第三十三話 久しぶりの集合

 無事にメルザの領域まで戻ってこれた。

かなりの大荷物になったので、水中で沈むかと思ったが、あの

泉は数十秒すると自然に浮いてくることがわかった。


 水面に浮かんでから荷物をばさっと置くまでは大変だったが……穴の中に戻ると

ファナとニーメがきていた。


「お帰りなさい。どうだった? いい物手に入った? 私にくれても

いいのよ? 全部……なんて冗談よ、そんな顔しないでってば」


 ファナは相変わらずお宝には目がないようだ。

 ニーメも苦笑いを浮かべている。


「あらぁ、メルザどうしたのその指輪! まさか……プロポーズしたの?」


 俺はぶーーっと勢いよく戻ってきて飲んでいた水を吹き出す。

 やべぇ、そういえば上げたのって指輪だった! 

 装備品としてしか認識してなかった! 


「ば、ちげーよ! よく見ろ。つけてるの小指だろ!」


 メルザは真っ赤になって否定している。

 俺はむせ返っていてそれどころではない。


「なんだぁ違うのか。まぁいいわ。それでお宝は?」


 ようやくむせ返りが収まり、説明する。


「かなりいいものを見つけた。どうするか悩んでるものもあるんだ。

一度持ち帰ったものを整理したいんだが……メルザ、土斗で台を

作ってくれないか?」


 メルザは手にした純白のドレスを自分の背中にかけた後に、土斗で大きめの台を

外に作ってくれた。

 それ、本当着たくて仕方ないんだな……まぁファナも

興味なさそうだしいいけど。

 それを着て外を歩き回られるのはちょっと恥ずかしい。

 ……と考えつつ、持ち帰ったアイテムを、土斗で出来た台の上に並べていく。

 さすがに俺の着ている服や、メルザの杖と指輪は別だが。


「これって、相当いいものよね。確かに困るわね。

ガンツさんのとこでも引き取りは難しいんじゃないかしら」

「お師匠様にお見せしたらいい案が浮かばないかな? 

『俺を頼るんじゃねぇ!』とか言われそうだけど」

「あら……このナイフは買い取るわよ。二人とも、宿代のつけが

たまってるからいいわよね……?」


 俺とメルザは首を縦にブンブン振る。

 特訓してる間、せっちゃんの店に大分ツケがためこんでいる。

 ファナはせっちゃんの店で働いていたので、俺たちのツケを肩代わりしてくれていた。 

 遅れてきたのも気遣いだろう。お姉さんさを要所要所に出す本当にいい子だ。


「こっちの捕縛網はルインが暗器として使うべきね」

「素材の一部は貰えれば加工して武器にするよ! 

このバルカンソードとかも、お兄ちゃんには合わないでしょ? 僕が再加工できる

のは、この貰った金槌と同じセミユニークまでしか加工できないけど」

「いや、それでも十分だ。闘技大会で認められている使用武器は

セミユニークまでだしな。このノーマルのパタでは心もとなかったんだ。助かるよ」

「わしは久しぶりに冒険ができて満足じゃから何もいらんぞい

種だけもらって植えてくるかのぅ」

「俺様は杖とドレス以外はいらねぇからよ。

あ、ココットも一応俺様のだ。子分だからな!」

「コ、ココット!」

「え? 何このヘンテコなの。でもちょっとかわいいかも。ふふっ」

「わー、玩具みたいだ。触ってもいい?」


 あっという間に人気者になるココット。こいつ、照れてやがるな! 


 そうすると残りは歪んだ矛と神の空間に三日月型の弓か。

 この矛はどのみち売れないし、倉庫にでもいれておこう。

 弓は後で考えるとして……この神の空間はメルザにためして

もらわないとな。


「あれ、メルザ着替えて……ぶふっ」


 思わず笑ってしまった俺に、メルザが肘鉄をする。いてぇ! 

 丈が全然あってないんだから仕方ないだろ!? 

 赤薔薇のワンピースは丈があってたのになぜだ? 


 メルザは渋々と、ふてくされた顔を浮かべながら、着替えに穴の中へ戻っていった。

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