第百二十二話 幼馴染フェドラート

 再び族長の家に招かれると、そこにはフェルス皇国の者と

思われる人物が一名いた。

 こちらに気づいて近づいてくる。


「あなたが話に聞いていたルインさんだね。ソンさんから

名前を聞いてピンときた所だよ。私はフェドラート。リルカーンとは幼馴染でね。

君の話はリルカーンからよく聞いているよ。補給任務で来るのが君とは聞いていな

かったけれど」

「初めまして、フェドラートさん。こちらにはベルローゼさんと

一緒に来る予定だったのですが、道中竜巻のような砂嵐に見舞われてしまって。

ベルローゼさんが竜巻に吹き飛ばされたのをみました……俺たちはスナジゴクに

飲まれてしまい、砂漠の地下に落ち、先ほどようやくここへ辿り着いたんです」


 やはり補給物資受け取りの人もベルローゼさんの行方を知らないか。

 ますます心配だ……。


「そうだったのですね。時間がかかっているので心配していたんですが

ベルローゼなら大丈夫でしょう。なんせ彼は強いですからね。

地下に落ちたという事は積み荷は無くなってしまいましたか?」

「いえ、こちらにあります」


 そういうと、パモから出しておいた積み荷を見せる。

 無傷で無事だ


「ほう。どうやったかは存じませんが、砂嵐に遭遇し地下に落ちても

無傷で積み荷を届けるとは。フェルドナージュ様にしっかりと

報告させて頂きましょう。有難うございます。任務完了です」


 一先ずフェルドナージュ様に頼まれた件は成功だ。 

 だがここに来た目的は事のついで。 

 この人物こそ俺を補給任務に選んだ理由なのだろう。


「フェドラートさんはリルとサラがどこにいてどうしているのか知ってる

んですよね? 俺、あいつらに借りがあって。返さないといけないんです」

「ええ、知ってますよ。彼に指示を出しているのは私ですからね」

「そうなんですか!? あいつらは今どこで、何をしてるんですか?」


 まさかこんああっさりと手掛かりが見つかるとは。


「あの二人には現在、かなり危険な任務を行ってもらっています。

使者を装った密偵活動と破壊工作です。現在戦争が起こりそうなほど

残虐のベルータスと、我が主邪剣のフェルドナージュ様の外交関係が悪いのです。

かの国の内情を調べ、破壊工作を行い少しでも戦争への準備を遅らせる事が役目です」

「そんなに緊迫した状態なら、尚更二人が危険ですよね。二人に武器を借りたまま

なんです。これをどうにかして返さないと」

「ですが、あなたはその武器が無ければかなり実力が下がるのでしょう? 

恐らくフェルドナージュ様はベルローゼ在りきであなたたちを

こちらへ向かわせたはず。彼の助力無しでベレッタへ赴くのは命を捨てにいくようなもの。

幼馴染のためにも、あなた方を向かわせるわけには参りません」

「そんな! ここまで来て何もできずには帰れない!」

「そう言われても、容認してやるわけには……そうだ、一つだけある。

彼の力を借りられれば……上手くいけばきっとあなたにとっていい武器の

源が手に入るでしょうし」

「方法があるなら教えてください。やり遂げてみせます」

「わかりました。ですがここから先はルインさん一人で行動しないといけません。

他の方は妖魔ではないのでどのみちベレッタでは身動きが取れなくなります。

この村で待つかフェルス皇国にお戻りなさい」


 途端にメルザたちが心配な表情を浮かべる。


「俺様は帰らないぞ。もうルインと離れたくねーんだよ……」

「わたくしもですわ。こんなところにルインさん一人を残していくわけにはまいりません」

「わしも行くならついて行くぞ」

「三人とも有難う。だが、俺の新しい装備を忘れていないか?」


 頭に手をやると、姿を消して見せる。これにはフェドラートさんも驚いたようだ。

 姿を現しフェドラートさんに説明した。


「ほう、便利なアーティファクトをお持ちですね。それがあれば一人で行動する分

にはかなり有利でしょう。そういえばあなたはアーティファクトにどのような種類

があるかご存知でしょうか?」

「いや、アーティファクトに限らずあまり詳しくはないんです。

妖魔の装備もまだあまりよくわかっていないですし」

「確かにリルカーンはお話好きですが、あまり装備に興味がある方では

ないので、この機に私がお話ししましょう。少し長くなりますが、よろしいでしょうか?」

「ぜひお願いします。メルザたちもしっかり聞いてくれ」

「わかった!」


 俺たちはフェドラートさんの好意により、この世界のアイテムについて教わることになった。

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