中にドライバーズドメイン形成のために流れ込んでくるナノメタルは遮断できるようになった。視覚も回路を構築できたので問題ない。頭部カメラからの映像情報を処理し、シートの前に仮想ディスプレイがあるように視覚投影している。


 目的地となる盗賊拠点の予想位置は、飛べば数十分もしない場所だった。

 それもそうか、街からあるていど近くないと、このだだっ広い荒野から獲物を探すことになるんだし。


『……あいつは臭いな。ジェイ、ソナーはなて』

「あれか。ソナービーコン、ポチッとな」


 流砂のなかに浮かぶ、数キロサイズのデコボコした岩。なかなか大きくて安定しているように見えるが、少し大きな龍震でもくれば保証はできない。普通の人間ならこんな不安定な足場に頼ろうとは思わないが、盗賊にとってはちょうどいい隠れ家になる。

 ソナーは特殊な音波を発し跳ね返ってきた音波を解析することで周囲を探査する。実際には音波以外にもいろいろ組み合わせているようだ。最下級以外、ほとんどの頭部ユニットならデフォルトで備えている機能だ。

 予想通り、アーマー数機と建築資材のような人工物の反応が返ってきた。被害報告から予測された座標とも一致する。


『黒だな。ソナーは敵にも気づかれている、急襲するぞ。私はバックアップに回ろう』

「オーケー。フライトモードオフ。ロックフェイス、降下」


 反重力フィールドが消失し、機体が重力にひかれ始める。

 ブースタを噴射して調整しつつ、岩場に着陸。

 同時にコクピットハッチ越しにナノメタルを展開する。


《錬銀術//表面装甲:軽量構造》


 着地の衝撃で飛び散った岩をナノメタルが絡め取り、機体表面へと並べ、鎧へと変えていく。

 岩の怪物──まるでゴーレムのような姿。ロックフェイスの戦化粧だ。


「突撃する」


 背部追加ブースタを全開し、爆進。

 岩場の影にはジャンク街のものに似たゴチャゴチャした小屋があった。

 アーマーが膝を立てている。あわてて起動しているところのようだ。ソナーを感知して警報が鳴るようになっていたのだろう。


『クソ! 敵だっおまえらっ!』


 ジェネレータのノイズパターンを識別……確定。こいつがターゲットだ。


「まず1機」


 俺はごくシンプルに両腕のライフル砲を二丁撃ちした。

 ロングソードライフル──この小銃型兵器はそんな名前で呼ばれている。多くの殺人機械マーダーが体内に組み込んでいて、多くのディグアウターが使用し、多くの街で売買できる武器。弾薬もほとんどの街で補給できる。基本中の基本にして優れた汎用性のある武器だ。改造パーツも幅広く存在し流通している。

 左腕のライフルはニールさんのおさがり。ニールさんが持っていたときはブレードパーツがついていたが、歪んで壊れていたため外している。

 右腕には斧パーツと補強板のカスタム済みを装備している。右利きなので右手が重そうなほうがしっくりくるのだ。

 ライフル二丁を構えて照準。銃口の向いている場所が十字マークでディスプレイに現れ、敵アーマーと重なる──この照準はアーマーのFCS(火器管制システム)ではなく俺の体内で計算回路が処理しているものだ。最初は負荷が高いと感じていたが、慣れた。

 敵は静止しているので移動予測をするまでもない。

 銃口が正しく向いた瞬間、即発砲した。 

 ガスガスとロングソードライフルの砲弾が命中していく。

 すぐに装甲がほとんど剥げた。盗賊たちのアーマーは装甲が薄い。ほとんどが最下級のアーマーに鉄板をくっつけただけだからだ。

 街で整備することができないのでナノメタルによる自己修復に頼るしか無いのだが、それには最下級のアーマーのほうがコスパが良いらしい……機体性能のせいで死んだら意味ないだろとは思うが。


『クソッ! おい助け……ガァッ!』


 コクピット部分を貫通。最初の盗賊アーマーは満足に戦闘姿勢をとれないうちに沈黙した。この垂れ流し音声通信、敵の撃破確認には良いな。


『クソ! 死にさらせァ!』

 

 起動してきたもう2機目が銃撃してくる。

 しかし狙いがお粗末だ。ファントム☆ステップ☆をするだけで砲弾がそれていくガッションガッション。ロックアシストに頼り切りだなガッションガッション。そんなんじゃ一発も当たらないぜガッションガッション。

 またライフル弾を数発撃ち込むだけで終わった。


「2機目撃破」


 っ!?

