第11日目 1月30日

 その花の香りを鼻腔が覚えている。記憶にない懐かしい香り。

 人生で初めて香水売場に入りその香りを探す。花の香りを再現したというその店にそれはあった。

 同じ香りが背後からする。振り向くと泣き顔の見知らぬ女性が嬉しそうに呟く。

「無事でよかった」

 僕はいったい誰?

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