第40話

インパクトのあるタイトルとはなんだろう。

童貞。


悪くない。さいごの句読点まで入れるとなんだか。

完全犯罪。


と書かれた本屋に積まれた本のようだ。


悪者。


これは朝井リョウさんの何者を想起させて、さらにわたしたちは犯罪にうんと脅かされた妄想を共有するものだ。男が好きな言葉なんだろう。女が興味を持ちそうであったら煙たがられるような本のタイトルとは。


わたしは。


一人称がわたしなのは。男とて、興味が湧いてしまうが嫌悪を抱くものに対してなんとか安心してもらいたいと。ひらがなで入力してみた。


男性声優のファンはなにも女性ばかりではない。

大丈夫。言いたいことはわかっている。お前女だろう。だが、セイバーたる以心伝心はFateのファンだ。これは中学生の時からだ。いや、どうだろう。月姫というのも知っていた。詳しくないがまだWikipediaやpixivが好き放題にかけた時、いくらでも呼んだ気がする。奴も奴で、良作を最後まで見届けるためにゲームをプレイしたのかもしれない。そして美人薄命。こいつがまた、自分の幼馴染なのだが、幼いときの写真があの俳優の神木隆之介の子役時代にそっくりなのだ。ネットで検索すると、昔神木隆之介くんのデビュー秘話が載っており、それを読んだ自分は。性格が最悪だった。響きがいいし、いい言葉だから、今日からお前のこと、美人薄命って呼ぶことする。

と、宣言した。

果たして薄命はなんとすんなり受け入れた。


受け入れやがった!!


一人病棟に残った自分は、他の患者達と話をする。ここにいる人たちのことは書けない。なんでも書いていいわけじゃない。ただ。


つぎにスマホを触れるのは一週間後かもしれないし。二、三ヶ月か。半年後か。


スマホは取り上げられる。いまは一時的に使えている状態だ。今日は。変換が楽だ。さすがスマホ。PCもだが。


今日は2023/02/09。


後もう少しだ。現在。

さすがにこれは時間は予測変換に出てこない。 


まだ時間が三十分はある。

ここで保存にしておく。

ひとつだけひどい話を書いとく。

以心伝心と美人薄命。

あいつら二人して、退院後、自分をこの町に一人残して都心に引っ越しやがった。

それもルームシェアなんかじゃない。

手に職で正社員。寮住まい。ただし家が超近い。

三十二歳と、三十一歳。


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