 砲撃──

 ステップブーストで避ける。足元地面に着弾した。


『ジェイ、崖上だ』


 リンピアの助言。岩場の上の方にアーマーがいた。

 部分的に最下級ではないパーツがある。腕がややゴツい。そして武器はハルバードライフル。どうやらマークスマン的な機体のようだ。見張り役として高所にいたらしい。見張れてないけど。

 ハルバードライフルは、ロングソードライフルと同じく普及している武器だ。やや長身で連射力や取り回しが下がるが、威力と精度が高く狙撃銃のように用いられることもある。


「突撃する」

『突撃多いな……』


 銃撃で倒してもよかったが、節約する練習をしてみよう。武器にも修復機能はあり、ポッキリふたつに折るとかいうバカアホマヌケな事をしない限りは大丈夫だし、ロングソードライフルの弾薬は安いのだが……癖になってんだ、修理費弾薬費を抑えるの。


『クソッ! 当たれやァ! クソァ!』


 ステップブースト、ステップブースト……避ける、避ける。

 ステップブーストとは、ブースタの燃焼剤を一時停止して溜め、一気に燃焼噴火することで短距離を高速移動する技だ。ヒュンッ、というかんじに格好良く動く。攻撃を避けるための基本機動である。

 もちろん前進にも使える。

 岩場をヒョイ、ヒョイと登ればもう至近距離だ。


『ク、クソがぁ……』

「クソクソ言い過ぎ、お下品ですわよ」


 右の斧付きライフルをフルスイング。

 一発で胴体を陥没させた。

 とどめにそのまま1発だけ射撃。反動で斧も抜ける。


「あとは?」

『終わりだ』


 あっけなかったな。おクソ盗賊団、壊滅だ。

 正直、この世界の野盗は基本的には雑魚だ。補給が厳しいので最下級アーマーばかりに乗っているのもあるし、そもそも腕が立つ奴ならディグアウターになって稼ぐ。

 決して格上とは戦わず、護衛の少ない商隊を狙って奇襲をかけるのが奴らの手口だ。実弾砲をぶっぱなすだけなら最下級でもできるので、火力だけは侮れないものがあるが、防御力はこの通り。化け物とやりあうディグアウターの敵ではない。


『ジェイ、さっきやっていた動きはなんだ?』

「ん? どれだ?」

『2機目の銃撃をそらした動きだ。妙な……妙な動きをすると、それだけで銃弾がそれていた』

「ああ、ファントム☆ステップ☆のことか」

『ふぁ……?』


 ファントム☆ステップ☆とは、ロックアシスト機能を逆手にとった回避方法のことだ。

 アーマーのFCS──火器管制ファイアコントロールシステムは相手の移動方向を予測して狙いをつけてくれる(いまの俺は自前で処理しているが)。これは現在時点での速度・方向で等速直線運動した先を狙うものであるため、その場で反復横跳びなどをすると混乱させることが出来るのだ。応用としてチューチュートレイン円運動ダンスができれば完璧である。ただし動きは滑稽なことになる。

 ちなみに発音はファントム↑ステップ↑↑だ。アホらしいが動きもアホらしいので絶妙にマッチしてこの呼び名が定着していた。 


 リンピアに踊る俺を狙わせてみた。ガッションガッション


『なるほど……これはたしかに……』

「手動でド真ん中に撃たれたら終わりだから、ロックアシストに頼り切りの雑魚相手の戦法だけどな」ガッション ガッション

『まあ動きと名前はふざけているが有効だな』

「失礼な。由緒正しき伝統芸能だぞ。ほらいっしょに、ファントム☆ステップ☆」ガッション ガッション

『撃っていいか?』

「ファントムッ☆!! ステップッ☆!!」ガショガショガショガショガショ!!!!


 リンピアは撃鉄をオフにしたライフルをこちらに向けてロックオンした。俺のコクピットにアラート音が響く。撃たれないことは分かっているが、必死でステップ☆を踏む。

 しばらく俺のダンスを照準する練習に実験に付き合った。


 リンピアもファントム☆ステップ☆を試したが、ぎこちなかった。


『ふぁ、ふぁんとむ ステップ!』

「もっと激しく! 惜しみなく!」



 ドライバはアーマーの一挙手一投足を直接コントロールしているわけではない。ドライバのやりたい動きをシステムが読み取って解釈し、有効な機動をアーマーが再現する。ゲーム内でアーマーにガッツポーズをとらせることはできなかったように、システム内に存在しない動きをさせることは難しい。戦闘中に無意味に見えるダンスを踊らせるには慣れが必要なようだ。ドライバーズドメインによる操作適性の差もあるだろう。もっと練習すればシステムがマニューバとして記憶してスムーズになるのかもしれない。

 リンピアはファントム☆ステップ☆のこともロックオンアシストの原理についてもよく知らなかった。それどころか自動照準と手動照準の切り替えもよく自覚していなかったらしい。なんとなく照準に補正がかかること、動き回れば狙いがつけにくいことは分かっていたようだが。アーマーが身近すぎるとそんなものなのかもしれない。


『ちょこまかと素早い敵を相手にする時は、集中すると手動モードとやらに切り替わっていた気がするな。あとは気合だ』


 そっちのほうがすげえな。


 ↵


『よし、ここの座標は記録した。次へ向かうぞ』

「了解」


 根城になっていた拠点内を中まで調べることはしない。位置記録だけとってギルドに報告すると、あとで回収屋がやってきてキレイに回収してくれる。先日の船長のようにデカい船を持っているような回収屋ではなく、今のサジたちくらいの、作業用アーマーを乗り回すような回収屋の仕事だ。金目の物の売却までやってくれて、手数料を引いたあとの金が入ってくる。便利だ。

 格納スペースに余裕があるなら漁って持ち帰るほうが利益は出るが、あまり気持ちのいいものではない。汚くて荒れているし、犠牲者の死体があるかもしれないからだ。そのあたりの処理もギルドに任せたほうが良い。


 この世界の賊は過激化する傾向がある。荒野でアーマーや生活資源を奪われれば、人は生きていけない。そこらの道ばたで財布をカツアゲするのとは訳がちがう、ほぼ殺すようなものだ。治安組織に捕まったら確実に死刑なので、盗賊たちはあらゆる悪業に手を染めている。 

 盗賊に捕まった人間は悲惨なことになる。もしコアとして回収されることができても、長期間の記憶消去設定をしたうえでの蘇生が推奨されているらしい。

 幸いというべきかどうか……今回はコアの反応は無かったため、生きている人間は居なかったようだ。


 そもそも今回の主目的は、俺とロックフェイスの習熟運転だ。次の練習台を探すとしよう。

 荒野の平和推進と小遣い稼ぎ、そして俺の練習を同時に進めることが出来る。盗賊狩りバンザイだ。


 ↵


『かなりの成果になったな。……やはりジェイは優秀なドライバだ』

「照れるぜ」


 結局、1日のあいだに盗賊の拠点を3つも潰した。後半はリンピアも戦闘に参加して連携を確認した。慣らしとしては十分なものになった。

 今の時期はちょうどこれくらいの小粒なグループがぽこぽこと生まれる季節だったようだ。少し前に大きめの盗賊団が壊滅させられていて、その残党だったらしい。

 盗賊は雑魚ばかりだった。腕があるならディグアウターとして稼げば良いのだから当然なのだが。でもまあまあ楽しかった。弱いCPU相手に新装備構成の試し撃ちテストをする気分だ。右武器変えてテスト、ブースタ変えてテスト、重量だけ変えてテスト……何時間もかけてアセンブルにこだわるのは楽しかったな。今は豊富な装備はないので、おもにアーマーの挙動を検証した。全身のブースタを意図的にズラして高速スピンしたりして遊んだ、楽しい。

 

盗賊の懸賞金や回収される物資の換金予想額をあわせると、それだけで俺のやってきたバイト代合計に匹敵するほど稼ぐことがができた。まあ2機のアーマーを使って、命の危険のある戦闘をして、これくらいは稼げないと割に合わないか。

 生命反応のあるコア2個の発見もした。まだ停止期限まで余裕があったので、回収屋に任せることにした。そのほうがいろいろと面倒が無い。盗賊の懸賞金と比べると低額だが、ギルドから手当も出るはずだ。


『今日の戦闘をふまえて、なにか欲しいものはないか? おまえには装備を整えてもらわなければならない』

「うーん、じゃあ格納できる小型ブレード。リンピアも持ってるようなやつで」

『よし。注文しておこう』

「あと、できるだけ小さい武器ってあるか? 拳銃型の兵装とか」

『あるぞ。それも注文だな』


 今日の稼ぎは半分は俺のものなので素直に買ってもらう。

 俺の現在の武装はライフル砲2丁だけ。背面武装ポイントは追加ブースターが占めているからだ。だがライフル二丁撃ちはだいたいの状況をなんとかできる。それが効かないような硬い相手には近づいて殴るか体当りすればいいだろう。

 完璧とは言えないが、正直そこまで不満は無いので、俺の趣味としてお守り用ブレードを希望した。リンピアも同系のものをひとつ格納しているので、なにかあったとき使い回すこともできるだろう。拳銃のほうは思いついたことがあるのでオマケで。

 ちなみにリンピアの赤兎セキト機の装備は、軽量カスタムしたロングソードライフルと小型グレネードランチャー、それに格納小型ブレード。状況によってグレネードとブレードを持ち替える。

 こちらも背部武装は無い。以前はレーダー強化システムと軽量シールドを装備していたが、遭難から帰還したとき売ってしまったらしい。攻撃力はそのままだし、軽量高機動型のアーマーなので現状これで良いようだ。



 ジャンク街に帰還。ディグアウターギルドへ報告に来た。


「これはリン様。もう処理していただけたのですか?」

「ああ。それと、こいつのディグアウター登録も頼む。私のチームメンバーになる。討伐数を計上しておいてくれ」

「はい、紹介登録ですね……まあジェイ様。ついにアーマーでお仕事ができるようになったのですね、おめでとうございます。これからはディグアウターとしてもよろしくお願いいたします」

「どうも。よろしくお願いします」


 ディグアウターは何でも屋だ。遺跡から発掘品を見つけてくることが本業という認識はあるが、アーマーを使った仕事ならなんでもする。実際ディグアウターギルドには多種多様な仕事が集まってくる。運送専門で戦闘はしない者や、逆に盗賊狩り専門で遺跡に入らない者などもいる。前世持ちの言う『冒険者』というやつとそっくりだな。剣と鎧をロボットに置き換えたのがディグアウターだ。実際冒険心はある人種だし。

 そういうわけで盗賊討伐も立派にディグアウターとしての功績になる。


「こちらにお手をどうぞ」


 受付の機械に手をかざすと、ナノメタルが反応する感覚。これで個人認証や撃破記録などが読み取られるらしい。アーマー操縦中は体内ナノメタルと接続しているので、戦闘記録は人間にも渡されている。そのデータが受付で解析できるようだ。


「はい、登録完了いたしました。初登録はE級ライセンスからのスタートとなります」


 おお、ランク制度だ。なんだかんだテンション上がるよなこういうの。目指せAランクってやつだ。もしかしたらSランクもあるかも。でもSSSランクとかまであるちょっと違うなあって思うタイプだよ俺。あとGランクって逆に強そうだよね。


「一番上は何級?」

「A級だな。S級もあるが、これは殿堂入りとか伝説的という意味だ。現実的に運用されているものじゃない」

「てことは5段階か。リンは何級?」

「私はB級だ。中堅から一流手前のディグアウターという扱いだな」

「おおー」


 リンピアは胸を張って自慢げだ。かわいいなこいつ。


 ↵


 ギルド隣の飯屋で祝勝会のようなものを開いた。

 俺はようやく本格的にディグアウターとして活動できるようになる。記念すべき出発の日だ。考えてみればギルドに登録って物語序盤でやることだよな。時間がかかったな。

 ……いや、俺は傭兵だけどね? まあ傭兵っていうのは依頼されればなんでもこなす存在なので、必要とあらばディグアウターとしての登録もこなしてみせるのだ(建前)。はやくランク上げてぇ~(本音)。


「そろそろおまえにも説明しておこう。なぜこうも登録を急いだのか。大きな仕事が入ったからだ。おまえにも協力してもらうことになる」


 リンピアは腕を組みながら説明した。


「共同作戦の参加依頼があったのだ。最近、マーダーが増えていただろう。でかい群れが来て桟橋が破壊

されたり、あの漁り場の街にも想定より多いマーダーが住み着いていたり」

「あー、やっぱりちょっと増えてたのか」

「その発生源が特定された。ひと月ほど前の龍震で、生きている未確認遺跡が発見されたらしい。マーダーの生産施設を破壊しなければならない。手つかずの遺跡は宝の山だが、危険も大きい。今回、ギルド主導で大規模なアタックチームが編成されることになった」

「おおー」


 なるほど。俺の機体が間に合ったのは確かにタイミングが良い。


「我々もメインダイバーとして参加する。稼ぎ時だぞ」


 リンピアは爛々とした瞳で宣言した。

 おお、こうしていると格好良い。成人女性という話もそこそこ信じようかなという気持ちになる。少しだけ。


「ちなみに他のメンバーは全員B級以上だ。ジェイはB級の私の相棒ということでねじ込んだ」

「マジか。じゃあ頑張らないとな」

「……あまり私に恥をかかせるなよ」

「そりゃあもう。約束してみせよう。どんな手を使ってでも立派に活躍してみせると」

「それが心配だと言っているんだ……」

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